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- コシジロウミツバメ(Oceanodroma leucorhoa)について
コシジロウミツバメ(Oceanodroma leucorhoa)
- 【 学名 】
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Oceanodroma leucorhoa (Vieillot, 1818)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:14.5~17.8 mm
・翼長:144~164 mm
・跗蹠:23~26 mm
・尾長:76~90 mm
・卵:長径 30~39 mm×短径 23~27 mm平均長径 34.6 mm×短径 24.9 mm
参考文献
最終更新日:2020-09-01 キノボリトカゲ
- 分布
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全北区。北太平洋と北大西洋の寒帯・亜寒帯の島で集団繁殖し、寒帯から熱帯までの海域に広く分散して越冬する。
日本では北海道大黒島(海鳥繁殖地として天然記念物に指定)・ハボマイモシリ島、岩手県日出島・三貫島で繁殖する。
冬は本州、伊豆諸島、小笠原諸島に現れるが、日本海にはごくまれに迷行するだけである。
太平洋沿岸航路では、釧路港に入る手前で多くみられる。
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形態
- 成鳥の形質
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【雌雄】
頭部は煤けた褐色、額・頬・喉は鉛灰色を帯びている。頸・背は煤けた褐色で、やや灰鼠色を帯びている。
肩羽・胸・腹・腰は煤けた褐色で、肩羽の各羽には褐白色の外縁がある。
上尾筒の基部の各羽は煤けた褐色で、先端は幅広く白色であり、上尾筒の先端のものは白色で各羽縁には幅狭く石盤褐色の帯があり羽軸は褐色である。
上尾の中央の1列の各羽は灰褐色である。下尾筒は煤けた褐色で、基部の各羽は白色を呈し、両側の各羽の基部は白色である。
風切羽は煤けた褐色で、三列風切には黄淡褐色の羽縁がある。
大・中雨覆は淡黄褐色、小雨覆は黒褐色。初列雨覆・小翼羽は煤けた褐色である。
尾は煤けた褐色である。最長の尾羽と最短の尾羽との差は 16~23 mmである。
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生態
- 生息環境
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地上に捕食者のいない海洋の小島で繁殖する。
繁殖活動は夜間に行い、カモメ類が活動を停止して営巣地が静かになった夜の8時半ごろから島に現れ、夜中の2時半ごろまで繁殖のための活動をする。
このように夜間に活動することで、オオセグロカモメやハシブトガラスなどの捕食者との活動の時間帯を分けていることは、生存のためのひとつの戦略となっている(綿貫, 1986)。
繁殖期の日中は、島を遠く離れた洋上か、巣穴の中に潜んですごす。越冬期も洋上ですごし、陸地に接近することはない。
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- 食性
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海上をヒラリヒラリと波から身をかわすように飛び、水面近くの小魚、浮遊するプランクトン、イカ、エビなどを水面に下りることなくくちばしでくわえとる。
また、水面下に浅く潜って捕えることもある。
親は雛に、未消化の海洋動物と消化した食物から出た脂肪を多量に含む油とからなる混合物を給餌する。
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- 鳴き声
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繁殖期には巣穴の中で夜間にピーウィー、ピーウィー、グックッ、グックッと喧しいくらいに啼き合う。
夜中絶えず啼くが、日の出前には啼きやむのが常である。
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- 特徴的な行動
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繁殖期は5~10月、年に1回、一夫一妻で繁殖する。集団繁殖地の草地の土中に、深さ 15~60 cmほどの穴を掘って巣とする。
営巣密度は、地面にヨモギが生育している場所が高い(綿貫, 1985)。
6~7月に1卵だけを産み、2~4日おきに雌雄交替で37~49日を抱卵する(綿貫, 1985)。
孵化した雛は半晩成性で、孵化後8日目までは親は日中も抱雛する。
複雑な根系をもつノガリヤスが生育している場所に営巣した番の卵の孵化率は、ヨモギやフキが生育している場所で繁殖した番の卵の孵化率よりも高く、平均的に産卵日が早い傾向がある(綿貫, 1985)。
雛は雌雄共同で給餌され、孵化後56~68日で巣立つ(綿貫, 1985)。
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- その他生態
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4月下旬ごろ島に渡来し、かなりの高密度で集団繁殖する。
大繁殖地である北海道大黒島では、100万羽をこえるといわれる個体が集合する。
巣穴の密度は非常に高く、2 m四方に10~20巣前後がつくられる。
渡来した雄は巣穴を確保し、夜間に鳴き声を発して雛をよび番を形成する。
この時期、地表では巣穴の奪い合いが原因で雄どうしの闘争がよくみられる。
本種は夜間に一連の繁殖活動を続けるために、番間、親子間などで、視覚に代わる音声コミュニケーションを発達させている。
鳴き声のレパートリーには、チャーターコール、パーコール、スクリーチコールと呼ばれる3種類があり、これらの音声を使い分けたり、組み合わせて使うことにより状況特異的な音声コミュニケーションを行っている(Taoka et al., 1988, 1989)。
また、コウモリのように音波による定位を行い、崖や建造物に、またお互いどうしがぶつかることなく夜間の闇の中を自在に飛び回ることができる(吉田・奥村, 1982)。
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