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チシマウガラス(Phalacrocorax urile)の分類 ウ科(Phalacrocoracidae)
チシマウガラス(Phalacrocorax urile)の概要 ウ属(Phalacrocorax)

チシマウガラス(Phalacrocorax urile)

絶滅危惧IA類 (CR)

【環境省】ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの

【 学名 】
Phalacrocorax urile (Gmelin, 1789)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:52~54 mm
・翼長:270~285 mm
・跗蹠:54~55 mm
・尾長:160~173 mm
・卵:長径 60~66 mm×短径 37~43 mm 平均長径 62.3 mm×短径 39.7 mm

参考文献

最終更新日:2020-08-26 キノボリトカゲ

分布

全北区。アラスカ南部沿岸からカムチャッカ半島沿岸、コマンドル諸島、アリューシャン列島、千島列島など太平洋の亜寒帯に分布し、この地域の海岸や島で集団で繁殖する。

日本では留鳥または漂鳥、北海道東部の繁殖地は、本種の繁殖分布の南限にあたり、1970年代初めまで落石岬、ユルリ島、モユルリ島、霧多布湯沸岬で合計約150番が営巣していた。

しかし、近年この海域での繁殖個体数は激減し、1987年には1番の繁殖も確認されなかった。

コロニーの場所は年によってかなり変化することがあり、営巣地に適していると思われる場所が必ずしも毎年使われることはない。

本種の繁殖集団は、日本列島から消失する寸前の状態にあるため、絶滅危惧種の指定を受けている。

根室半島から落石岬付近では、繁殖期以外でもヒメウやウミウと混生していることが多い。

冬は本州北部の海岸にときどき現れ、青森、岩手、宮城、新潟などの各県に記録がある。

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分類学的位置付け

ウ科

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形態

成鳥の形質

【雄雌】
頭部は黒色で、暗緑藍色の金属光沢があり、頭上・後頭の両側の羽は長くて羽冠をなし、ブロンズ緑色を呈している。

額・眼先・眼の周囲・嘴の周囲・腮は皮膚が裸出し、腮以外の部分はオレンジ色で、腮は藍色を呈し後方ほど赤紫色の皺がある。

頸は銅鉄様の藍黒色で紫色の金属光沢があり、繁殖期には頭部と頸に細い紐のような白色の飾羽が多数生える。

背・肩羽は黒色で暗ブロンズ緑色の金属光沢があり、背の両側には藍色と緑色とブロンズ様の金属光沢があり、肩羽は紫色の金属光沢が強い。

胸・腹・脇・腰・上尾筒・下尾筒は黒色で暗ブロンズ緑色の金属光沢があり、繁殖期には腰の両側に大きな白色斑紋を生ずる。

初列風切・初列雨覆・小翼羽は黒色、次列風切・三列風切・大、中、小雨覆は黒色で紫色の金属光沢がある。

尾は黒色、嘴色は黒褐色、虹彩は褐色、脚色は黒色。

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幼鳥の形質

体の上面、下面、共に暗褐色である。

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卵の形質

卵は淡青色で斑紋を欠き、表面は大部分が白色の石灰質で覆われている。

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生態

生息環境

岩礁の多い荒海や大洋に面する岸壁の多い海岸に生息し、島嶼、海岸の岸壁や岩礁で集団繁殖する。

内陸にはほとんど入らない。海岸の岩礁など、一定の場所に小群で休息している姿がよく見られる。

繁殖期には、海岸の岸壁で集団繁殖する。本種とウミウの両種が繁殖している岸壁では、本種が切り立った斜面に巣をつくるのに対して、ウミウは崖状の平坦地から傾斜のゆるい場所を占める(藤巻ほか, 1976)。

また、2種が同じ岩や崖を利用する場合には、ウミウが上方、本種が下方となる。ヒメウのように岩の隙間に営巣することはなく、岩棚を利用する。

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食性

海上で生活し、水面では深く身体を沈め、尾を水に浸して泳いだり潜ったりして餌をあさる。

食性は動物質で魚類を主食とするが、エビ、カニの類も捕食する。

採餌海域は、一般にウミウが沿岸部、本種は沖合とされている。また、砂底よりも岩や石のある海域を好む傾向にある。

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特徴的な行動

繁殖期は5月中旬から7月中旬、年に1回、一夫一妻で繁殖すると考えられる。

繁殖開始時期は、ウミウと本種が繁殖するユルリ、モユルリ両島ではウミウよりも遅い(藤巻ほか, 1976)。

繁殖に先駆け、額と顔の裸出した皮膚が鮮やかな赤色になり、頭の上部と後部に束状の冠羽が生える。

岩棚や岩のへこみに、枯れ草や海藻で皿形の巣をつくる。

1巣卵数は4~7個。モユルリ島では1巣卵数は3~4個、5~6月が抱卵期で7月には雛がいたという(清棲, 1978)。

雌雄交替で抱卵し、卵は約1か月で孵化する。孵化した雛は約2週間で海に飛び込むという。

1巣あたりの平均雛数は2.8羽(藤巻ほか, 1976)。詳しい繁殖生態、および婚姻システムについては不明な点が多い。

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その他生態

全季節を通して群れで生活することが多い。繁殖期には集団で営巣するが、巣を中心になわばりを構え、一定間隔をとって分散する。

なわばりに侵入するものに対して、巣の上でゴーという低く濁った声で威嚇する。

ときどき、クォーという、喉に痰がつまったような声も出す。

越冬期には、小群で岩礁上に分散して休息する。夜間は集団塒に集まる。

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種・分類一覧