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ヨシゴイ(Ixobrychus sinensis)の分類 サギ科(Ardeidae)
ヨシゴイ(Ixobrychus sinensis)の概要 ヨシゴイ属(Ixobrychus)

ヨシゴイ(Ixobrychus sinensis)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Ixobrychus sinensis (Gmelin, 1789)

基本情報

大きさ・重さ

・成鳥全長: 約 36.5 cm
・翼長: 126〜146 mm
・尾長: 39〜49 mm
・ふ蹠長: 40〜51 mm
・嘴峰長: 50.4±0.2 mm(山階鳥類研究所所蔵の34標本および青森県で捕獲した6個体、計成鳥40個体の平均値±SE)

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最終更新日:2020-07-15 En

分布

インドシナ半島やインド、スリランカの一部に留鳥として生息する。また、セーシェルとオマーンに孤立した個体群がある。中国の大半、朝鮮半島、日本本土では繁殖期にのみ、ボルネオやニューギニアなどでは越冬期にのみ見られる(Kushlan & Hancock, 2005による)。
また、Kushlan & Hancock(2005)では北海道やサハリンでも繁殖するとされているが、少なくとも北海道では稀だと思われる。

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生息状況

低危険種LC(IUCN)、準絶滅危惧NT(環境省レッドリスト, 2019)

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人間との関係

「日米渡り鳥条約」「日露渡り鳥条約」「日中渡り鳥協定」指定種。

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最終更新日:2020-07-15 En

形態

成鳥の形質

日本で繁殖するサギの中で最小サイズである。
【雄】額、頭上、後頭は黒色で、額には赤錆色を帯びた灰色の線がある。
頭側、耳羽は淡赤錆色を帯びた淡褐色、腮、喉は黄味がかった赤錆色を帯びた白色である。眼先は緑色の皮膚が裸出している。
後頸の羽毛は長くて羽冠をなし、褐色である。頸側と前頸は赤錆色を帯びたクリーム色で、頸側は赤錆色を帯びている。背、肩羽は褐色、胸、腹、脇は黄味がかった赤錆色を帯びたクリーム色で、下腹の中央は白色である。
腰、上尾筒は灰鼠色、下尾筒は白色である。下雨覆、腋羽は白色。初列風切、次列風切は石盤黒色、三列風切は褐色である。大、中雨覆は淡黄土色、小雨覆は黄土色、初列雨覆、小翼羽は石盤黒色である。
尾は石盤黒色、嘴色は黄緑色、虹彩は黄色、脚色は緑黄色、脛羽は赤錆色を帯びた黄色で、脛の下部まで羽毛がある。

【雌】額、頭上、後頭は黒色で、各羽には赤褐色の羽縁がある。頭側、耳羽は黄味がかった赤錆色で、各羽には暗色の軸線があり、腮、喉は白色で、各羽には黄味がかった赤錆色の軸斑がある。
背、肩羽は暗褐色か赤褐色で、各羽には褐色を帯びた淡黄色の羽縁がある。胸、腹、脇は暗褐色で各羽には褐色を帯びた淡黄色の羽縁があり、下腹は白色である。
大、中雨覆は黄土色で、各羽には暗色の軸斑がある。ほかは雄と同様である。

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最終更新日:2020-07-15 En

幼鳥の形質

【雛】孵化直後の雛は体の上面に褐色の綿羽が生え、体の下面には白色の綿羽が生えている。眼先、眼の周囲、後頸などは皮膚が裸出する。

【幼鳥】雌成鳥に類似するが、頭上の各羽には黄味がかった赤錆色の幅の広い羽縁があり、体の上面は各羽縁も成鳥よりは幅が広く、黄色がちである。雨覆羽は褐色を帯びた黄土色で、各羽には褐色の軸斑があり、小雨覆は暗褐色である。

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卵の形質

淡青緑色無斑紋の卵(約 33〜32×24.5 ㎜)

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生態

生息環境

抽水植物の繁茂する水域に生息・繁殖する。水面上をヒラヒラ・ハタハタと飛ぶこともあるが、抽水植物帯の中を茎につかまりながら歩いて移動することが多く、概して隠蔽的な生活を送るので、溜池の水鳥の中では発見しづらいほうである。

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食性

抽水植物の茎につかまるか浮葉植物の上に乗って「待ち伏せ」、あるいはごく浅い場所なら「ゆっくり歩く」方法で、 水面の上から水中の魚を素早くとらえる。
ヒナに給餌するエサとしては、埼玉県の河川敷の場合、ドジョウやモツゴなど小型の魚が多いが、アマガエルやアメリカザリガニも取られている(上田, 1992)。
溜池に営巣した場合、池の中で採餌するばかりでなく、堤を越えて隣接する水田にまで採餌のために飛んでいく。また、池の中で採餌する場合には水面への浮上頻度の低いドジョウよりも、水中の溶存酸素が低くなると高頻度で水面に浮上するモツゴが重要になる。

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ライフサイクル

繁殖期は5〜8月、年に1回の繁殖がふつうで、一夫一妻で繁殖する。
東南アジアや琉球列島で越冬し、日本本土には夏鳥として渡来する。青森県では毎年決まって5月末に出現し、繁殖を終えたのち9月中には南へ去っていくが、南日本ではもう少し遅く10 月まで見られるようだ。

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鳴き声

繁殖期にオスはオーオーと鳴く。夜間に鳴くことが多いが昼間も鳴く。

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生殖行動

ヒメガマ、ガマ、フトイなどの抽水植物を上手に折り曲げてバスケット状の巣を作る。営巣場所としてヨシは好まないようである。巣の下は必ず水である。通常は単独で営巣するが、埼玉県の河川敷ではコロニーを形成した例が報告されている(内田・松田, 1990,上田, 1996)。

青森県内の溜池でクラッチサイズ(一腹卵数)を確定できた21巣では、クラッチサイズは 4〜8 で、最頻値は 6 であった。これは埼玉の集団営巣地の場合(内田・松田, 1990)とほぼ同じである。また初卵産卵日は、青森県で推定可能だった13例では6月初旬から7月下旬にわたり、これも埼玉県の集団営巣地とほぼ同様であった

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最終更新日:2020-07-15 En

特徴的な行動

渡来初期に、なわばりを示すような追尾行動が見られる。

ヨシゴイは非同時孵化で、従って同一巣内でもヒナの体サイズには大きな違いがある。しかし青森県での観察では、少なくとも巣外で給餌を受けるステージまで、たいていのヒナが脱落せず無事に育つようだ。アオサギやゴイサギなどのサギ類とは、非同時孵化であることや食性も基本的に同じなのに、このことは対照的で興味深い。またヨシゴイのヒナの成長は非常に早いことも特徴的である。

警戒時にヨシゴイがとる体をまっすぐ立ててクチバシを上に向けヨシに擬態する Bittern posture はよく知られている。この姿勢をとった個体は確かに見つけにくい。ヨシゴイはこの姿勢に「絶大な自信?」を持っているらしく人が相当に接近しても逃げない。うっかり手づかみにしたエピソードを内田・松田(1990)が紹介している。また筆者たちの経験では、溜池で調査の際にいったん巣から離れてもすぐ戻ってくるし、巣の面前にビデオカメラをデンと置かれても全く気にしないふうである。

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最終更新日:2020-07-15 En

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