- 解説一覧
- オナガガモ(Anas acuta)について
オナガガモ(Anas acuta)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Anas acuta Linnaeus, 1758
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:雄 46~57 mm 雌 43.5~51 mm
・翼長:雄 245~282 mm 雌 225~257 mm
・跗蹠:37~47 mm
・尾長:雄 134~210 mm 雌 91.5~121 mm
・体重:雄 765~1143 g 雌 680~982 g
・卵:長径 51.2~61.9 mm×短径 33.6~41.8 mm 平均長径 54.2 mm×短径 37.4 mm
参考文献
- 清棲幸保 1955 オナガガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 569-571.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 分布
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全北区。ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の中・高緯度地方に繁殖分布し、冬は両大陸南部とアフリカ大陸、中央アメリカに渡ってすごす。
日本には冬鳥として大量に現れ、主として本州から九州にかけて越冬する。9月から翌年の5月ごろまで、ふつうに見られるカモである。
参考文献
- 中村雅彦 1995 オナガガモ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 33.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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カモ目 カモ科
参考文献
- 吉井正 2005 オナガガモ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 110-111.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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【雄成鳥 冬羽】
頭部は褐色で、頭上は暗褐色を帯び、後頭には赤錆色または緑色の金属光沢がある。
後頭は褐色で、上部は黒色を帯び、下部ほど灰色を帯び微細な淡灰色の波形の横縞がある。
頸側には白色の線が後頭の方に走っている。前頸は白色、背と肩羽の内側のものは黒褐色で、灰白色の波形の細い横縞が多数密在している。
肩羽の外側のものは細長い洋鎌形で、淡灰褐色を呈し、各羽の中央には黒色の軸斑があり、外弁には褐白色の縦線がある。
腰は黒色で、各羽には白色の横縞がある。胸、腹は白色で、下腹には微細な灰褐色の縞が密在している。
脇は灰白色で、細い黒褐色の横縞が多数密在し、上尾筒は褐白色で、一部には暗褐色の横縞があり、外側の各羽の外弁と軸の付近とは黒色である。
下尾筒は黒色で、下尾筒の基部にはクリーム色の大きな斑があり、外側の各羽には白色の外縁がある。
下雨覆は褐色で、白色の小斑があり、中央の部分は白色、腋羽は白色である。
初列風切と次列風切は褐色で、初列風切の外弁と内弁の先端は暗色、羽軸は淡褐色である。
次列風切の外弁には緑色またはブロンズ様の金属光沢があり、羽端には幅の広い白色の帯があり、次には細い黒色の帯がある。
三列風切は淡灰褐色で、軸の付近は黒色である。雨覆羽、初列雨覆、小翼羽は灰褐色で、大雨覆の羽端には淡赤褐色の幅の広い縁がある。
尾は褐色で、中央の1対は著しく細長くて黒色を呈し、緑色のブロンズ様の金属光沢がある。
尾羽の数は16枚が常で、稀に18枚のものもある。
嘴色は鉛灰色で、上嘴の上後と基部の線をなした斑とは黒色、下嘴は黒色、虹彩は暗褐色、脚色は鉛灰色、趾膜は石盤色。
【雌成鳥】
頭部は赤褐色で、各羽には黒色の軸斑があり、後頸も同色であるが、やや色が淡い。
背、肩羽、腰、上尾筒は黒褐色で、赤錆色を帯びたクリームの縁とこれに沿った同色の曲線をなした斑紋がある。
腰の羽縁は白色に近く、体の下面は褐白色で、胸と下腹には赤錆色を帯びた褐色の斑があり、腹の中央ではこの斑は不明瞭である。
下尾筒には暗褐色の軸斑がある。
次列風切の外弁は褐色で、ときには緑色の金属光沢が多少あるものがあり、羽端には白色の縁があり、大雨覆の羽端には白色の縁がある。
中、小雨覆は淡灰褐色で、白色の斑点がある。尾羽の数は14~18枚。
【雄成鳥 夏羽】
雌に類似するが、翼は雄冬羽と同様である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 オナガガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 569-571.
- 吉井正 2005 オナガガモ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 110-111.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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雌成鳥に類似しているが、体の上面の斑紋は白色勝ちで、体の下面の縦斑は雌成鳥より明瞭である。
次列風切は外弁に暗色の斑がある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 オナガガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 569-571.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵は黄緑色または黄色を帯びたクリーム色で斑紋を欠く。
参考文献
- 清棲幸保 1955 オナガガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 569-571.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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日本には冬鳥として渡来し、水量の多い河川、湖沼、潟湖、干潟、内湾、水田などで見られ、繁殖地では低地の開けた浅い池の多い湿地、湿原にすむ。
北千島では小沼畔のミヤマハンノキの叢林中で繁殖する。
参考文献
- 清棲幸保 1955 オナガガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 569-571.
- 中村雅彦 1995 オナガガモ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 33.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 食性
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夜間に水田や湿地に出て採食する。
浅い水溜まりや池のふちなどで、くちばしを水につけてグチャグチャと動かしてこしとる。
浅い水底に首を入れたり、逆立ちして上半身を入れたりして、水底の堆積物をついばむ。しばしば小群がいっせいに逆立ちする。
ほかの Anas 属のカモ類よりいくらか長い首をもっており、それだけ深い水底を利用できるが、水中に潜って採食することはない。
雑食性で、ヒエ、アワ、水草の種子や破片、小魚、水生昆虫、貝類などを食べる。しばしば餌づけされる。
参考文献
- 清棲幸保 1955 オナガガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 569-571.
- 中村雅彦 1995 オナガガモ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 33.
- 吉井正 2005 オナガガモ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 110-111.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は5~7月、一夫一妻で繁殖する。番は抱卵期に解消される。
巣は水辺の草むらの地上に、枯れ草などで皿形につくる。雌がつくり、自分の綿毛を敷いて産座にする。
1巣卵数は7~9個、雌のみが抱卵し、雛は22~24日ぐらいで孵化する。
早成性で離巣性の雛は雛のみの世話で育ち、雄は初めだけ近くにいるともいわれる。40~45日ぐらいで飛べるようになる。
参考文献
- 中村雅彦 1995 オナガガモ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 33.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- 鳴き声
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雄はプリ―、プリ―、プリ―と口笛の様な声で啼き、雌はクヮッ、クヮッと小声で啼く。
参考文献
- 清棲幸保 1955 オナガガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 569-571.
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- 特徴的な行動
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繁殖期には番で分散する。なわばりは巣の周辺だけで、採食地は共有する。
雄はこういう場所に群れていて、ほかの雌に求愛したり、レイプの記録もある。
非繁殖期には集合性が強く、冠羽地に集まり、冬は小群でいたり、大きい開水面では数百~数千羽の大群になる。
番の形成は12月ごろから始まり翌年の4月ごろまで、さらに、春の渡り期まで続く。
1~2羽の雌をめぐり、雄のグループディスプレイがよく見られる。
雄たちは首を起こし、顎を引いたポーズ(ゲップディスプレイともいう)で押し合うようにしながら1羽の雄を群れから引き離し、水面に出てピロッピロッといいながら雌の周りを泳ぎ回る。
首を上げて顎を引き、胸を高めたあと、急に胸を下げて尻と尾羽をヒョイと上げるコガモによく似たディスプレイ(ヘッドアップ・テイルアップディスプレイという)を盛んに行う。
このディスプレイは Anas 属のカモ類に独特のもので、マガモやカルガモによく発達している。
雄どうしの対立的な脅しのディスプレイは、首を斜め上方に向け、くちばしを突き出して上下に振りながら相手に迫っていくもので、すべてのカモ類に共通である。
また雌が雄をそそのかす行動もすべてのカモ類に共通で、首を水平に伸ばしてほとんど水面につけ、前進しつつ泳ぐディスプレイである。
参考文献
- 中村雅彦 1995 オナガガモ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 33.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ
- その他生態
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昼間は大群で海上に睡り、日暮時から陸地の稲田、湿地などに飛来して暁近くまで餌を漁る。
長い頸を立て尖った尾を上方に向けて水上を巧みに泳ぎ、銃傷を負ったとき以外には水中に潜ることはない。
水上では頭部だけを深く入れたり、体を逆立ちさせたりして水中の餌を漁る。
水上や地上生活が主で樹上にとまることはない。両脚を交互にして地上を歩み、ときには迅速に走ることもある。
水上や地上から直ぐ飛び上がり、上空では翼を迅速に羽搏いて飛び、飛翔時にはフィッ、フィッ、フィッ、フィッと激しい羽音がするのが常である。
眠るときや休むときの姿勢はほかの鴨類と全く同様である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 オナガガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 569-571.
最終更新日:2020-06-09 キノボリトカゲ