- 解説一覧
- ハシビロガモ(Anas clypeata)について
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:56~69 mm
・翼長:雄 217~253 mm 雌 203~235 mm
・跗蹠:32.5~39.5 mm
・尾長:69~89 mm
・体重:雄 533~656 g 雌 416~630 g
・卵:長径 47.1~55.6 mm × 短径 35~39 mm 平均長径 51.9 mm × 短径 37.1 mm
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハシビロガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 573-575.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 分布
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全北区。ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の中緯度地方に広く繁殖分布し、冬は両大陸南部とアフリカ大陸、中央アメリカに渡ってすごす。
日本には本州以南に冬鳥として渡来し、北海道では北部で少数が繁殖する。地方的に多数渡ってくる。
参考文献
- 中村登流 1995 ハシビロガモ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 34.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 別名・方言名
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英名では Common Shoveller ともいう。
参考文献
- 吉井正 2005 ハシビロガモ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 387.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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カモ目 カモ科
参考文献
- 吉井正 2005 ハシビロガモ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 387.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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【雄冬羽】
頭部・頸は金属光沢のある暗緑色で、額・頭上じは暗褐色を帯び、腮は黒褐色である。
後頸の羽毛はやや長くて多少羽冠をなしている。
後頸の下部には白色の帯があり、上胸は全部白色で後頸の下部と共に頸輪をなし、背との境には黒褐色の帯がある。
肩羽の内側のものは細長い洋鎌形で、黒色を呈し、外弁は灰瑠璃色で内弁には白色の縦線があるが、外側のものは白色である。
翕、前背は黒褐色で、各羽には白色または淡色の縁があり、下背・腰・上尾筒は緑色または藍色の金属光沢のある黒色で、上尾筒の両側の基部にある各羽は金属光沢のある緑色である。
下胸・腹は赤褐色で、胸には褐色の小円斑点や白色の細い縁があるものが多い。
下尾筒は黒色で、基部の各羽には白色の微細な斑点がある。下雨覆は灰褐色で、中央は白色を呈し、腋羽は白色である。
初列風切は暗褐色で、羽軸は白色、次列風切は暗褐色で、外弁は金緑色である。
三列風切は細長くて黒色を呈し、先端の一部には白色の軸斑がある。
大・中・小雨覆は灰瑠璃色で、大雨覆の羽端には白色の幅の広い縁があり、初列雨覆、小翼羽は暗褐色である。
尾は中央のものは黒褐色で、白色の外縁があり、外側の尾羽は白色で、内側のものほど褐色を帯びている。
嘴色は、雄は黒色、雌の上嘴は褐色で下嘴はオレンジ色。虹彩は黄色またはオレンジ色。脚色はオレンジ赤色。
【雌】
体の上面は暗褐色で各羽には淡褐色の縁があり、腮は赤錆色を帯びたクリーム色である。腰は暗色勝ちである。肩羽の縁は幅が広い。
体の下面は淡赤錆色を帯びた淡褐色で、各羽の基部には暗褐色の軸斑があるが、胸・脇・下腹ではこの斑が不明瞭である。
次列風切の外弁は多少緑色の金属光沢のある黒色で、雨覆羽は暗灰色である。尾の数は14-16枚。
【雄夏羽】
7月から10月までで、雌に類似しているが。体の上面は暗色で、黒色勝ちである。翼は雄の冬羽のままである。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハシビロガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 573-575.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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【雛】
孵化直後の雛は全身に綿羽が密生し、眉斑と頬は赤錆色を帯びたクリーム色で、眼先から黒褐色の過眼線が走り、その下部にも不規則な同色の線が走っている。
腮と喉は赤錆色を帯びたクリーム色の長い綿毛が所々に生えて、背および腰の両側には淡黄色の斑がある。
体の下部は灰白色で、ときには多少クリーム黄色を帯びているものもある。
【幼鳥第1年目】
雌に類似するが、体の下面には暗褐色の半渦巻形の斑があり、雄では翼の色が一様に淡く、雨覆羽には白色の縁がある。
【第2年目雄】
雄成鳥に類似するが、頸には褐色の斑があり、胸の白色部には暗褐色の半渦巻形の斑がある。嘴はどころどころが赤褐色である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハシビロガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 573-575.
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- 卵の形質
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卵は淡黄褐色または緑色を帯びた白色で、斑紋を欠く。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハシビロガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 573-575.
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生態
- 生息環境
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海岸の入江、内湾、河口、潟湖、干潟、内陸の湖沼、河川、湿地、水田などに現れ、とくに海岸や沿岸の水系に多い。
繁殖地では、タイガ地帯からツンドラ地帯まで幅広くすんでいる。浅く水につかる、プランクトンの豊富な湿地を好む。
参考文献
- 中村登流 1995 ハシビロガモ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 34.
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- 食性
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浅い池で採食し、くちばしや首を水中に入れたり、あるいは逆立ちをして上半身を水中に入れたりして、幅の広いへら形の特別な形をしたくちばしをグチャグチャと動かして物をこしとるようにする。
とくにプランクトンの豊富な水域を好む、プランクトンフィーダーである。
水中にある濃く各類などのプランクトンや植物の破片などの水中浮遊物をこしとって食べ、軟体動物や昆虫、草の種子・果実なども食べる。
多くの Anas 属のカモ類のなかで、その採食習性を極端に発達させたメンバーで、この習性の重要性は雄から雌への求愛給餌のパターンにみられる。
参考文献
- 中村登流 1995 ハシビロガモ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 34.
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- ライフサイクル
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繁殖期は4~6月、一夫一妻で繁殖する。カモ類のなかでは番の結びつきが強い方で、雛が孵化する時期まで続き、その後解消される。
一妻多妻の傾向があり、雄によるレイプの観察例がある。
一夫多妻がふつうにあるとの報告もあるが、また支持されていない(Cramp & simmons, 1977)。
巣は、あまり高くならない草むらの中の地上の窪みに、草の葉を敷いて皿形につくる。
水系からある程度離れることもある。雌がつくり、産座に自分の綿毛を敷く。1巣卵数は8~12個。
雌のみが抱卵し、雛は21~25日ぐらいで孵化する。早成性の離巣性である。
雌のみの世話で成鳥し、40~45日ぐらいで飛べるようになる。雄は雛が孵化するまで、近くにとどまっている。
参考文献
- 中村登流 1995 ハシビロガモ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 34.
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- 鳴き声
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常にあまり啼かず、雄が時折りクワッ、クワッと低声で啼くだけである。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハシビロガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 573-575.
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- 特徴的な行動
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繁殖期には番でなわばり分散をする。番の行動圏は 6~36 haと比較的狭く、その中心地域の 3 haぐらいを雄が防衛する。
なわばりの中で雌は採食する(Cramp & Simmons, 1977)。
この種の特異性な採食習性と関係して、比較的強いなわばり性があるのであろう。
非繁殖期は群れになり、20~30羽ぐらいで見られることが多いが、河口部の干潟の大きい開水面などに、ときには数百羽の大群でいることもある。番の形成は群れの中で起こる。
しばしば、雄の2~12羽ぐらいの小グループが水面の目立つところに現れてグルグル泳ぎ回り、首を水中に入れて、小さい円を描いたり、大きく広がったりする行為を繰り返し、これを長々と行う。
これに雌が1~2羽ぐらい入っていく。一次的にも番になると、雄は雌の横に接近して相互に回りながら、水中に入れたくちばしをグチャグチャさして雌のくちばしに近づける。
雌は雄のくちばしから物を食べるようで、これは求愛給餌にあたる。
ほかの Anas 属とは違ったタイプの、プランクトンのこしとりっ採食を変形させた独特のグループディスプレイといえる。
参考文献
- 中村登流 1995 ハシビロガモ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 34.
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