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- オオワシ(Haliaeetus pelagicus)について
オオワシ(Haliaeetus pelagicus)
【IUCN】絶滅の危険が増大している種
- 【 学名 】
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Haliaeetus pelagicus (Pallas, 1811)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・全長:85~94 cm
・翼長:雄 560~590 mm 雌 600~650 mm
・尾長:330~400 mm
・嘴峰長:62~75 mm
・ふ蹠長:96~115 mm
・体重:4900~9000 g
参考文献
最終更新日:2020-06-17 キノボリトカゲ
- 分布
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極東ロシア、日本、中国北部、朝鮮半島に分布。
コリヤーク地方南部、カムチャツカ半島、アムール川下流域、シャンタルスキー諸島、サハリン北部、マガダン地方やハバロフスク地方沿岸地域で繁殖する。
冬期は北海道、本州北部、カムチャツカ半島南部、千島列島などで越冬し、ごく少数が中国北東部や朝鮮半島、西日本まで南下する。
総個体数は5000~7000羽と推定され、北方四島を含む日本での越冬数は2000~2500羽と推定される。
参考文献
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- 生息状況
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オオワシの生息を脅かすものとしては1990年代半ばから発生が顕著になった鉛中毒がある。
銃で捕殺されたエゾシカの死体や解体残滓に残った鉛片を肉ととも飲み込むことによって発生する。
発生のピークとなった1998年の越冬期には26羽のオオワシ、オジロワシの中毒死が確認された。
北海道では2001年までに鉛銃弾をエゾシカ猟に使用することは禁止され、中毒死個体は減少した。
しかし、現在も鉛中毒死個体の発見が続いており、多い年には5~8羽ものオオワシ、オジロワシが中毒死している。
道内での使用規制だけでは限界があり、鉛銃弾の所持や販売を規制することが急務である。
越冬期のオオワシの事故としては自動車や列車との衝突死や配電線や送電線での感電死が発生している。
サハリンの繁殖地ではエネルギー開発などによる営巣環境の悪化が進んでいる。
2006年に知床半島沿岸で発生した油にまみれた海鳥死体の大量漂着時には、この海鳥を食べ二次中毒によって死亡したオオワシが2羽発見された。
そのほかPCBなど有機塩素化合物の体内蓄積も確認されている(鉛中毒ネットワーク2004,ほか)。
参考文献
最終更新日:2020-06-17 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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雌雄同色。成鳥は体が黒褐色で尾羽と雨覆、腿、額が白い。嘴は大きく鮮黄色。
足と虹彩も黄色。幼鳥は全身が暗褐色で翼の一部に白斑がある。尾は白いが黒褐色班が混じる。
嘴は薄黄色で付け根は 白っぽく先端が黒っぽい。その後年齢とともに、尾羽の黒褐色班は徐々に消えて3年目の冬にはごく僅かとなり、4年目にはほぼ純白となる。
翼の前縁部の白斑は3年目から増え始め、4年目には白色部に黒褐色の小班が混じる状態になる。
腿の羽色も4年目にはほぼ白色となる。嘴は年齢と共に黄色みが強くなり先端の黒色部が縮小する。
4年目には嘴は鮮やかな黄色になるが、先端に小さく黒色部が残る個体もある。
5年目の冬には翼前縁の白色部に僅かに黒色の小班が見えるが、額に白斑が生じて成鳥の羽色に近くなる。
6年目の冬には翼前縁部は白色となるが下面に僅かに白斑が見える(知床博物館繁殖個体の観察結果による) 。
参考文献
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- 幼鳥の形質
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腰、上尾筒、下尾筒は暗褐色、次列風切、三列風切の各羽の先端は白色である。
大雨覆の各羽の基部と内弁の後は白色、中、小雨覆、小翼羽は暗褐色である。
尾は白色で、各羽の基部と先端は黒色で、白色の部分には黒色の大理石様の斑がある。
虹彩は淡黄色、脛羽は暗褐色。尾は成鳥より長く、尾長 357~360 mm位である。ほかは成鳥と類似している。
参考文献
- 清棲幸保 1955 オオワシ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 483-484.
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生態
- 生息環境
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繁殖期には崖のある海岸、潟湖やサケの生息する河川の河口部に生息し、海岸断崖や巨大な岩、海岸斜面の森林に営巣する。
内陸では河川流域や湖沼の周辺に生息し、森林の高木や崖に営巣している。
越冬地の北海道では海岸の森林や湖沼周辺に見られるほか、サケの遡上する河川流域や河口部に主に生息し、内陸部ではエゾシカの死体の多い地域にも見られる(Collar et al. 2001, Ueta & McGrady 2000)。
参考文献
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- 食性
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魚類や鳥類、哺乳類及びそれらの死肉がオオワシの餌となる。
主なものは魚類ではカラフトマス、シロザケなどのサケ科魚類やスケトウダラなどのタラ科魚類、鳥類ではウミスズメ類やカモメ類、ウ類などの海鳥類、哺乳類ではキツネやマスクラット、ウサギなどの陸獣類、ワモンアザラシなどの海獣類である。
繁殖期の餌としてはアムール川下流域やカムチャツカでは魚類が主だが、オホーツク海北部の海岸では鳥類が多くを占める(Utekhina et al. 2000)。
晩秋から初冬の北海道では、カラフトマスやシロザケの遡上河川流域や河口部に集まりこれらを餌にする。
また知床海岸などでは、時化で海岸に打ちあがったクジラ類や鰭脚類の死体が餌となる。
厳冬期には氷付けになって河川に保存されたサケの死体が餌になるが、これらも食べ 尽くすと餌が不足し、漁業活動など人間が供給する餌に依存するようになる。
道東各地の湖沼で、行われる氷下漁から捨てられる雑魚(ガヤ,ギンポ,ウグイなど) には多くのオオワシが集まる。
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- 鳴き声
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ねぐらの森や流氷上から、カッ、カッ、カッ、カッと鳴き声が聞こえる。
オジロワシによく似るが、オオワシの方がやや濁った太い声、オジロワシはより乾いた声で鳴く。
参考文献
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- 産卵
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営巣地は海岸地域や湖沼の周辺、川沿いにあり、大木の樹上や海岸断崖の岩棚に巣を作る。
営巣木はカムチャツカではダケカンバやヤマナラシが多く、アムール川下流域やサハリンではカラマツである。
繁殖シーズンは地域により違いがあるが、カムチャツカでは2月末から鳴きながら飛ぶディスプレーが見られ、この時期に巣作りが始まり4月初めには完成する。
産卵は多くの場合4月後半で4月初めや5月末の場合もある。
卵の色は白く、普通2卵だが1または3卵のことがある。
参考文献
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- 子育て
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抱卵期間は1~1ヶ月半。ヒナの孵化は5月中旬から6月中旬である。
孵化したヒナは灰色の綿羽につつまれており、親鳥が巣に運ぶ魚類や鳥類を餌に育つ。
巣に運ばれる餌はアムール川下流域ではカワカマスなどの魚類が80%を占め、鳥類は約10%である。
カムチャツカとサハリンではワカサギやタラなどが巣内のヒナに運ばれる。
幼鳥は7月末には親のから2分の1、3分の2の大きさにまで育ち、普通8月に巣立つが9月上旬に巣立つこともある(Lobkov & Neifel'dt. 1986)。
参考文献
最終更新日:2020-06-17 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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繁殖期には巣を中心に番ごとになわばりをもって分散すると考えられる。
越冬期には明確ななわばり意識をもたず、一時的に魚が豊富になる場合には300~700羽が一つの水域に集中することもある。
いつも決まった樹木や岩崖に集団で塒を構える。
北海道十勝地方では1~2羽が主に海岸沿いに飛来し、内陸に入り込むことはない(日本野鳥の会十勝支部, 1983)。
参考文献
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