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- ハイイロチュウヒ(Circus cyaneus)について

ハイイロチュウヒ(Circus cyaneus)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Circus cyaneus (Linnaeus, 1766)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:15~19 mm
・全嘴峰:31~33 mm
・翼長:雄 330~360 mm 雌 360~400 mm
・跗蹠:雄 65~75 mm 雌 74~80 mm
・尾長:雄 216~240 mm 雌 239~275 mm
・体重:雄 200~405 g 雌 242~540 g
・卵:長径 40~52.1 mm × 短径 32~40 mm 平均長径 46.2 mm × 短径 36.1 mm
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハイイロチュウヒ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 468-470.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 分布
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全北区、新熱帯区。ユーラシア大陸の亜寒帯や北アメリカ大陸で繁殖し、冬は南下して越冬する。
日本には冬鳥として渡来するが、数は少ない。
参考文献
- 中村雅彦 1995 ハイイロチュウヒ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 222.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 別名・方言名
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英名では Hen Harrier ともいう。
参考文献
- 吉井正 2005 ハイイロチュウヒ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 374.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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タカ目 タカ科
参考文献
- 吉井正 2005 ハイイロチュウヒ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 374.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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【雄】
額、頭上、後頭は青味が勝った灰鼠色で、各羽縁は暗色である。
眼先、頭側は灰白色で、各葉の先端は毛の様で黒色を呈する。耳羽、喉、腮は淡灰鼠色である。
後頭は淡青灰色、背、肩羽は青味がかった灰鼠色で、全体にやや汚色を帯び、各羽縁は暗色である。
胸と腰は淡青灰色、腹・脇・上尾筒・下尾筒は純白色である。下雨覆と腋羽は純白色。
初列風切は黒色で、先端は灰色、基部は白色である。内側の初列風切羽と次列風切、三列風切は銀灰色で、内弁の縁は白色である。
大雨覆、初列雨覆、小翼羽は銀灰色、中・小雨覆は淡青灰色である。
尾は中央の1対は淡灰色、ほかの尾羽の内弁は白色で、灰褐色の不規則な横縞が不明瞭にあるが、最外側の尾羽では横縞を欠いているものもある。
外弁は灰褐色である。嘴色は黒色、蝋膜は黄色、虹彩は黄色、脚色は黄色。
脛羽は雄は純白色、雌は赤錆色を帯びた白色で、褐色の軸斑がある。
【雌】
額、頭上は褐色で赤錆色をおびた黄色の羽縁があり、後頭には白色の斑がある。
眼の上下と後方にも白色の斑がある。腮、喉は赤錆色を帯びた白色で、各羽には褐色の軸斑がある。
後頸は褐色で、赤錆色をおびた白色の羽縁があり、背・肩羽・腰は褐色で、背と腰の各羽には赤錆色の羽縁があるが、肩羽の外側の各羽には赤錆色をおびた黄色の横縞がある。
胸、腹、脇、下尾筒は赤錆色をおびた白色で、各羽には褐色の軸斑がある。
上尾筒は純白色であるが、ときにその先端の部分に赤錆色の斑があるものもある。
下雨覆、腋羽は赤錆色をおびた白色で、褐色の軸斑がある。
風切羽は褐色で、初列風切には暗色の横縞があり、外弁は灰色を、内弁は赤錆色がかった黄白色を帯びている。
次列風切、三列風切には暗色の横縞があり、羽縁は灰白色である。
大雨覆は褐色、中・小雨覆も褐色で、赤錆色を帯びた黄色の羽縁がある。尾は中央の1対は灰褐色で、暗褐色の幅の広い横縞が5条くらいある。
外側の尾羽は赤錆色を帯びた白色で、黒褐色の幅の広い横縞が4条くらいある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハイイロチュウヒ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 468-470.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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【雛】
初毛は背面及び翼のものはバフ色、腹面のものは白色で弱い。眼の周囲は褐色である。初綿羽は白色で極く短い。
初綿羽に代わって生じる幼綿羽の背面はバフ褐色、下面は淡バフ色である。ただし、頸側のものは淡く、下腹のものは白い。
【幼羽】
雄幼鳥は雌成鳥と羽色がほとんど同じで区別しにくいが、雄幼鳥の方が小さいので区別することができる。
また雌幼鳥は雌成鳥と大きさが全く同じであるが、雌幼鳥の場合は背面(特に頭上および雨覆)の羽縁が強く鏽赤色を帯びているので区別することができる。
下面も赤褐色味が強い。この羽衣のものは虹彩は褐色である。
【第1回冬羽】
幼鳥は年内には換羽せず、第2年の3月~6月から換羽に入り、全身の完全な換羽によって11月または12月には第1回冬羽となる。
この羽衣の場合は、雌は雌成鳥との区別がしにくくなる。
雄も雄成鳥と酷似しているが背面は可成り褐色を帯びた灰色であり、また額と腰には褐色の縁がある羽毛が混じり、胸と下尾筒にはやや褐色の縦斑を有している。
【第2回冬羽】
第3年の完全な換羽によって雄もまた成鳥の羽衣となる。
参考文献
- 山階芳麿 1980 ハイイロチュウヒ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 835-839.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵は青味のある白色で無斑に近いのが常であるが、ときには淡赤錆色の斑のあるものや暗赤褐色の線をなした斑や斑点のあるものもある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハイイロチュウヒ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 468-470.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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平地の広い草原、ヨシ原、農耕地や牧草地に生息する。
チュウヒの主な生息地は平地の埋立地や干拓地だが、本種は山地の草地や造成地にもたびたび出現する。
参考文献
- 中村雅彦 1995 ハイイロチュウヒ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 222.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 食性
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ヨシ原や農耕地の上を、地上すれすれの高さで飛翔し、ゆっくりとしたはばたきと翼を浅いV字形に保った滑翔を繰り返しながら獲物を探す。
草むらに潜むネズミ、小鳥類、カエルなどの小動物が飛び出すと急旋回して捕らえる。
対空飛翔をして狙いをつけることもある。3種のチュウヒ類のなかでは最も低空を飛ぶ。
チュウヒ類は茂った草地の中にいる獲物の居場所をつきとめるために特殊化した耳を持ち、フクロウに似た顔をしている。
参考文献
- 中村雅彦 1995 ハイイロチュウヒ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 222.
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- ライフサイクル
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ヨーロッパでの産卵期は4月下旬から5月下旬。一夫一妻で繁殖する。
チュウヒと同様、地上に枯れたヨシやススキなどの茎を粗雑に積み重ねて基礎部分をつくり、その上部に軟らかいイネ科の枯れ葉を皿形に浅く敷き詰めて産座にする。
雄はまれに巣材を運ぶことがあるが、巣づくりは主に雌だけが行う。
1巣卵数は4~6個、1~3日おきに1卵づつ産卵し、抱卵は2卵日が産卵されてから雌だけが29~31日行う(Cramp & simmons, 1980)。
雄は抱卵中の雌に餌を与えるが、雛への給餌は雌だけが行い、雄から空中で獲物を受け渡された雌が、肉を細かくちぎって雛に与える。
雛に餌を運んできた雄は巣にもどらない。育雛日数は32~42日、雛は2~3年で性成熟して繁殖する(Cramp & simmons, 1980)。
参考文献
- 中村雅彦 1995 ハイイロチュウヒ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 222.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 鳴き声
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啼くことは稀であるが、巣のある付近ではケッ、ケッ、ケッ、ケッと烈しく啼き立てる。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハイイロチュウヒ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 468-470.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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番ごとになわばりをもって分散する。産卵前には翼を少し閉じて急降下し、それからはばたいて高みにもどる空中での求愛ディスプレイを繰り返す。
好適な生息地や餌が豊富な年には、ごく狭い範囲に複数の巣が集中することがある。
チュウヒと同様、雌雄の成熟年齢のちがいから個体群中の性比が偏り、一夫多妻が出現することが知られる(Balfour & Cadbury, 1979)。
参考文献
- 中村雅彦 1995 ハイイロチュウヒ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 222.
最終更新日:2020-06-02 キノボリトカゲ