- 解説一覧
- トビ(Milvus migrans)について
トビ(Milvus migrans)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Milvus migrans (Boddaert, 1783)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・全長:雄 604±25 mm(560~636, N=11) 雌 625±26 mm(565~667, N=14)
・自然翼長:雄 466±18 mm(440~485, N=11) 雌 473±17 mm(440~500, N=12)
・露出嘴峰長:雄 37.7±2.3 mm(32.7~40.2, N=13) 雌 37.9±2.1 mm(34.2~42.3, N=14)
・尾長:雄 297±13 mm(278~315, N=10) 雌 305±17 mm(280~330, N=13)
・ふ蹠長:雄 59.8±1.2 mm(57.6~61.8, N=14) 雌 61.7±1.8 mm(59.5~65.1, N=14)
・体重:雄 857±186 g(540~1100, N=13) 雌 1132±168 g(820~1400, N=13)
・卵:長径 50~61.2 mm × 短径 41~50 mm 平均長径 58.2 × 短径 46.8 mm 重量 39 g位
参考文献
- 清棲幸保 1955 トビ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 479-481.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 分布
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ユーラシア、アフリカ、オーストラリア大陸に広く分布して おり、7亜種に分類されている(Brown & Amadon 1968)。
日本では奄美以南と一部島嶼を除く全国に分布している。
参考文献
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 生息状況
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近年、大都市周辺では住宅開発と港湾の埋め立てが行われ、数は激減している。
参考文献
- 吉井正 2005 トビ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 364.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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雌雄同色。額、頭上、後頭の各羽は暗褐色で褐色または赤錆色を帯びた褐色の羽縁があり、軸線は黒色である。
眼先は淡褐色で、黒色の軸線があり、眼の後方は黒褐色である。
耳羽、腮、喉は赤錆色を帯びたクリーム色かまたは暗褐色で、黒色の軸線がある。
後頬は褐色、背、肩羽、腰、上尾筒は暗褐色で、各羽には赤錆色を帯びたクリーム色の縁と黒色の軸線とがある。
胸は暗褐色、腹と脇は暗褐色または赤錆色をおびた褐色で、各羽には赤錆色を帯びたクリーム色の軸斑があり、中央には更に黒色の細い軸線がある。
下雨覆、腋羽は暗褐色で、赤錆色または褐白色の羽縁がある。
初列風切は黒色で、内弁の基部の方は白色で、暗褐色の大理石様の斑がある。
次列風切、三列風切は暗褐色で、暗色の横縞があり、基部の方は白色である。
大雨覆は暗褐色で、暗色の横縞があり、内弁の縁は白色、羽縁にはクリーム白色の縁がある。
大、中、小雨覆は暗褐色で、赤錆色の羽縁があり、羽軸は黒色である。中雨覆の各羽縁にはクリーム色の縁がある。
初列雨覆、小翼羽は黒色で、羽端には褐白色の縁がある。尾は暗褐色で、暗色の横縞が8~9条あり、羽端には褐白色の縁がある。
嘴色は黒色の角色、蝋膜は緑黄色、虹彩は暗褐色、脚色は緑黄色、脛羽は赤錆色を帯びたクリーム色かまたは褐白色。
参考文献
- 清棲幸保 1955 トビ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 479-481.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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額、頭上、後頭、後頬、背は暗褐色で、各羽にはクリーム白色の軸斑があり、羽軸は黒色である。
腰と上尾筒は暗褐色で、黒色の軸斑があり、腮、喉は褐色を帯びたクリーム色、体の下面はクリーム色で、暗褐色の幅の広い羽縁がある。
中、小雨覆の各羽の羽端にはクリーム白色の縁があり、翼の各羽端にもクリーム白色の縁がある。
尾は暗褐色で、横縞はなく、内弁には褐白色の大理石様の斑がある。ほかは成鳥と同様である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 トビ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 479-481.
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- 卵の形質
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色は一腹の中でも青みがかった白色の地色に赤褐色の斑があるものと、無地のものがある。
地色の青みは抱卵中に失われクリーム色がかった白色となる。
参考文献
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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トビは驚くべき適応力でさまざまな環境に生息しているが、一般的には山岳地帯や広範囲に広がる森林地帯よりむしろ、河川や湖、湿地の近く、港などの水域に近い場所を好む。
国内では主に漁港や川幅の広い河川、水田などが広がる農耕地などに生息する。
北海道十勝地方では年間を通して、平野部の都市部周辺から農耕地にかけて生息するが、山間部でも採餌が可能なダム湖などがあれば、わずかではあるが生息している。
参考文献
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- 食性
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トビは魚食もしくは動物の死体を食べるスカベンジャーと思われがちだが、繁殖期は鳥類やネズミ、モグラなどの小型哺乳類、ヘビなどを積極的に捕食している。
餌の種類は豊富で、北海道では小鳥類のヒナを巣ごと捕獲し、巣内に持ち帰っているのも確認された。
巣内の残渣から餌動物を調べたところ、44%が鳥類、次いで32%が猫や牛、豚、羊などの家畜であった。
残渣からはヤチネズミやアカネズミなども確認された。
このようにトビは、死体や魚だけではなく、それぞれの生息地域で手に入れやすいものを利用している。
参考文献
- 山階芳麿 1980 トビ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅰ. 出版科学総合研究所. 793-798.
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- ライフサイクル
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繁殖の開始時期は地域によって異なり、最も早いのは九州の長崎県で2月(Koga et al. 1989)、最も遅いのは北海道十勝地方で3月である。一夫一妻で繁殖は毎年同じ巣もしくは同じ場所で行われ、造巣行動は雌雄共同で行う。
抱卵は採食のために交代する以外はほとんどがメスによって行われる。
育雛期にはヒナが20日齢に達するまではメスが主に抱雛し、オスが餌を巣に運びいれる(古賀・白石 1987)。
一般に樹上で営巣するが、まれに人工建造物などにも営巣する(岩見ほか 1998)。
北海道では営巣木にカシワやハンノキといった落葉広葉樹、カラマツやトドマツなどの針葉樹を好み、地上から高さ 7~21 m の位置に枝を積み上げ、厚さ平均 60 cmの巣を架けるが、数年にわたって利用されている巣では最大 2 mほどの厚さになる。
巣のサイズは外径約 95 cm、産座直径約 75 cm。
産座に用いる巣材は人工的なものをよく利用し、最も多かったのが軍手で次いで靴下や布 切れなど柔らかいものが多かった。
近年スペインで行われた調査によると7~12才のペアは若齢や老齢のペアに比べて、白いプラスチック片などを巣の上に置く傾向があり、こうした巣は他個体による侵入が少なかったという(Sergio et al. 2010)。
巣材に人工物を利用するのは卵の保温や隠蔽以外の理由があるのかもしれない。
抱卵期間は約32日、育雛期間は平均52日だが、育雛期間は餌条件やヒナ数によって大きく変化し、最大で78日かかった巣もあった。
巣立ち率は産卵数を確認できた274巣で47~65%(5年間)。
餓死による死亡が死亡原因の51% と最も高く、捕食による死亡は少ない。
参考文献
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- 特徴的な行動
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大空に円を描いて帆翔することが多く、時折り搏翔を行い、ときには滑翔することもある。
3~4羽位の小群のことが多く、トキには夥しい大群のこともある。海岸などには著しく群れることがある。
毎初冬北アルプス山麓の松本平では、午後4時頃から70~80羽位も群れて同方向に列をなして、紙鳶の様に一か所に停空飛翔し、夜間は附近の赤松林を塒とするが、朝は早くから餌を漁りに別々に飛去り、毎日夕刻には同時刻に同じように集まるのが常で、12月下旬頃までこの状態が続くが、その後はいずれにか渡り去るものが多い。
空中を飛びながらネズミなどの獲物を捜し求め、発見すると突然に飛び下がって、趾にある鋭い爪でこれを捉える。
獲物は樹上などにとまって嘴で引き裂いて食するが、嚥下した後に毛などの不消化物だけをペリットとして吐き出すのが常である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 トビ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 479-481.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
関連情報
- その他
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近年、大都市周辺では住宅開発と港湾の埋立が行われ、数は激減している。
参考文献
- 吉井正 2005 トビ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 364.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ