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- サシバ(Butastur indicus)について
サシバ(Butastur indicus)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
【環境省】絶滅の危険が増大している種
- 【 学名 】
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Butastur indicus (Gmelin, 1788)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:18~22.5 mm
・全嘴峰:29~32 mm
・翼長:雄 313~330 mm 雌 319~347 mm
・跗蹠:55~67.5 mm
・尾長:雄 180~200 mm 雌 187~200 mm
・卵:長径 44~52 mm×短径 37~41.4 mm 重量 37.5 g位
参考文献
最終更新日:2020-06-22 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区。中国東北部、ウスリー、朝鮮半島、日本と比較的狭い繁殖分布をもち、冬は中国南部、ニューギニア島、フィリピンなどに渡って越冬する。
日本には夏鳥として3~4月ごろ渡来し、九州から青森県(弘前野鳥の会, 1986)にかけて繁殖する。
繁殖を終えた9月末から10月初めに、大群で渡る壮観な鷹渡りが本州中部山岳地帯、渥美半島、九州大隅半島・薩摩半島、沖縄宮古島などで見られる。
標識調査によると、宮古島で放鳥した標識鳥の多くはフィリピンで回収されている(吉井・叶内, 1979)。
一部では西表島や宮古島で越冬するらしい。
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最終更新日:2020-06-22 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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【雄】
額、頭上、後頭は灰褐色で、各羽縁は赤錆色、後頭、後頸は褐色で、後頭の各羽には赤錆色の羽縁があり、後頸の各羽の羽縁には同色の斑がある。
眼の上にはクリーム色または灰白色の眉斑がある。
眼先、耳羽、頬は灰褐色、腮、喉はクリーム白色で、喉の中央の各羽には暗褐色の軸線がある。
背、肩羽、腰、上尾筒は褐色で、背と肩羽とは赤錆色を帯び、羽軸は黒色である。
上尾筒の先端の部分と両側の部分の各羽には、白色の横縞と白色の羽縁とがある。
胸は赤錆色を帯びた褐色で、白色の斑がある。
腹、脇は赤錆色を帯びた褐色で、白色の幅の広い横縞が多数ある。
下尾筒は白色であるが、ときには基部の各羽に褐色の斑があるものもある。
下雨覆、腋羽は白色で、赤錆色の横縞が多数ある。
風切羽は黒褐色で、初列風切の外弁の先端は灰白色を帯び、内弁は赤錆色を帯びた白色で、黒色の幅の狭い横縞が4~6条くらいあり、羽端は暗色である。
次列風切、三列風切もほとんど同様であるが、外弁は赤錆色を帯びる。
大、中、小雨覆は赤錆色を帯びた褐色で、羽軸は黒色である。
大雨覆の各羽の先端には白色の細い縁がある。初列雨覆、小翼羽は初列風切と同様である。
尾は淡褐色で、黒色の横縞が3~4条あり、稀には5条のものもいる。尾の下面は灰白色である。
嘴色は黒色の角色、基部はオレンジ黄色、蝋膜はオレンジ黄色。
虹彩は黄色、脚色は黄色、脛羽は白色で赤錆色を帯びた褐色の横縞がある。
【雌】
額、頭上、後頭、後頸は暗褐色で、頭上の各羽には赤錆色の羽縁がある。
赤錆色を帯びたクリーム色またはクリーム色の眉斑があるが、その幅は雄よりも狭い。
背、肩羽、腰、上尾筒は暗褐色、胸、腹は褐色がちで、赤錆色がすくない。
雨覆は赤錆色が少ない。ほかは雄と同様である。
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- 幼鳥の形質
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【幼鳥 雄】
頭上・後頭は鏽赤色で暗褐色の縦斑があり、眉斑はバフ色である。しかしこれらの部分の羽毛の基部は広く白い。
後頸・背・肩は少し赤褐色味がある暗褐色で、各羽は細い鏽色の縁を有する。腰は同様であるが羽縁は有しない。
上尾筒の中央列のものは腰と同様だが、両側および後端のものは白色で2条の暗褐色帯を有する。
尾は成鳥のものに似るが暗色帯は不鮮明である。
翼羽も成鳥のものに似ているが、雨覆羽はすべて鏽色の縁を有し、また中雨覆と大雨覆の先端は白い。
耳羽は灰褐色、頬はバフ色に暗褐色縦斑がある。腮と喉はバフ色で、暗褐色の腮線がある。
上胸は成鳥と異なりバフ色で暗褐色の縦斑がある。
腹は成鳥のものに似て鏽褐色の横帯を有するが、横帯は成鳥のものより不規則で多少縦斑が混じっている。
ときとして背の色が著しく赤味を帯び、雨覆と次列風切の外弁が鏽バフ色を呈する個体がある。
このようなものは下面の縦斑と横斑は淡鏽色で不鮮明である。
【雌】
雄幼鳥に酷似しているが背面の鏽色は後頸にだけあり、頭上の暗褐色は広く、羽縁はバフ色である。
翼も鏽色味なく、ただ先端にだけバフ色の縁がある。
幼鳥の場合、嘴はスレート色で基部は灰色を呈し、脚はバフ色、虹彩は褐色または橙色である。
ただし翌春に至れば次第に成鳥のものに似て来る。幼鳥はその年の内には換羽はしない。
従って翌年の春になると羽縁が摩減して鏽色味は少なくなり、背面は成鳥に似てくる。
しかし眉斑はバフ白色でとても広く、また雨覆に幼羽の特徴が残っている。
また下面においては胸が成鳥と異なって縦斑を有するので、ただちに成鳥と区別することができる。
【第1回冬羽】
幼鳥は第2年の6月ごろより換羽に入り、全身の完全な換羽によって成鳥と全く同じ、第1回冬羽を第2年の末までに完成するものと思われる
【雛】
初毛は背面が帯灰バフ色、下面は白色。ただし頭は絹糸状光沢がある。
初綿羽は不明。初綿羽に替わる幼綿羽は羊毛状で、背面はクリーム色を、下面は汚白色を呈する。
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生態
- 生息環境
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夏季本州では標高 800 m以下の低山から丘陵の森林に生息し、周辺の水田などの開けた環境で狩りをする。特に本州中部以南や四国、九州では数が多い。
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最終更新日:2020-06-22 キノボリトカゲ
- 食性
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ヘビを好んで食べるほか、ネズミ、モグラ、小鳥、カエルや、バッタなども昆虫もよく食べる。
秋の渡りの時期には昆虫が主食となる。木の上から地上を見張り、獲物を見つけると飛び下りて足指で捕える。
育雛期はネズミ・スズメ・ヘビ・トカゲ・カエル・トノサマバッタ・イナゴやヤママユガの幼虫などを捕食。
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- ライフサイクル
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繁殖期は4~7月、年に1回、一夫一妻で繁殖するが(Kojima, 1987)、まれに2羽の雄が給餌に参加する一夫二妻もある(前澤, 1990)。
森林や丘陵地の奥まった谷のマツやスギの枝上に、枯れ枝を積み重ねて皿形の巣をつくる。
交尾期から育雛期まで、雄から雌への求愛給餌をともなう(小島, 1982)。
大阪府での繁殖例では、第1卵の平均産卵日と孵化日は、それぞれ4月29日と5月31日で、1巣卵数は平均2.7個、孵化率は83%、2日間隔で1卵ずつ産卵する(Kojima, 1987)。
継続的な抱卵(抱卵率80%以上)は、第2卵産卵後に主に雌によって行われ(Kojima, 1987)、雄は抱卵中の雌に給餌を行う(小島, 1982)。
たまごは非同時に孵化し、1卵あたりの抱卵日数は31~33日。
抱雛はすべて雌が行い、孵化後20~27日続ける(小島, 1982)。孵化した雛は半晩成性で、給餌は雌雄とも行う。
平均育雛日数は36日で、巣立ち率は78%(小島, 1982)。
大阪府での調査では、未孵化卵と雛間競争による雛の死亡はほとんど観察されず、繁殖失敗の主な原因は捕食と巣を支えていた枝が折れたことによる落巣であった(Kojima, 1987)。
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最終更新日:2020-06-22 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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繁殖期には番がなわばりをもって分散する。番の形成に関する詳しい報告はないが、繁殖前になわばりの上空で急降下と急上昇を繰り返すなどの求愛行動が展開される(小島, 1982)。
ワシタカ類のなかではよく鳴くタカで、とくに渡来初期や求愛期にはピックイーッまたはピッピュイーと頻繁に発声する。
番ごとに雌雄の行動圏は互いによく重なっており、隣接異性間、同性間とも重複が見られる(小島, 1982)。
行動圏の中になわばりをもち、なわばり所有個体は、飛行高度 300 m以上の個体に対しては許容性を示し、300 m以下の個体には攻撃性(樹上追跡、空中追跡など)を示す(小島, 1982)。
隣接する番間での著しい行動圏の重複は、本種がなわばりを3次元立体構造的に形成するためと考えられる。
巣の付近や巣にスズメが共生することもある。
参考文献
最終更新日:2020-06-22 キノボリトカゲ