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- ハヤブサ(Falco peregrinus)について
ハヤブサ(Falco peregrinus)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Falco peregrinus Tunstall, 1771
基本情報
- 大きさ・重さ
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・全長:雄 350~400 mm 雌 450~500 mm
・自然翼長:雄 305~333 mm 雌 348~378 mm
・尾長:雄 136~152 mm 雌 136~181 mm
・露出嘴峰長:雄 20~21 mm 雌 22.5~26 mm
・ふ蹠長:雄 43~48 mm 雌 52~57 mm
・体重:雄 500~680 g 雌 800~1200 g
・卵:長径 49.7~53.5 g×短径 40.5~43 mm 重量 43.8~46.3 g位
参考文献
最終更新日:2020-06-17 キノボリトカゲ
- 分布
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ハヤブサは分布が広く、南極大陸とニュージーランドやハワイ諸島など一部の諸島を除いて全世界に20亜種前後が生息する(Cade 1982)。
北米やユーラシア大陸の北部で繁殖する個体群は繁殖期が終わると、越冬のために長距離の渡りを行なう。
日本では主要四島およびその周辺で繁殖し、一部が冬期に短距離の移動を行なう程度で、本格的な渡りはしない。
なお、硫黄列島には固有亜種のシマハヤブサ(F. p. furuitii)が生息していたが、1940年以降の状況は不明で、2007年6月の南硫黄島調査時にも生息は確認されていない。
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- 生息状況
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ハヤブサは欧米で1950~60年代に有機塩素系農薬(DDTやディールドリンなど)の影響で成鳥の減少と繁殖率の低下により、絶滅の危機に瀕した(Ratcliff 1993)。
その折にハヤブサの個体数の激減が明らかになったのは、英国で行なわれた全国調査がきっかけだった。
その後、多くの人々による地道な保護努力が実を結び、個体数を回復したことは記憶に新しい(Cade et al. 1988, Cade & Burnham 2003)。
各地でハヤブサは姿を消していたが、地元では地域的な現象と考えていて、調査が行なわれるまでは事態の深刻さに気付かなかった。
この調査がなかったら、ハヤブサは絶滅してしまったかも知れない。
こうした事態を避け、迅速に保護対策を講じるためには、全国規模のモニタリング体制を確立させ、データの蓄積を行なうとともに、原因究明のために研究機関の連携と協力体制も確立させる必要がある。
また、ハヤブサなどの猛禽類に限らず、ほかの鳥類種にも当てはまることだが、現行の紳士協定的な保護法のもとでは有効な保護を行なうのは難しい。
保護を実効のあるものにするためには、強制力を備えた保護法の整備が急務である。
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- 亜種・品種
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シベリアの北東部で繁殖する亜種シベリアハヤブサ F. p. harterti と、クリル諸島からアラスカ西側沿岸にかけて繁殖する亜種オオハヤブサ F. p. pealei。
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形態
- 成鳥の形質
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成鳥、幼鳥とも雌雄の差は小さいが、個体差は大きく、光の当たり具合により色合いが異なって見えることがある。
成鳥は一般的に、頭はやや青味を帯びた黒に近い灰色で、一部が目を囲むように頬の辺りまで伸びている。
うなじから背中に行くにつれて黒味が薄れる。
腰の辺りが最も淡く、青味を帯びた明るい灰色になり、また尾の先端に行くにしたがって黒味を帯びてくる。
しかし、尾の先端には細いバフ色の羽縁がある。
下面は白またはオフホワイト(淡いピンク色を帯びている個体もいる)の地に黒に近い灰色の横斑が密に入る。
横斑はオスの方が細かく、また喉から胸にかけて斑がないオスも多い。
嘴は先端部は青味を帯びた黒色で、根元の部分は淡い灰色。
蝋膜、脚、アイリングは鮮やかな黄色で、オスの方が黄色味が強い。
瞳孔と虹彩はいずれも黒色で区別が付きにくいために、目が大きく見える。
一方、幼鳥は上面が暗褐色で、バフ色の細い羽縁がある。特に尾の先端のバフ色の羽縁は幅広で目立つ。
下面はバフ色から薄い茶までの地に暗褐色の太い縦斑が目立つ。
蝋膜とアイリングは青味を帯びた灰色、脚は薄い黄色である。幼鳥羽は翌年の秋ごろまで残る。
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- 幼鳥の形質
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額、頭上、後頭、後頸は暗褐色で、黄味を帯びた淡赤錆色の羽縁があり、後頭には赤錆色の三日月形の斑からなる横帯があり、後頸にも同様の帯が2条ある。
体の上面は暗褐色で各羽には淡赤錆色の羽縁があり、体の下面はクリーム色または赤錆色で各羽には暗褐色の幅の狭く細長い軸斑がある。
翼は濃褐色で、淡赤錆色の横縞が多数ある。ほかは成鳥と同じである。
孵化直後の雛は全身(目の周囲と頸側の一部は裸出)にクリーム白色の短い綿羽が生えているが、孵化後10日くらい経つと淡黄灰色の長い綿羽が生える。
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生態
- 生息環境
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餌となる小型、中型の鳥類が豊富で、営巣場所に利用できる断崖や大岩がある海沿いや河川の流域、広い草原、原野などがおもな生息場所である。
さらに、餌が豊富な地域では、人工の構造物 (例えば、高圧鉄塔、高層ビル、採石場跡地など)を営巣場所として利用する繁殖事例が近年増えている。
採石や鉱床発掘にともなう森林の消失などの人為的な環境の改変により、新たな営巣環境が出現し、繁殖地が拡大された地域もある(米川, 1987)。
また、冬期には、餌となる鳥類が豊富な干潟や大きな河川の流域などの開けた場所でよくみられ、越冬のために北極圏や寒帯から日本へ渡って来た個体が利用していると考えられる。
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- 食性
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餌動物はほとんどが鳥類で、ヒヨドリやハトなどの中型鳥が大半を占めるが、スズメやカラ類の小鳥やウミネコ、また高速飛行をするアマツバメを捕食した例もある。
げっ歯類を捕食した例はまれで、魚類はほとんど食べない(小堀・平野2006)。
ハヤブサの翼は先端が尖ってアスペクト比(翼の長さと幅の比)が大きいので、高速飛行に適している。
スピードを活かした狩りを行なうには障害物のない広い空間を必要とし、日本では営巣に適した断崖はほとんどが海辺にあるので、狩りは洋上や干潟で行なわれることが多い。
断崖の突き出した先端や高い人工構造物(高圧鉄塔や電波塔など)にとまり、獲物を待ち伏せる。
獲物を発見すると、翼をすばやく羽ばたいて、獲物の斜め上空へ出る。
その後からだを反転させると、翼を半ば閉じて、獲物めがけて一気に急降下する。
ハヤブサの急降下時の最高速度に関してはさまざまな推定や推測が行なわれて来たが、米国のデューク大学の研究者がおよそ 294 km/hという実測値を出している(Enderson 2005)。
また、ハヤブサは帆翔にも優れ、気流を利用してノスリ並みのホバリングも行なう。上空高く(400~500 m)舞い上がると、旋回やホバリングをくり返しながら、獲物が眼下を通過するのを待つこともある。
獲物を掴み取る場合と蹴落とす場合があり、蹴落とした場合は急降下の反動を利用して、急上昇し、宙返りしたのち落下する獲物を空中で捕捉する。
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- ライフサイクル
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2月上旬から3月にかけて産卵場所(巣の候補地)に執着しはじめる。
産卵期は日本海側南西部では3月上旬から4月上旬、東北地方以北では3月下旬から4月中旬が平均的である。
しかし、同一地域にあっても産卵時期にずれが生じる場合が多く、隣接する繁殖地で産卵日が30日ずれていた例がある(米山・立山, 1985)。
一夫一妻の繁殖が一般的であるが、まれに一夫二妻の繁殖事例も報告がある(Monneret 1983)。
日本で繁殖しているハヤブサは一般的に非繁殖期も雌雄ともに繁殖場所に留まっているので、同一の相手とつがい関係を維持していると考えられる。
繁殖は雌雄が役割分担をしながら協力して行なうが、前年に巣立った幼鳥がヘルパーのように繁殖活動に関わった事例も少数ながら報告されている (Kurosawa & Kurosawa 2003)。
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- 鳴き声
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しり上がりに「キーキー」と金属的な甲高い声で鳴くのが一般的な鳴き声である。
テリトリー内に侵入したほかのハヤブサに対して威嚇するときは、喉が詰ったような声で「カキャッ カキャッ」と鳴く。
また、幼鳥は巣立ち後一ヶ月ぐらいの間は「ピェーエピェーエ」と頻繁に鳴いて親に餌をねだる。
メスはオスに餌をねだるとき、巣立ち幼鳥と似た声で鳴く。
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- 特徴的な行動
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ハヤブサ科の仲間は自分で造巣することはなく、ハヤブサは崖の窪みや岩棚などにじかに産卵する。
海岸や内陸に発達する段丘崖や大岩が営巣場所として利用され、日本では海沿いの断崖が多い。
1950年代以前には、ドイツなどの中欧にはノスリなどのほかの猛禽類の古巣を利用してチゴハヤブサのように樹木で繁殖を行なっていた個体群が存在した(Cade et al. 1988)。
自分で造巣しないので、巣の位置や方角は崖の形状や構造に大きな影響を受けるが、巣の高さは崖面の下から半分から3分の2ほどの位置が多い。
営巣場所やねぐら場所周辺の岩肌には白い糞が付いていることが多い。
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関連情報
- その他
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番がなわばりをもって分散する。
繁殖期になると雌雄でケッケッケッと鋭い声で啼き交わしながら急降下、急上昇したり、ときには宙返りをする空中ディスプレイを繰り返す。
非繁殖期にもなわばりを構えて分散し、群れることはない。
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