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ウズラ(Coturnix japonica)の分類 キジ科(Phasianidae)
ウズラ(Coturnix japonica)の概要 ウズラ属(Coturnix)

ウズラ(Coturnix japonica)

近危急種 (NT or LR/nt)

【IUCN】現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種

絶滅危惧II類 (VU)

【環境省】絶滅の危険が増大している種

【 学名 】
Coturnix japonica Temminck & Schlegel, 1849

基本情報

大きさ・重さ

・成鳥全長:17〜19 cm
・自然翼長:97〜108 mm
・尾長:33〜43 mm
・露出嘴峰長:11〜14 mm
・ふ蹠長:雄 31〜34 mm 雌 32〜35 mm
・体重:雄 84〜114 g 雌 90〜115 g
※ 全長はMadge & McGowan(2002)、それ以外の計測値は河原(1978)による。

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最終更新日:2020-08-29 En

分布

シベリア南部、サハリン、中国東北部、モンゴル東部、朝鮮半島、日本で繁殖し、冬季には南中国、インドシナ半島などに渡る。
日本では、北海道と本州中部以北の高原などで繁殖し、冬季には本州中部以南の積雪のない地方の草原、田畑に渡来する。
北海道・青森で繁殖したものは関東、東海、紀伊、四国で越冬するものが多く、九州のものは主として朝鮮から冬鳥として渡来するが、四国、山陽、東海方面にも移動する。(内田・清棲 1942など)

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生息状況

準絶滅危惧NT(IUCN)、絶滅危惧Ⅱ類VU(環境省)

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学名の解説

属名はラテン語でウズラの、種小名は日本の意。
かつては日本産のウズラは亜種ウズラ C. coturnix japonica (Common Quail) と扱われていたが、現在は独立種として扱われている。

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和名の解説

鳴き声に基づき、その声が(ウ)憂く、(ツラ)辛いことから。またウはフ(生)の転じたもので、ツラは群れることから。
さらにウヅミアル(埋有)の転呼などのほか、草むらの中に群れるをいうなどの説がある。

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人間との関係

和歌や俳句(秋の季語)にも多く読まれ、大伴家持の「鶉鳴く 故にし里ゆ 思へども 何そも妹に 逢ふよしもなき」(『万葉集』巻4)という和歌などがある。
江戸時代以前から食用として飼育され、江戸時代には鶉合わせ(鳴き合わせ)が盛んであった。狩猟鳥でもあり、肉は美味で調理法も数多く存在する。卵は料理用として売られ、缶詰にして輸出もされる。

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形態

成鳥の形質

【雄 夏羽】
額、頭上、後頭は黒色で、各羽端には赤褐色または赤褐色の幅の広い縁があり、外側には更に灰色の細い縁がある。頭上の中央の各羽にはクリーム白色の三角形の軸斑があって、頭央線をなしている。
額側から眼の上を過ぎ、後頸までクリーム白色の眉斑がある。
眼先、耳羽、頬、腮、喉は赤褐色で、腮と喉の中央には黒色の下部が幅が広い三角形の縦線がある。
頸、上背は赤錆色または赤褐色で、各羽の先端には黒色の三角形の斑があり、中央にはクリーム色またはクリーム黄褐色の軸斑があり、軸斑の基部には淡褐色と黒色の横斑がある。
中背は黒色で、赤錆色を帯びた褐色または黄味がかった赤錆色の三角形の横斑と斑点とがある。胸は赤錆色で各羽には白色の軸斑がある。
腹はクリーム黄色、脇は赤褐色で、各羽にはクリーム白色の三角形の軸斑があり、軸斑の両側には黒色の小横斑が多少ある。
腰、上尾筒は上背と同様である。下尾筒はクリーム色である。
下雨覆、腋羽はクリーム白色である。初列風切は褐色で、外弁には赤錆色を帯びた褐色の横斑が多数あるが、第1羽の外弁はクリーム色である。
次列風切は褐色で、内外弁には赤錆色を帯びた褐色の横斑が多数ある。
三列風切も同様であるが、各羽の中央には黒色の横斑があり、中央には更に白色またはクリーム褐色の軸斑がある。
大、中雨覆は褐色で、各羽にはクリーム色の細い軸線とクリーム褐色の横斑がある。
小雨覆は赤錆色を帯びた褐色で、各羽には白色またはクリーム褐色の細い軸線があり、羽縁は灰褐色である。
尾は暗褐色で、クリーム色の軸斑と赤錆色を帯びたクリーム色の横斑がある。
嘴色は灰褐色、先端近くは黒色、基部と会合線は淡肉色。虹彩は褐色、脚色は褐色を帯びた肉色または淡肉色。

【雌 夏羽】
喉は白色で、各羽縁はクリーム色を呈し、ときには赤褐色の斑が多少あるものもある。

【雄冬羽】
腮、喉、上胸は多少赤錆色を帯びた白色で、喉の中央には黒色の斑が多少あるものが多く、ときには腮、喉の中央に黒色の下部が太い楔型の斑があり、その両側の部分は赤錆色であるものもある。

【雌冬羽】
腮、喉は白色を呈する。

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最終更新日:2020-08-29 En

幼鳥の形質

孵化直後の雛は全身に幼綿羽が密生し、体の上面は赤錆色で、頭上および後頭の両側には黒色の縦線が各1状づつ走り、背の上方で合して1条の縦線として後方に走る。
背の両側には更に1条または2条の不規則な黒色の縦線がある。
嘴の基部の上方には黒色の斑点がある。体の下面は黄土黄色で、喉および頸の両側には黒色の細い縦線が走っている。

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卵の形質

淡黄灰色の地にチョコレート色と暗褐色との粗大な斑紋や斑点が散在する。

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生態

生息環境

夏季は草地、牧場、低木の散在する草原、海岸の草原など、冬季は平地の草原、稲田、河原の草原、ヨシ原などに生息する。60~90 cmくらいの草丈の場所を好み、150~ 180 cm以上の場所には生息しない。
秋の渡来期には刈り残しの稲田に多く、稲が刈り取られると付近の荒田、雑草の多い桑畑や河原の草原などに移動する。

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最終更新日:2020-08-29 En

食性

おもにイネ科、タデ科、マメ科などの草本植物の種子などを好み、その他草本類の蒴果や漿果などを食す。
動物質では昆虫類(鞘翅目、鱗翅目、直翅目、半翅目)、クモなどを地上で採餌する(清棲 1965)。野生下での摂餌量や季節変化などはほとんど調べられていない。

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ライフサイクル

春は4月下旬から5月ごろ、秋は11月中旬から下旬ごろが渡りの最盛期である。
産卵期は5月下旬から9月上旬ごろ。
繁殖期にはつがいで行動するが、秋冬には5~10羽から30~50羽位の群を形成することもある。
低地と高地の間の短距離移動も含めると年間6回の移動期があるともいわれ、昭和初期の満州では春から秋までに2回繁殖していたと記録されている(吉村, 1940)。
樹枝などに止まることはなく、北海道江別市の放棄牧草地の例では、夏季の雄の行動圏は約1ヘクタールと狭く、その範囲内での移動も歩行のみであった。
近年の北海道では、麦畑や牧草地での観察例が多いが、刈り取り時には移動してしまうことなどから、 繁殖の成否までは確認できていない(奥山, 2005)。

一夫一妻。抱卵は雌だけが行い、孵化日数は16~21日で、雛は早成性である。飼育下の雌では約40日齢で成熟し産卵可能となる。

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鳴き声

繁殖期のオスはジュジュビー、グワッグルルーと聞こえる大きな声で、とくに日出前と日没前後に盛んに鳴く。
江戸時代などには鳴き合わせも盛んで、当時は「御吉兆」と鳴く個体が特に珍重されたという。
近年の聞きなしとしては「アジャパー」などがある。 驚いて飛び立つときにはチュルルー、チュルルーと鳴く。メスはあまり鳴かないが、他個体を呼ぶ際などにピピッ、ピピッという声を出す。

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最終更新日:2020-08-29 En

生殖行動

繁殖期は5月になってからで、そのころは「クワッ・クルクルー」といった鳴き声をよく出す。産卵期は5月下旬から9月とかなり長く、10月という例もある。
繁殖行動はほとんどわかっていない。ヨーロッパウズラでは、繁殖地に雄が先に到着してなわばりをかまえ、後から到着した雌はまず営巣場所を探し、鳴き声でその場のなわばりの雄を惹きつけるという。

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種・分類一覧