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- ヤマドリ(Syrmaticus soemmerringii)について
ヤマドリ(Syrmaticus soemmerringii)
【IUCN】現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
- 【 学名 】
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Syrmaticus soemmerringii (Temminck, 1830)
目次
基本情報
- 大きさ・重さ
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・自然翼長:♂ 205〜230 mm ♀ 192〜219 mm
・尾長:♂ 415〜952 mm ♀ 164〜205 mm
・露出嘴峰長:♂ 23〜31 mm ♀ 22〜26 mm
・ふ蹠長:♂ 57〜69 mm ♀ 53〜60 mm
・体重:♂ 943〜1348 g ♀ 745〜1000 g
参考文献
最終更新日:2020-08-06 En
- 分類学的位置付け
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羽色の濃淡や尾羽の斑紋などの強さにより、ヤマドリ S. s. scintillans(島根県北部・兵庫県北部以北の本州)・シコクヤマドリ S. s. intermedius(本州南西部と四国)・ウスアカヤマドリ S. s. subrufus(房総・伊豆・紀伊半島南部と愛媛県南部・山口県)・アカヤマドリ S. s. soemmerringi(九州北部・中部)とコシジロヤマドリ S. s. ijimae(九州中部・南部)の5亜種に分けられる。
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- 人間との関係
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「あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を 独りかも寝む」(『万葉集』巻11)など、多くの和歌に詠まれる。
『枕草子』や『源氏物語』などにも記される。京都妙心寺天球院の障屏画の「梅に山鳥」(重要文化財)などがある。肉は食用。第1尾羽は引尾と呼ばれ、邪鬼を射る矢羽に用いられた。
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形態
- 成鳥の形質
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【雄】
額、頭上、後頭、後頸は赤胴褐色で、各羽の基部と羽軸付近および先端は黒色である。後頭の各羽縁には赤銅色の金属光沢がある。眼の周囲は幅広く赤色の皮膚が裸出し、眼の下には白色の羽毛からなる斑紋がある。背、腰、上尾筒の各羽は濃い赤褐色で、淡色の軸斑があり、その左右には黒色の大きな縦斑があり、羽縁は金色の金属光沢がある赤銅色で、基部は灰褐色を呈している。
腰、上尾筒の各羽縁の左右には白色の斑があるが、上尾筒のものは腰のものより大きい。肩羽の各羽は栗色で、白色の縁があり、その内側には更に黒色の線が走り、羽軸付近はやや淡色を呈し、左右には黒色の斑がある。
胸の各羽は赤褐色で、羽軸の左右には黒色の大きな縦斑があり、羽縁は灰色を帯びた赤褐色である。腹、脇は赤褐色で、白色の幅の広い縁があり、腹の各羽の羽軸の左右には暗褐色の縦斑があり、脇の各羽の羽軸の左右には黒色の大きな縦斑がある。
下腹の各羽は灰褐色で、淡赤錆色を帯びた白色の幅の広い縁がある。下尾筒は濃い赤褐色で、各羽の基部は黒色である。下雨覆は暗褐色で、白色の縁があり、腋羽は褐色で白色の軸斑と白色の幅の広い縁がある。
初列風切は暗褐色で、赤錆色を帯びたクリーム色の斑からなる不規則な横縞が多数ある。次列風切、3列風切は黒褐色で、赤錆色を帯びたクリーム色または赤錆色を帯びた褐色の大理石様の斑からなる不規則な横縞があり、先端にはクリーム色の縁がある。
大、中、小雨覆の各羽は栗色で、羽軸の左右には黒色の大きな斑があり、大、中雨覆の各羽縁には白色の縁がある。初列雨覆、小翼羽は暗褐色で、赤錆色の大理石様の斑がある。
尾は黄味がかった赤錆色で、黒色の細い線をなした横帯が7〜13条くらいあり、帯の内側はクリーム灰色を帯び、黒褐色の小斑点が散在し、外側には栗色の幅の広い帯がある。尾羽の数は16〜20枚である。嘴色は角色、虹彩は褐色、脚色は鉛色。
【雌】
額、頭上、後頭の各羽は黒褐色で、赤錆色を帯びた褐色の縁がある。眼先、耳羽は赤錆色を帯びた褐色で、黒色の小縦斑があり、腮、喉、頬は赤錆色を帯びたクリーム色で、各羽縁に黒色の斑点がある。
後頸、翕の各羽は赤褐色で、黒褐色の小斑があり、羽端は灰褐色を帯び、先端には白色の斑があり、左右の羽縁には黒色の大きな斑紋があり、羽軸は白色を呈している。肩羽の各羽は赤褐色で、黒色の大きな斑と黒色の小斑点からなる大理石様の斑とがあり、羽端にはクリーム白色の縁があり、中央には同色の細い軸斑がある。
背、腰、上尾筒は赤錆色を帯びた褐色で、黒褐色の軸斑と同色の小斑点からなる大理石様の斑とがある。胸の各羽は黄味がかった淡赤色褐色で、黒褐色の斑があり羽端には黒褐色の極く細い縁があり、先端はクリーム白色を帯び、基部は黒褐色を呈している。腹の各羽は黄味がかった赤錆色で、暗褐色の大きな斑があり、羽端には淡クリーム色または白色の縁がある。
腹の中央と下腹の各羽は淡クリーム色または白色で、基部は灰褐色を呈している。下尾筒の各羽は赤褐色で、黒色の大理石様の斑があり、羽端はクリーム白色または白色である。下雨覆、腋羽は暗褐色で、クリーム白色の縁がある。初列風切、初列雨覆、小翼羽は暗褐色で、淡赤錆色の斑からなる不規則な横縞が多数ある。次列風切は淡赤錆色で暗褐色の大理石様の斑があり、内弁の大部分は暗褐色である。
3列風切、大、中、小雨覆は赤褐色で、淡色の軸斑と黒色の大理石様の斑があり、3列風切および大、中雨覆の羽端にはクリーム白色の縁がある。
尾は中央の1対は赤褐色で黒色の微細な斑点が散在し、クリーム灰色の不明瞭な横縞が5〜6条くらいある。他の尾羽は栗色で、不明瞭な黒色の微細な斑点があり、羽端には白色の縁と黒色の帯がある。
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- 幼鳥の形質
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孵化直後の雛は全身に淡赤錆色を帯びたクリーム色の幼綿羽が密生する。
頭の中央には濃栗色の太い縦線があり、その先端は額の方に三角形に尖り、眼の後方には黒色の細い縦線がある。背以下の体の上面は濃栗色である。
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生態
- 食性
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食性に関しては、ヤマドリが狩猟鳥の一種であるため、狩猟期に捕獲された個体の胃内容物から検出された食物に関する調査例がある(例えば小笠原, 1968,小林, 1996 など)。
それらによると、秋~冬期におけるヤマドリの食物はほとんど植物質で、シダやササといった緑色葉茎やブナ、ミズナラなどの堅果類、ヤドリギ、ジャノヒゲなどの漿果類などの果実が検出されている。
筆者の分析した数十個体の嗉嚢(そのう)からも、冬期にもシダ類が多く見られた。
そのほか特徴的なこととして、スギの実、落葉なども検出された。ヤマドリが人工植林地でもよく観察されるのは知られているが、そこを隠れ場所としてだけでなく、おそらく餌場環境としても十分利用していると思われる。
しかし、繁殖期における野外での食性はほとんどわかっていない。人工養殖環境下では、ヒナや幼鳥にかなり動物質の餌を与えないと成長が遅れると言われている。
採食時には、歩きながら地面をついばむ姿勢がよく観察されるが、シダなどの葉っぱを引きちぎる行動も見られ、やはり葉類を好食しているようである。またヤドリギの結実期には、樹上にとまって実をついばんでいる。
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- ライフサイクル
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キジと同様に一夫多妻と思われているが(清棲, 1978)、実際には明確に証明されていない。野外では雄が長期間1羽のみのメスをしっかりガードして行動する姿もよく見られる。
抱卵はメスのみで行い、ヒナの世話もメスが主体で行なう。関東周辺では、3月下旬頃にオス同士で飛び上がって互いに蹴り合うなどの激しい闘争が見られ、その後、メスを連れてつがいで行動するようになることが多い。
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- 鳴き声
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ほとんど鳴かないが、警戒する際に小声でクックッと鳴いたり、キュッキュッ、キチッキチッという甲高い声を出すことがある。雄はとくに繁殖期に翼を打ち鳴らしてドドドッと言う大きな音(ドラミング)を出して、接近する敵を威嚇する。
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- 産卵
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大木の根元や倒木の下、林縁の草地の中などの地上に約 20~30 ㎝くらいの浅いくぼみをつくって巣にする。
巣には樹木の葉、枯れ草などをわずかに敷いて産座にする。一腹卵数は、通常7~10個である。サイズは、平均長径 47.4 mm×平均短径 35.4 mm、重さは平均 31.9 gで、一様な淡黄褐色をしている。
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関連情報
- その他
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キジのように尾羽が長くてほぼ同じくらいの大型の鳥であるが、雄は頭部に飾り羽がなくて丸みを帯び、尾羽がずっと長い点などで、キジとは違った印象を与えている。また、雌は尾羽の先端が丸みを帯び、キジの雌と違って先が尖っていない。
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