ナベヅル(Grus monacha)の解説トップに戻る
ナベヅル(Grus monacha)の分類 ツル科(Gruidae)
ナベヅル(Grus monacha)の概要 ツル属(Grus)

ナベヅル(Grus monacha)

危急 (VU)

【IUCN】絶滅の危険が増大している種

絶滅危惧II類 (VU)

【環境省】絶滅の危険が増大している種

【 学名 】
Grus monacha Temminck, 1835

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:93~107 mm
・翼長:480~530 mm  
・跗蹠:200~230 mm
・尾長:160~190 mm 
・体重:3.3~6.7 kg
・卵:長径 91~106 mm × 短径 59~62 mm 

参考文献

  • 清棲幸保 1954 ナベヅル, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 861-863.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

分布

旧北区。バイカル湖北部からヤクート南部、東はアムール川中・下流域、ビギン川中流域、ウスリー川下流域までに繁殖分布し、このほかにも西および中央シベリア、バイカル湖南部で繁殖期に非繁殖鳥が観察されている。

日本には冬鳥として、10~12月ごろ渡来する。

日本の主要な定期的渡来地は、鹿児島県出水市と山口県熊毛町の2箇所だけである。

本種の全個体数のほとんどと考えられる約7,000羽は出水地方で越冬し、マナヅルとともに年々増加の傾向にあり、狭い地域の集中過密越冬地となっている(安部, 1991)。

一方、熊毛町八代地方では、近年渡来数が変動しつつ暫減傾向にあり、現在越冬しているのは50羽以下である(安部, 1991)。

1991年と92年に実施された発信器と人工衛星による個体追跡により、出水地方を渡去した個体は朝鮮半島を北上し、北朝鮮の西海岸などを経由して中国東北部の三江湿原に入り、そこでしばらく休息したのちロシアの東南部のアムール川中・下流域に到達することがわかった(Higuchi et al, 1992)。

特別天然記念物と危急種に指定されている。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 ナベヅル, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 204.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

学名の解説

種小名はラテン語で修道女の意。

参考文献

  • 吉井正 2005 ナベヅル, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 351.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

和名の解説

和名は鍋の黒色に由来。

参考文献

  • 吉井正 2005 ナベヅル, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 351.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

ツル目 ツル科

参考文献

  • 吉井正 2005 ナベヅル, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 351.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

人間との関係

山口県の県鳥。

参考文献

  • 吉井正 2005 ナベヅル, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 351.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

雌雄同色。額、頭上および眼先から口角までは皮膚が裸出し、眼先、額には黒色の剛毛が密生し、頭上は赤色の皮膚が裸出している。

顔、腮、喉、頬および頸の上部(全体のおよそ4分の3)は白色で、下部は石盤灰色である。

背、肩、腰、上尾筒は暗褐色を帯びた石盤灰色、胸、腹、脇、下尾筒は淡石盤灰色で、各羽には淡灰色の縁がある。

下雨覆、腋羽は淡石盤灰色である。風切羽は石盤黒色で三列風切は初列風切より長くて、先端が尖り、羽縁は細く枝分かれしている。

雨覆羽は暗褐色を帯びた石盤灰色である。尾は石盤黒色。

嘴色は黄褐色、基部の方は暗肉色、虹彩は褐色を帯びた黄色または褐色を帯びたオレンジ色、脚色は黒色の角色。

参考文献

  • 清棲幸保 1954 ナベヅル, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 861-863.
  • 吉井正 2005 ナベヅル, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 351.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

生態

生息環境

本邦には冬鳥として渡来し、海岸や山間部の開けた水田、乾田、湿地、河川の河原や海岸の埋立て地、干潟などで越冬する。

マナヅルに比べると、刈田に草の生えてきた半草地に多い(大迫ほか, 1989)。

繁殖地では、山間部の森林に囲まれた、カンバ類が散在する湿地で営巣する(藤巻ほか, 1989)。

参考文献

  • 清棲幸保 1954 ナベヅル, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 861-863.
  • 中村雅彦 1995 ナベヅル, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 204.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

食性

繁殖期の食性はわかっていないが、越冬期には植物の種子・根茎、イナゴやヤゴなどの昆虫、ドジョウなどの魚類などさまざまなものを餌とする。

刈田に草の生えてきた半草地では草の葉をよく食べる(大迫ほか, 1989)。

ゆっくり歩きながら、首を下げて地上の餌をついばむ。

参考文献

  • 清棲幸保 1954 ナベヅル, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 861-863.
  • 中村雅彦 1995 ナベヅル, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 204.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

ライフサイクル

1974年になって初めて巣が発見され、これまでにビキン川付近などで10数例の営巣例が記録されているだけなので、繁殖生態は断片的にしかわかっていない。

巣は、下部の直径 95~80 ㎝、上部が 60×60 ㎝で、湿原中のけもの道につくる(藤巻ほか, 1989)。

巣の周辺部は盛り上がり、産座は窪んで低くなっている。

一夫一妻で繁殖するらしい。1巣卵数は2個、雌雄交替で抱卵する(藤巻ほか, 1989)。

抱卵日数は約30日。孵化した雛は早成性で、孵化約3日後には巣を離れるが、その後、越冬地まで家族単位で行動する。

参考文献

  • 清棲幸保 1954 ナベヅル, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 861-863.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

鳴き声

誇示するときには、クルルー、クルルーまたはコロロ―、コロロ―あるいはクヮオー、クヮオーと啼き、数羽が一斉に啼くときにはガガァ―、ガガァ―、ガガァ―(Trumpeting)と喧しく啼き立てる。

警戒時にはクルルッ、クルルッと低い声で啼き、幼鳥はピー、ピーと啼く。

参考文献

  • 清棲幸保 1954 ナベヅル, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 861-863.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

特徴的な行動

繁殖期は湿原に番がなわばりを構えて分散する。

越冬地では、番やその春に生まれた雛連れの家族が各々ひとつの単位となって行動し、これらにまだ繁殖年齢に達していない亜成鳥や家族群、番が加わり混合群となる(Onsako, 1989)。

周辺部の群れには①なわばり、②定着、③放浪の三つの分散様式がある(Onsako, 1989)。

なわばり群と定着群は番と家族群に限られ、一定のなわばりをもって分散し、数年にわたって毎年維持されることもある。

放浪群には、単独個体と大群が含まれる。出水地方ではすべての個体が共同塒で眠る。

早朝、塒を飛び立ったツルのうち、大半は塒に隣接する人口餌場にもどり、そこに日中はとどまるが、約10%の個体は給餌場外の周辺部で昼間をすごし、夕方に集団塒にもどる。

熊毛町の越冬個体群では、日中は耕作地で採食し、渡来当初は家族単位ですごし、1月以降に給餌場近くで群れる(Eguchi et al, 1993)。

山間の湿田に数羽から20~30羽の小群に別れて塒につく(河村, 1975)。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 ナベヅル, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 204.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

その他生態

冬季には雄雌と若鳥2羽位の家族群が多数集まった50~500羽位の大群で生活する。

両脚を交互にして歩みつつ長い頸を下げ地上の餌を盛んに漁る。

人が近寄り1羽がクルルルーと啼き立てると全群が一斉に頭を上げ頸を延ばして飛び立つ用意をし、風上に向かって佇立するのが常である。

飛翔時には翼を緩慢に羽搏いて飛翔し、長い頸を真直ぐに前方に延ばして脚を後方に長く引き、頸や足を体の水平面よりやや下方にしているのが常である。

飛降りるときには長い脚をだらりと下げて垂直に近い角度で舞降りる。

群が降りている上空にほかの群が飛来すると、地上にいる群中の数羽が1団となって頸をのばし、嘴を一斉に空に垂直に向け、雄は両翼を左右に拡げて激しい声で啼きながら誇示する。

群飛するときにはV字形に並ぶのが常である。ときには大空高く旋回飛翔することもある。

休むときには片脚で立ち、頭を後方に向け長い頸を折り曲げて嘴を背羽の間に入れて睡る。

樹上にとまることはない。夜間広濶な安全な場所を塒として集団で睡り、時折り、ココロ、コウ―、クロロロウーと叫ぶ。

参考文献

  • 清棲幸保 1954 ナベヅル, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 861-863.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

種・分類一覧