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タゲリ(Vanellus vanellus)の分類 チドリ科(Charadriidae)
タゲリ(Vanellus vanellus)の概要 タゲリ属(Vanellus)

タゲリ(Vanellus vanellus)

近危急種 (NT or LR/nt)

【IUCN】現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種

【 学名 】
Vanellus vanellus (Linnaeus, 1758)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:22~28 mm
・翼長:203~236 mm  
・跗蹠:41~50 mm
・尾長:97.5~119 mm 
・体重:179~275 g
・卵:長径 42.3~58 mm × 短径 31.2~37.2 mm 平均長径 47 mm × 短径 33.7 mm

参考文献

  • 清棲幸保 1955 タゲリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 774-776.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

分布

旧北区。ユーラシア大陸の中緯度地方に広く繁殖分布し、冬は同大陸南部に渡って過ごす。

日本には冬鳥として本州、四国、九州などの各地に渡来し、10月から翌年の4月までよく見られ、比較的冬に多い。北海道では旅鳥である。

1973年に石川県加賀市の柴山潟干拓地の水田で繁殖が認められ、5巣が見つかり4巣は雛が巣立った(矢田・中村, 1973)。

翌1974年には新潟県中頸城郡の水田で繁殖が認められ、2番が再営巣を含めて4巣を設けたが、卵を捕食され失敗した(山本・古川, 1975)。

参考文献

  • 中村登流 1995 タゲリ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 101.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

チドリ目 チドリ科

参考文献

  • 吉井正 2005 タゲリ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 312.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

【雄 夏羽】
額、頭上、後頭は黒色で、緑色の金属光沢があり、後頭の羽は細長くて長さ80~100mm位で飾羽をしている。

嘴の基部から額側および眼の上を過ぎて白色の眉斑があり、頸側の白色の部分に引き続いている。この上部には褐色の小斑が多少ある。

眼先から耳羽の白色の部分を横切って黒色の線が走り、眼先で腮、喉の緑色の金属光沢がある黒色の部分に引き続いている。

眼の下には白色の小斑があり、頸側の白色の部分に引き続いている。

後頭は褐白色で黒色の小斑がある。上胸には藍色の金属光沢のある黒色の幅の広い帯があり、腮、喉の黒色の部分に続いている。

肩羽、背、腰は黒色で緑色の金属光沢があり、光線の具合では紫色の金属光沢を発する。

肩羽の外側のものは赤紫色の金属光沢がある。下胸、腹、脇は純白色、上尾筒は濃赤錆色、下尾筒は淡赤錆色を呈している。

下雨覆、腋羽は白色で、下雨覆の外側のものは黒色である。

初列風切は藍黒色で、外側のものの先端近くは褐白色を呈し、羽端は暗褐色である。

次列風切は藍黒色で、内側のものの基部は白色である。

三列風切は黒色で緑色の金属光沢があり、光線の具合では紫色の金属光沢がある。

大、中、小雨覆は黒色で、銅鉄様の暗藍色の金属光沢があり、中、小雨覆の各羽には緑色の金属光沢のある縁がある。

初列雨覆、小翼羽は藍黒色である。

尾は前半部は黒色、基半部は白色で、羽端には褐白色細い縁があり、外側の尾羽ほど黒色部が少なく、最外側のものでは大部分が白色で、内弁の先端にわずかに黒色の小斑があるだけのものが多く、ときには全部白色であるものもある。

次の尾羽では黒色部は先端の部分(全体の3分の1)だけにある。

嘴色は黒色、虹彩は暗褐色、脚色は褐色を帯びた肉色。

【雌 夏羽】
頭上、後頭は黒褐色で金属光沢を欠き、後頭の飾羽は短い。

腮、喉は黒色で、白色の斑があり、眼先は白色を帯びる。形は雄よりも小さい。

【雄雌 冬羽】
頭側、頸側は黄味がかった赤錆色を帯び、腮、喉は白色である。

背の外側の各羽には赤錆色の極く細い縁があり、肩羽、三列風切および雨覆羽のあるものには黄味がかった赤錆色の縁がある。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 タゲリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 774-776.
  • 吉井正 2005 タゲリ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 312.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

成鳥の冬羽に類似するが、体の上面の各羽端には赤錆色を帯びた褐色の縁がある。

尾の先端には褐色の縁がある。孵化直後の雛は全身に幼綿羽が密生し、前頭は淡褐色で黒色の不明瞭な頭央線が走り、眼先から眼の後方まで黒色の過眼線があり、左右のものが後頭で合する。

耳羽および頬は淡褐色で黒色の斑が散在し、後頸は汚白色である。

体の上面は淡褐色で黒色とクリーム褐色との斑が散在し、翼には黒帯があり、背および尾の外側には黒色の線があり、腿にも黒色斑がある。

腮、喉は白色、胸以下は白色であるが頸側には黒色の頸帯がある。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 タゲリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 774-776.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

卵の形質

卵は淡オリーヴ褐色、灰褐色、赤錆色を帯びたクリーム色などの地に暗褐色の粗斑と斑点とが一面に散在する。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 タゲリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 774-776.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

生態

生息環境

冬鳥として渡来し、水田、湿田、干潟、河原や湖沼の水辺、湿っぽい畑地、水溜まりのある荒れ地などで見られる。開けて見通しのよい平坦地を好む。

参考文献

  • 中村登流 1995 タゲリ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 101.
  • 清棲幸保 1955 タゲリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 774-776.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

食性

地上を歩いたり走ったりして急に立ち止まり、思わぬ方向に向かってくちばしを突き出す。急襲するタイプの鳥である。

水を含んだ泥地を片脚で叩いて、虫を追い出して取ったりする。地上の昆虫やその幼虫など、無脊椎動物をついばむ。

具体的には、チャイロケシゲンゴロウ、オサムシ、コシボソガガンボよトビケラの幼虫、ミミズ、ナメクジ、また植物性ではニワヤナギの種子なども食す。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 タゲリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 774-776.
  • 中村登流 1995 タゲリ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 101.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

ライフサイクル

繁殖期は3~6月、一夫一妻で繁殖する。単独で繁殖する番もあるが、ルーズなコロニー状に集まって繁殖する番もある。

巣は地上の草むらの中に窪みをつくり、草の葉・茎を集めて、皿形にする。たいてい巣の周辺に草むらを踏みつけただけのいくつかの擬巣がある。

巣は二重になっていて、第1段に擬巣があり、その上に第2段の本巣が乗っている(矢田・中村, 1973)。

巣のスクレイプ(多分、擬巣)を始めるのは雄で、いくつかのスクレイプから雌がひとつを選ぶ(Cramp & Simmons, 1983)。

1巣卵数は3~5個で、ほとんどは4個である。両親が交代で抱卵するが、大部分は雌が行い、夜間は雌が抱卵する。

雛は26~28日で孵化し、早成性の離巣性で、両親の世話で育ち、35~40日ぐらいで独立する。

参考文献

  • 中村登流 1995 タゲリ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 101.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

鳴き声

地上に降りたときや飛翔中にはクイ―ウイッ、クイーウイッまたはピイ―ウイッ、ピイ―ウイッあるいはニャオー、ニャオーとやや猫の啼き声に似た声で啼き、飛び立つときには必ず啼くのが常である。

繁殖期にはクーウイーイッ、クーウイーイッと啼きながら飛翔して誇示する。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 タゲリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 774-776.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

特徴的な行動

集合性の強い鳥である。非繁殖期は数羽から数十羽の群れでいることが多いが、数百羽~数千羽の大群で現れることもある。

採食時は比較的分散するが、休息時や塒には集合し、密集する。繁殖期でも集合性がある。

繁殖開始は群れのフライトディスプレイで始まる。しばしば渡りの途上でも急に始め、そのまま繁殖に入ってしまうこともある。

雄は雌の頭上で旋回したり半周したり、ローリングと上昇、急降下を繰り返す。

その範囲は直径 100 mぐらいにおよび、外周部に下りては舞い立つ。このときチキクイーックイ―ッという発声をともなう。

こうして集団の中でなわばり分散をする。この後、雄のスクレイピングディスプレイが行われる。

雄は水平位の前傾姿勢で1点に歩き、枯れ草の中にうずくまって胸を埋め、後半身を高め、翼をいくらか開いて振動させ、足で蹴って体を回転させる。

首を起こし、冠羽を立てる。

雄はその場から、歩いたりフライトディスプレイで遠のいては再び近づく(中村, 観察)。

なわばりは 0.4~0.6 haぐらいで、隣の巣とは 20~150 mぐらい離れている(Cramp & Simmons, 1983 )。

参考文献

  • 中村登流 1995 タゲリ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 101.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

種・分類一覧