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ケリ(Vanellus cinereus)の分類 チドリ科(Charadriidae)
ケリ(Vanellus cinereus)の概要 タゲリ属(Vanellus)

ケリ(Vanellus cinereus)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

情報不足 (DD)

【環境省】評価するだけの情報が不足している種

【 学名 】
Vanellus cinereus (Blyth, 1842)

基本情報

大きさ・重さ

・全長:雄 341.7±12.1 mm (N=14)  雌 336.3±12.1 mm (N=12)
・自然翼長:雄 236.9±7.5 mm (N=14) 雌 235.5±4.6 mm (N=12)
・尾長:雄 109.4±3.7 mm (N=14)  雌 109.8±2.8 mm (N=11)
・露出嘴峰長:雄 42.02±2.91 mm (N=14) 雌 41.37±3.00 mm (N=12)
・ふしょ長:雄 76.90±2.70 mm (N=14) 雌 76.26±3.45 mm (N=12)
・翼爪:雄 5.08±1.35 mm (N=14) 雌 3.69±0.54 mm (N=12)
・体重:雄 280.1±15.9 g (N=13) 雌 266.6±19.7 g (N=10)
・卵:長径 41~51.2 mm × 短径 30~35 mm 平均長径 48mm × 短径32.7 mm 重量 20~29 g

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ケリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 776-777.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

分布

中国北東部から東南アジアにかけて分布し、日本では東北地方から西日本にかけて局所的に生息している(Sonobe & Robinson 1985,中村 1995)。

1950年代には東北地方と関東北部でのみ繁殖が確認されていたが(清棲 1966)、1970年代から太平洋側を中心に西日本に繁殖圏を拡大し、近年では九州北部でも繁殖している。

参考文献

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

学名の解説

種小名は灰色を意味し、頭の色をさしている。

参考文献

  • 吉井正 2005 ケリ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 207.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

チドリ目 チドリ科

参考文献

  • 吉井正 2005 ケリ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 207.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

頭部、頸は灰鼠色で、下喉は褐色を帯び、胸の方に行くに従って色が濃く、上胸では黒褐色の明瞭な帯びをなしている。

眼先には皮膚の裸出した葉形の肉片が付着し、黄色である。眼瞼は黄色である。

肩羽、背、腰は褐色で、ブロンズ様の金属光沢があり、下胸、腹、脇、上尾筒、下尾筒は白色である。

初列風切は黒色、次列風切は白色で、内側のものは褐色を帯び、三列風切は褐色である。

大雨覆は褐色で、羽端は幅広く白色を呈している。

中、小雨覆は褐色でブロンズ様の金属光沢があり、外側の部分は白色である。初列雨覆、小翼羽は黒色である。

尾は白色で、前半部には黒色の幅の広い帯があり、羽端には白色の細い縁がある。

黒色の帯は外側のものほど幅が狭く、最外側の風羽では全部が白色であるか、または外弁に黒色の小斑点があるかである。

羽端にある縁は中央のものほど褐色を帯びている。嘴色は黄色、先端は黒色、虹彩は赤色、脚色は汚黄色、爪は黒色。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ケリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 776-777.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

孵化直後の雛は全身に綿羽が密生し、体の上面はクリーム褐色で黒色の斑点が散在している。

体の下面は白色で、胸以下は多少クリーム褐色を帯び、頸側には黒色の不明瞭な頸帯がある。

幼鳥の《頭上、頸》は褐色、《腮》は白色、《喉》には灰褐色の不明瞭な縦斑があり、《胸帯》を全く欠くかまたは暗褐色で、各羽に白色の縁があるかである。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ケリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 776-777.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

卵の形質

卵は緑灰色または灰褐色の地に、暗褐色または黒褐色の粗大な斑紋と灰紫色の斑紋とが散在し、斑紋は鈍端に密生しているのが常である。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ケリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 776-777.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

生態

生息環境

主に平野部の農耕地や河川敷に生息し、草丈の低い湿地や草原で採食する。主な餌は地表や地中の小動物である。

繁殖期には数つがいのテリトリーが密集したコロニーを形成して営巣するが、単独つがいでの営巣も見られる。

参考文献

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

食性

湿田、水田、砂泥地などで、地上を歩いたり走ったりして採食する。

ゴミムシ、クロアリ、ミミズ、カエルなどの昆虫の成虫・幼虫、イネ科やタデ科などの草の種子などをついばむ。

歩いて急にとまり、思いがけない方向にくちばしを突き出すという、急襲するタイプである。

参考文献

  • 中村登流 1995 ケリ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 100.
  • 清棲幸保 1955 ケリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 776-777.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

ライフサイクル

繁殖期は3~8月。一夫一妻制。平均 2.1 haのテリトリーをつがいで防衛する。

造巣の雌雄分担は不明。抱卵は雌雄が交替で行う。孵化後ヒナは巣を離れ、両親に先導されてテリトリー内を移動しながら自力で採餌する。

両親は養育行為として抱雛、防衛行動を行う。ヒナが飛べるまで成長すると、家族群はテリトリーを解消し移動する。

1繁殖期における繁殖回数は通常1回だが、ごく稀に2回繁殖を行うこともある。

また繁殖失敗したつがいは最大2回まで再営巣を試みる(高橋 2007)。

本種は水田などの湿地環境、またそれらの近くにある畦、畑地、休耕田、河川敷などの背丈の低い草地や裸地に巣を作る。

地面に深さ 数 cmの窪みを掘り、周辺に散在する枯れ草やワラを敷き詰める。巣の大きさは直径約 20 cm、高さ約 2 cmである。

巣が湿地内にある場合には、水に浸らないよう巣材をより高く積み上げる。

抱卵は約28日で、ヒナは孵化後2日以内に巣を離れる。孵化後15日前後から幼羽が生え始め、小さな肉垂や翼爪も確認できるようになる。

孵化後44日前後には飛べるようになり、テリトリーを離れる。

孵化成功率は約45%、養育成功率は約65%、全体の繁殖成功率は約30%である。

7月下旬以降、繁殖活動が終了したつがいや家族群は10羽ほどの小群で生活し換羽を行う。

10月以降、主に積雪地では多くの個体が南下するが、留まり越冬する個体も見られる。南下した個体は2月下旬頃に繁殖地へ帰還する。

参考文献

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鳴き声

秋冬の候にはキイキイまたはケリリ、ケリリと啼き、地上に降りているときは黙っていることが多く、主として飛翔中に啼く。

繁殖期には啼くことが多く、警戒時にはキキッ、キキッまたはキリリッ、キリリッと鋭い金属性の刺すような声で叫び、飛翔中や地上で盛んに啼く。

参考文献

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

特徴的な行動

親鳥が捕食者をモビングして、巣やヒナを防衛することは多くの種に広く見られる習性である。

中でもケリ属は特に激しい防衛行動を行うグループの1つであり(Elliot 1985a, b, Ohno 1996, Kis et al. 2000)、ときにテリトリーが隣接する複数のつがいが協力的な防衛集団を形成する (Walters 1990)。

ケリでは、コロニーに捕食者が接近、侵入すると、侵入を受けたつがいを中心にコロニー内の複数のつがいが警戒声を発し、撃退できない場合は捕食者の周囲を旋回飛行する威嚇行動、さらに直接接触のリスクを伴う攻撃行動に発展する。

これら集団防衛は最大で16個体が参加することもある。

防衛の集団化には防衛対象の種類と営巣分布様式が影響している(Takahashi et al. 2007)。

ケリの防衛対象は捕食者となり得る大型鳥類やヘビ類から、脅威となり得ない小型鳥類、さらにヒトまで多種多様であるが、特に猛禽類に対して集団防衛が頻繁に起きていた。

また集団防衛は隣接する巣が接近、集中しているコロニーほど多く行われていた。

さらに集団防衛は捕食者の撃退に効果的で、防衛に参加する個体数が多いほど確実に捕食者を撃退できた(高橋 2007)。

即ち、ケリはより集中したコロニーを形成することで集団防衛という高い防衛力を得て、捕食者を効果的に撃退していると考えられる。

参考文献

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

その他生態

渡り期や冬には集合性がある。ふつうは4~5羽ぐらいから20~50羽ぐらいの群れで見られるが、100~300羽の大群が記録されたこともある。

繁殖期にはなわばり分散をする。

しかし、各番が行動する範囲は直径 80 mぐらいで、いくつかの番が大きい範囲で集まっており、これを見ると、それぞれなわばりを持ちながらコロニー状に集まっているといえる。

侵入者に対しては、たいてい番の2羽で水平位の威嚇のポーズで走って迫る。

飛び立って、2羽で旋回し、激しいダイビングをする。

このとき、しばしばコロニーのメンバーたちが駆けつけてきて、叫びながら旋回してダイビングを繰り返す。

やじ馬行動とよばれる集団防衛行動である。

カラスのような空中を飛ぶ侵入者に対しては、モスタイプの独特のはばたきをしながらチキリリ、チキリリと連呼しつつ、体を右に傾けたり左に傾けたりして、傾斜を変えながら追いかける。

参考文献

  • 中村登流 1995 ケリ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 100.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

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