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コバシチドリ(Charadrius morinellus)の分類 チドリ科(Charadriidae)
コバシチドリ(Charadrius morinellus)の概要 チドリ属(Charadrius)

コバシチドリ(Charadrius morinellus)

【 学名 】
Charadrius morinellus Linnaeus, 1758

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:15~20 mm
・翼長:147~159 mm
・跗蹠:33~39 mm
・尾長:66~76 mm
・卵:長径 35~46.4 mm×短径 26.8~31 mm 平均長径 41.2 mm×短径 28.7 mm

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最終更新日:2020-08-28 キノボリトカゲ

分布

旧北区分布型。ユーラシア大陸の高緯度地方、北極圏からバイカル湖、バルハシ湖にかけて繁殖し、アフリカ大陸北部、ペルシャ湾に渡って越冬する。

日本ではまれに訪れる旅鳥で、これまで北海道、青森、宮城、栃木、千葉、東京、神奈川、新潟、静岡、愛知、三重、奈良、広島、沖縄など各都道県に記録があり、9~10月の記録が多い。

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学名の解説

種小名は小馬鹿を意味し、人を恐れないために捕まえやすいからつけられた名という。

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分類学的位置付け

チドリ科

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形態

成鳥の形質

【雄夏羽】
額・頭上・後頭・後頸は黒色で、各羽には白色または白色に近い縁がある。眼の上には白色の太い眉斑がある。

眼先から眼の後方まで暗褐色の過眼線がある。

耳羽は白色で、黒色の小斑点が多少あり、腮・喉は白色、下喉は淡灰褐色で、黄味がかった赤錆色の斑点がある。

頸側は灰褐色で、暗色の縦斑がある。背・腰・上尾筒は灰褐色で、各羽には淡赤錆色の縁があり、肩羽は黒色で各羽には淡赤錆色の縁がある。

上胸には白色の幅の広い三日月形の帯があり、その前後の境には黒褐色の斑がある。

下胸・胸側・脇は黄味を帯びた濃い赤錆色である。

腹の中央は黒色、下腹と下尾筒は白色で、ときには下尾筒がクリーム色を帯びているものもある。

下雨覆・腋羽は淡灰褐色で、腋羽の各羽には淡赤錆色の縁がある。

初列風切は灰褐色で、外側のものは黒色に近く、第2羽の羽軸は白色である。

次列風切は灰褐色で、羽端には白色の細い縁があり、内側のものの内弁の基部は白色を帯びている。

三列風切は細長い形で、灰褐色を呈し、淡赤錆色の縁がある。

大・中・小雨覆は灰褐色で、淡赤錆色の縁があり、初列雨覆・小翼羽は灰褐色である。

尾は灰褐色で、淡赤錆色の縁があり、外側の尾羽の先端には白色と黒色との帯がある。

中央の尾羽は黒色勝ちで、先端には白色の細い縁がある。嘴色は黒色、虹彩は暗褐色。脚色は褐色を帯びたオーカー黄色。

【雌夏羽】
雄に類似しているがときには色が淡い。

【雌雄冬羽】
額・頭上・後頭・後頸は暗褐色で、各羽には淡赤錆色の縁がある。

眼の上にはクリーム色の幅の広い眉斑があり、耳羽はクリーム色で褐色の小縦斑がある。

腮・喉はクリーム白色である。体の上面は灰褐色で各羽には淡赤錆色の縁がある。

腰と上尾筒はやや淡色で、極く細い淡色の縁がある。下喉から胸までは淡灰褐色で、各羽には黄味を帯びた淡赤錆色の縁がある。

脇も同様である。上胸には汚白色の不明瞭な帯がある。下腹は白色である。

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幼鳥の形質

【雛】
孵化直後の雛は全身に幼綿羽が密生し、額は淡黄褐色、頭上は淡黄褐色、白色、黒色が混在し、頭上には黒色の頭央線が走る。

両頭側から後頭まで白色の三日月形の斑があり、この斑の下部には顔の両側に後頸から頬を過ぎ眼先まで黒色の線が走っている。

眼の上には白色の眉斑があり、眼先から後頸まで黒色の細い過眼線がある。

耳羽・頬・後頸などは白色であるが、後頸には暗色の羽が混じっている。

体の上面は淡黄褐色で黒色斑と灰白色斑とが混在する。体の下面は灰白色で、各幼綿羽の基部は暗色、胸はクリーム色を帯びる。

【幼鳥】
体の上面は黒色で各羽には淡赤錆色の縁がある。

体の下面は淡オーカー色または淡赤錆色であるが、喉には暗色の斑がある。下腹は白色である。

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卵の形質

卵は淡オリーヴ褐色、緑色を帯びた淡オリーヴ褐色、褐色勝ちの淡オリーヴ褐色などの地に黒褐色の小斑点と淡灰色の斑点とが散在する。

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生態

生息環境

干潟、砂浜、海岸やその周辺の草地などに現れる。新潟県では標高 2000 mの山頂草原に9月の記録がある。

繁殖地では、山岳ツンドラやヒース地帯で砂利や草、コケ類などが散在している。

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食性

沼の泥や豊かな植生のあるところで採食する。地上で鞘翅類、双翅類などの昆虫やクモ類を、くちばしの先で叩いて探ってついばむ。

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鳴き声

ピー、ピ、ピイ―、ピー、ピ、ピイ―、またはフィッ、フイ、フイ―、フィッ、フイ、フイ―などと啼き、繁殖期の警戒時にはケリー、ケリーと鋭い声で啼く。

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特徴的な行動

繫殖期は5~7月、多くは一夫一妻で繫殖する。巣は地上に窪みをつくり、草の破片や葉で内張りをする。

1巣卵数は1~4個で、ほとんどは3個。番の関係は1巣卵数が完成すると終わり、ルーズにかかわって再営巣に備える。

ところが、番の関係はさらに複雑である。例えば雄が多い所では継続的な一妻多夫が見られ、この場合、雌は5~11日ぐらいで次の雄と番になり、繁殖期を通して2~3の雄とかかわるという。

急速な複式巣卵をもつ一妻多夫(Nethersole Thompson, 1973)である。

一方、雌が多いところでは同時的一夫多妻で繁殖する。ふつうは2雌で、この場合、2羽の雌がひとつの巣に産卵することが多く、1巣卵数は6個になる。

各雌がそれぞれの巣に産卵することもあるが、うまくいかない(Nethersole Thompson, 1973)。

多くは雄だけが抱卵し、雛は24~28日ぐらいで孵化する。

雛の世話は雄だけの場合が多いが、雌もついていて、雛の世話を助ける場合がある。

雛は早成性の離巣性で、25~30日ぐらいで独立する。

雌が雛の世話をする場合もあるが、雌は先に孵化した雛を分担し、雄は後で孵化した雛をみていく(Cramp & Simmons, 1983)。

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その他生態

番の形成では雌雄の役割に逆転が見られる。渡来当初は5~8羽ぐらいの小群をつくる。

雌は、両翼を背の上に立てるディスプレイをしながら群れから走り出して座り込む行動で雄を誘う。

雄が反応しないと何回もこの行動を繰り返す。また、雌がフライトディスプレイをする。

地上 30~100 mあたりを、ゆっくりしたはばたきの飛び方(バタフライタイプ)で、雄をよぶさえずりをしながら旋回したり、ループを描いたりして飛び回る。

雄が引きつけられてくると、雌は雄を追いかける。次に雄は雌に従うようにゆっくりしたはばたきで飛ぶ。

そして、雄が雌を追いかけるように変わっていく。交尾のための求愛行動やスクレイピングディスプレイも、初めは雌がイニシアチブをとるが、次第にイニシアチブは雄へと変わっていく(Cramp & Simmons, 1983)。

非繁殖期には30~80羽ぐらいまでの群れをつくるが、数百羽になることもある。

渡り期には5~50羽ぐらいの小群でいることが多い(Dement’ev et al., 1969)。

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種・分類一覧