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エリマキシギ(Philomachus pugnax)の分類 シギ科(Scolopacidae)
エリマキシギ(Philomachus pugnax)の概要 エリマキシギ属(Philomachus)

エリマキシギ(Philomachus pugnax)

【 学名 】
Philomachus pugnax (Linnaeus, 1758)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:36~42 mm
・翼長:180~185 mm
・跗蹠:64~70 mm
・尾長:64~70 mm
・卵:長径 39.2~47.5 mm × 短径 28~32.1 mm 平均長径 43.9 mm × 短径 30.7 mm

参考文献

  • 清棲幸保 1955 エリマキシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 732-734.

最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ

分布

旧北区。ユーラシア大陸の高緯度地方から北極圏に繁殖分布し、冬はアフリカ大陸中東部からインド、オーストラリア大陸南部に渡ってすごす。

日本には旅鳥として、少数が8~10月と4~5月に各地に現れ、秋の方が多い。

参考文献

  • 中村登流 1995 エリマキシギ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 112.

最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ

学名の解説

種小名は戦意的なという意味。

参考文献

  • 吉井正 2005 エリマキシギ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 11.

最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ

別名・方言名

英名で Reeve ともいう。

参考文献

  • 吉井正 2005 エリマキシギ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 11.

最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

チドリ目 シギ科

参考文献

  • 吉井正 2005 エリマキシギ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 11.

最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

【雄夏羽】個体により体色に差があり、その数例は次の様である。

頭上・後頭・背・肩羽は藍黒色で、各羽に褐色の縁があるもの、またはこれを欠くもの、暗赤錆色の地に、黒色の波形の横縞があるもの、黒色の大理石様の斑紋のあるものまたは淡赤錆色、あるいは黄味を帯びた赤錆色の地に、黒色の横帯があるものなどがある。

そのほか紫色の金属光沢のある紫藍色または褐色の地に、黒色、あるいは赤錆色の極く細い横縞または太い横縞があるものなどがあり、暗褐色と白色との混在するもの、黒色と白色の混在するものや、純白色のもの、または白色の地に褐色や黒色の小斑があるものなど種々である。

頭上は多くは背と同様であるが、ときには全く色彩を異にするものもある。

喉・前頭から後頸・頸側までの羽毛は襟巻の様に長くて飾羽をなし、色彩は個体によってそれぞれで、藍黒色のもの、中央の部分が黒色で、周囲は鋼鉄様の藍色または紫藍色の金属光沢のあるものなどがあり、あるものでは藍黒色の地に赤褐色または黄味を帯びた赤錆色、あるいは白色の横縞があるものなどがある。

ときには藍黒色の地に、白色の小斑があるものや藍黒色の地に白色や赤錆色の羽が多少混在するものなどもあり、稀には純白色のものや、白色の地に褐色または黒色の斑点、斑紋、横縞などのあるものもあり、黄色または黄褐色の地に、褐色または黒色の斑点、斑紋、横縞などのあるものもある。

胸・胸側は前頸と色彩が同様であるものが多い。

下背・腰は灰褐色で、各羽には黒褐色の軸斑があり、いろいろな色彩な横斑が多少あり、全体に黒褐色の金属光沢を帯びている。

上尾筒も同様で、黒色といろいろの色彩の横斑があり、両側のは白色である。

腹・下尾筒は白色で、極く稀には下尾筒に黒色の斑が多少あるものもある。

下雨覆・腋羽は白色で、初列風切は黒褐色で、内弁の基部は褐色を帯びている。

初列風切の第2羽の羽軸は白色で、ほかのものは淡褐色である。次列風切は黒褐色で、白色の細い縁がある。三列風切は背と同様である。

尾は中央のものは暗褐色で羽端近くには黒色または藍黒色の横帯があり、種々の色彩の横帯があるものもある。

ほかの尾羽は暗褐色で、淡色の細い縁がある。嘴色はオレンジ黄色、小レンジ褐色、灰肉色、まれに薔薇色、先端は褐色または黒色。

虹彩は暗褐色。脚色は赤黄色、黄味を帯びた赤錆色、黄褐色、緑黄色。

【雌夏羽】
体は雄の3分の1位の大きさである。体の上面は黒褐色で、各羽には淡褐色の幅の広い縁がある。

腮は白色を帯びている。多くのものでは肩羽の淡褐色の横帯がある。

前頸・胸・脇は黒褐色で、黄味を帯びた赤錆色または赤錆色の小斑が多数あり、全体に多少灰褐色を帯びている。

腹、下尾筒は白色である。翼と尾は雄と同様である。

【雌雄冬羽】
体の上面は灰褐色で、頭上・後頭・後頸の各羽の中央には黒褐色の細い軸斑があり、背と肩羽には幅の広い黒褐色の軸斑がある。

ときには頭上と後頸が白色であるものや、灰褐色の地に白色の小斑があるものがある。

体の下面は白色である。前頸と胸は淡褐色で、白色の縁がある。上尾筒の両側は白色である。嘴色は黒色または暗オリーヴ色、脚色はオリーヴ色。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 エリマキシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 732-734.

最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

【雛】
孵化直後の雛は全身に幼綿羽が生え、額は赤味がかったクリーム色、額から後頭まで黒褐色の頭央線がある。

頭上は赤味または黄味がかったクリーム色で黒褐色の不規則な斑があり、耳羽と頬とはクリーム色、後頸は暗色で、各綿羽の先端はクリーム色である。

体の上面は黄味がかったクリーム色で黒褐色のビロード様の斑が混在し、各綿羽の先端は赤味がかったクリーム色である。

体の下面は白色でクリーム色を帯びている。

【幼鳥】
体の上面は黒褐色で、各羽には赤錆色を帯びた褐色の縁があり、後頸は灰褐色で、暗色の軸斑があり、腰は褐色で、淡色の縁がある。

体の下面は淡赤錆色で暗色の軸斑があり、喉と胸・腹の中央と下尾筒は白色である。

嘴色は黒褐色、脚色は緑灰色またはオリーヴ色。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 エリマキシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 732-734.

最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ

卵の形質

卵はオリーヴ褐色、褐色を帯びた黄色、淡緑色、淡青色などの地に暗褐色の粗大な斑紋と灰色の斑点とが散在する。洋梨形。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 エリマキシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 732-734.

最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ

生態

生息環境

湖沼、溜池、水田、干潟など、浅く水につかる泥地に現れる。繁殖地では、草丈の低い湿地草原、湖沼、河川、海岸などの沿岸の草原にすむ。

参考文献

  • 中村登流 1995 エリマキシギ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 112.

最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ

食性

湿った泥面や浅い水面を歩きながら、セスジゴミムシ、バッタなどの昆虫、小貝類、甲殻類、ミミズ、イネやトウモロコシの種子などを啄む。

くちばしは Calidris シギのタイプである。

参考文献

  • 中村登流 1995 エリマキシギ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 112.
  • 清棲幸保 1955 エリマキシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 732-734.

最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ

ライフサイクル

繁殖期は5~6月。番による繫殖はしない。雄はレックに集まり、訪れる雌に受精だけをする。

雌は受精するとレックを離れ、1羽だけで巣をつくって産卵し、抱卵・育雛する。

巣は草むらの中の地上の窪みにつくり、枯れ草で内張りをする。1巣卵数は3~4個で、ほとんどは4個。

抱卵後22~23日ぐらいで雛は孵化し、早成性の離巣性で、25~27日ぐらいで独立する。

参考文献

  • 中村登流 1995 エリマキシギ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 112.

最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ

鳴き声

渡りのときにはピーウィーと啼き、夕方採食地に飛翔して行くときにはクヮッ、クヮッと啼く。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 エリマキシギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 732-734.

最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ

特徴的な行動

レックは雌の群れが採食にくる水域の近くの草地にあり、10~70羽ぐらいの雄が集まる。レックの中には直径 30~60 ㎝ぐらいの踊り場(コート)があり、それが雄のなわばりである。

継続的な地上ディスプレイのため、コートは円形に土が露出している。雌はこのコートを訪れて交尾を行い、立ち去る。

雄にはコートを防衛している常在者と、その近辺にいてコートを狙っている縁在者があり、交尾は常在者に限られる。

さらに、コートに自由に出入りできる衛星的取り巻きがいて、白っぽい襟巻を持っている(Hogan-Warburg, 1966)。

レックは渡りのコースに点在し、その周辺に巣をつくるものよりも、はるかに多くの雌が交尾をしていくので、多くの雌は渡りの途上にレックで交尾をすましていくと考えられる(Van Rhijn, 1991)。

参考文献

  • 中村登流 1995 エリマキシギ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 112.

最終更新日:2020-05-27 キノボリトカゲ

種・分類一覧