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ウミスズメ(Synthliboramphus antiquus)の分類 ウミスズメ科(Alcidae)
ウミスズメ(Synthliboramphus antiquus)の概要 ウミスズメ属(Synthliboramphus)

ウミスズメ(Synthliboramphus antiquus)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

絶滅危惧IA類 (CR)

【環境省】ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの

【 学名 】
Synthliboramphus antiquus (Gmelin, 1789)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:13~16 mm
・翼長:130~143 mm  
・跗蹠:26~28.5 mm
・尾長:33~40.5 mm 
・体重:213~240 g
・卵:長径 52.3~64.4 mm×短径 33~41.5 mm 平均長径 54 mm×短径 37.7 mm 重量 41 g

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最終更新日:2020-06-12 キノボリトカゲ

分布

全北区。太平洋北部をとり巻く地域、日本海沿岸、千島列島、カムチャッカ半島南部からアリューシャン列島、カナダ沿岸にかけて繁殖分布する。

冬は南下し、中国東岸部から台湾沿岸あたり、また北アメリカ大陸のカリフォルニア沿岸まで現れる。

日本では本州北部以北で繁殖し、冬はほぼ全国の沿岸に現れる。

岩手県三貫島、北海道天売島では少数が繁殖する。

天売島では1959年ごろに500羽(清棲, 1978)が見られたが、1963年にはごく少数になり(黒田, 1963)、1977年にはほとんど見られなかった(河守ほか, 1978)。

新潟県の海岸で1980年に幼鳥が見つかっているので、粟島あたりで繁殖しているのではないかと考えられる(風間, 1981)。

希少種に指定されている。

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分類学的位置付け

チドリ目 ウミスズメ科

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形態

成鳥の形質

雌雄同色。

【夏羽】
額、頭上、後頭、後頸は光沢のある黒色で、後頭の両側には多数白色の細長い毛の様な羽が多数生えている。

後頸にも同様の羽が散在している。眼先、眼の下、眼の後方、腮、喉、頬は煤けた黒色、喉の両側および頸側は白色である。

背は石盤灰色、上背の両側は黒色で、白色の細長い毛の様な羽が多数生えている。

肩羽は石盤灰色で、内側のものは黒色に近い暗褐色を帯びている。

腰、上尾筒は石盤灰色、胸、腹、下尾筒は白色、脇は煤けた黒色である。

下雨覆は白色で、翼縁の部分は黒色である。腋羽は煤けた黒色で、内側のものは白色である。

初列風切は黒褐色で、内弁は褐色を呈し、内外弁の基部近くは白色である。

次列風切は石盤灰色で、内弁は褐色、内外弁の基部近くは白色である。

三列風切、大、中雨覆は石盤灰色、小雨覆、初列雨覆、小翼羽は黒色に近い暗褐色である。尾は黒色である。

嘴色は灰白色、基部と上嘴峰線は黒色、虹彩は暗褐色、脚色は青味を帯びた灰白色で跗蹠の後端と趾と関節は黒色、趾膜は煤けた黒色。

【冬羽】
後頭の両側と上背の両側には夏羽のような白色の毛様の羽を欠き、腮は灰色、喉は白色、脇は白色で、灰色の縦斑がある。

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最終更新日:2020-06-12 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

孵化直後の雛は全身に柔らかい幼綿羽が密生し、頭上、後頭、頬、翼、尾は黒色で、背以下の体の上面は灰白色と暗灰色とで霜降り様の斑をなし、腮以下の体の下面は純白色である。

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卵の形質

卵は黄褐色、淡赤褐色、褐色などの斑紋や斑点と青灰色の斑紋や斑点が散在し、ときには斑紋が鈍端に密在するものもある。

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生態

生息環境

本州以南には冬鳥として渡来、繁殖期には岩礁や離島に上陸するが、ほとんどは洋上で生活する。

岸から 数 kmの沖合にいるが、遠く洋上にでることはなく大陸棚の範囲内にすむ。

ときどき沿岸に近づき、海の荒れる日などに港湾内に入ってくることがある。

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食性

洋上で浮いて、活発に水中に潜って採食する。潜水中は翼を使って泳いで獲物を追いかける。

数羽が1箇所で何回も潜り、その上空にウミネコが集まるので、おそらく魚群などを追い回して、水面近くでボール状に丸めてくわえとるものと思われる(中村, 観察)。

また、群れで縦列をつくって潜水する(清棲, 1978)。

主としてオキアミなどのプランクトン生の甲殻類を食べるが、ボラ、イカナゴ、イワシなどの小型の魚類や貝類なども食べる。

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ライフサイクル

繁殖期は5~7月ごろだが、場所によってかなりの違いがあるようである。一夫一妻で繁殖する。

巣は、岩礁や孤島の樹林や草地の土壌に深さ 20 ㎝ぐらいの穴を掘ってつくったり(Johnsgard, 1987)、あるいは深さ 30~50 ㎝ぐらいのシイ全の隙間につくる(村田, 1958)。

産座には枯れ草を敷く。1巣卵数は2個、第1卵を産むと約1週間は巣にもどらず、その後、第2卵の産卵に現れる。

抱卵は雌雄交替で行い、抱卵が始まると巣内に2羽が見られることはない。

交替は72時間ぐらいで行われ、夜間に代わる(Johnsgard, 1978)。

雛は34~42日ぐらいで孵化し、半早成性の半離巣性である。孵化後の3~4日は親の抱雛を受けるが給餌はされない。

夜間に両親の誘導によって海に出る。明け方にはすでに沿岸を離れ、少なくとも岸から 10 ㎞以内には見られない(Johnsgard, 1987)。

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鳴き声

蕃殖期にはツツツ、チチチチと低く優しい声で啼くが、常には余り鳴かない。

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特徴的な行動

非繁殖期には3~4羽の小群で見られ、しばしば20~30羽ぐらいにもなり、ときとして1,000羽ぐらいの大群が見られる。

両親らしい2羽の成鳥と1~2羽の幼綿羽の雛からなる家族群が、沿岸から 50~60 kmも沖合で観察されている(Johnsgard, 1978)。

繁殖地ではコロニーへ集まる。

日本には大きいコロニーはないが、カムチャッカ半島の東岸では3,500番、朝鮮半島では1,000~5,000羽、アラスカでは5万羽に達するコロニーが知られている。

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その他生態

冬季は3~4羽の小群から20~30羽以上1000羽位までの大群で、海湾の比較的波の静かな海上に縦列をなして浮かび、盛んに潜水して餌を漁る。

潜水時には翼を拡げ、翼と脚とを働かせて巧みに潜る。

海上では体を平らにして可成り高く浮かび、頸を縮めるのが常である。

警戒心が少なく直ぐ近くまで近寄せる。潜水して逃れることが多いが、ときには飛び立って逃れることもある。

飛び立つときには、海面を数回はずむ様にかなりの距離を滑走してから舞い上がる。

飛び立ってから海面近くをすれすれ位に低く直飛する。飛翔時には体を水平にし翼を烈しく羽搏いて飛翔する。

常に海上生活をするが、蕃殖期には岩礁上に上り体を垂直にし、跗蹠を曲げてよちよちと歩む。

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最終更新日:2020-06-12 キノボリトカゲ

種・分類一覧