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エトピリカ(Fratercula cirrhata)の分類 ウミスズメ科(Alcidae)
エトピリカ(Fratercula cirrhata)の概要 ツノメドリ属(Fratercula)

エトピリカ(Fratercula cirrhata)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Fratercula cirrhata (Pallas, 1769)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:51~63.5 mm
・嘴高:39~46 mm
・翼長:188.5~200 mm  
・跗蹠:30.5~35 mm
・尾長:53.5~71 mm 
・卵:長径 65.2~78.2 mm×短径 45~51.1 mm 平均長径 71.7 mm×短径 48.6 mm

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最終更新日:2020-06-17 キノボリトカゲ

分布

全北区。オホーツク海、ベーリング海、北太平洋、カナダの太平洋沿岸に繁殖分布し、冬は周辺の海域に広がり、北アメリカ大陸のカリフォルニア沿岸まで南下する。

北アメリカ海域に多い鳥だが、比較的高密度にいるのはアリューシャン列島周辺である(田中. 1989)。

日本では少数が北海道の東部沿岸、霧多布岬、大黒島、落石岬、モユルリ島、ユルリ島などで繁殖し、冬は本州中部以北の海域まで南下する。

日本海側では新潟県あたりまで現れ、鳥取県にも記録がある。

太平洋側では宮城県あたりまで現れ、駿河湾にも記録がある。絶滅危惧種に指定されている。

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和名の解説

和名はアイヌ語で美しい嘴の意。

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分類学的位置付け

チドリ目 ウミスズメ科

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形態

成鳥の形質

【雌雄夏羽】
額、頭部、顔、眼先、腮は白色、頭上、後頭、後頸、頸側、喉は黒色である。

眼の後方の上部から淡黄色の長さ 80~90 mmくらいの毛様の飾羽が多数生えて後頸の方に長く走っている。

眼瞼は淡赤色、背、肩羽、腰、上尾筒は黒色、胸、腹、脇、下尾筒は煤けた暗褐色である。

下雨覆、腋羽は灰褐色、翼と尾は黒色である。

嘴の前半部は淡赤色またはオレンジ赤色で、後方の角覆は淡黄色を帯びたオリーヴ緑色、上縁はリンゴ緑色、嘴の基部には赤色の細い線がある。

虹彩はクリーム白色、脚色は淡赤色、爪は黒褐色。

【雌雄冬羽】
夏羽にある頭部の白色部は黒褐色で、眼の後方にある飾羽を欠いている。

眼の後方には淡色の斑があり、眼瞼は淡赤色である。嘴の基半部には角覆を欠き、全体に暗褐色である。

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幼鳥の形質

【雛】
孵化直後の雛は全身に黒色の柔らかい幼綿羽が密生する。

【幼鳥】
腮は灰色、体の下面は白色で、各羽端は煤けた灰色である。

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卵の形質

卵は灰白色の地に淡褐色と灰鼠色との線斑や斑紋が極く少し散在し、斑紋はやや不明瞭なのが常である。

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生態

生息環境

繁殖期には沿岸の岩礁や断崖で囲まれた孤島に集まり、その周辺の海上で見られる。非繁殖期には洋上にすむ。

ウミスズメ類のなかでは最も洋上性が強く、海岸より 800 ㎞もの海上で確認されており(Johnsgard, 1987)、大陸棚海域よりむしろ海盆部の海域のほうに多い(田中, 1989)。

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食性

群れて採食する習性はない。水面に浮き、水中に潜って魚などを追い回して捕らえるが、ツノメドリほど機敏ではない。

平均30秒、60 mぐらいまで潜る。繁殖期には沿岸部で採食するので、陸地からよく見える。

沿岸部ではイカナゴ、シシャモ、スケトウダラなどの魚類を多く食べ、イカ類やオキアミなどの甲殻類も食べる。

しかし外洋ではイカ類のほうを多くとる(田中, 1989)。

アリューシャン列島に生息するものは、ツノメドリよりイカ類を多く食べる(小城, 1989)。

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ライフサイクル

繁殖期は5~7月、一夫一妻で繁殖する。巣は岩礁上の草地の土壌に穴を掘ってつくる。

穴掘りは長時間を要し、雌雄共同で行う。深さ 50~100 ㎝、入り口の直径は 17~20 ㎝。

新しく掘った穴はその年には使わず、翌年から使う。永久凍土地帯では穴掘りができないため、岩の割れ目や隙間の中を利用する。

産座には少しばかりの枯れ草を敷く。1巣卵数は1個、両親が交替で抱卵し、雛は42~53日ぐらいで孵化する。

雌雄の交替は朝、午後の中ごろ、夕方に行うが、1日中交替しないことも1日空けることもある。

孵化後3~5日ぐらい抱雛する。両親が給餌して、雛は43~51日ぐらいで巣立つ。

両親は日中に餌を運び、1回にイカナゴなどの魚を2~3匹くわえてくる(藤巻, 1961)。巣立ちは夜間または早朝に起きる。

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鳴き声

低い声でクルルルル、クルルルルと啼く。

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特徴的な行動

繁殖期にはコロニーへ集まる。モユルリ島では発見された当時(1959~1960年)は250羽であったが(藤巻, 1961)、1971年には100羽に減り(藤巻, 1973)、1987年には10羽になってしまった(Bra-zil, 1991)。

アラスカのカリガリー島には37万羽という大コロニーが知られている。

巣穴の密度は 1 ㎡に0.2~0.7巣ぐらいで、入り口の周り 0.5 mぐらいが防衛される。

求愛行動はコロニー近くの水面で行われ、雄はくちばしを斜上方に上げて開くディスプレイをする。

番はしばしばくちばしを横に振って打ち合わせる行動をする。

非繁殖期の外洋では、あまり密集した群れではなく分散して採食する。

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