- 解説一覧
- シラコバト(Streptopelia decaocto)について
シラコバト(Streptopelia decaocto)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Streptopelia decaocto (Frivaldszky, 1838)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:15~17 mm
・翼長:雄 173~180 mm 雌 159~171 mm
・跗蹠:21~25 mm
・尾長:118~146 mm
・体重:202~225 g
・卵:長径 27.8~32.2 mm × 短径 21.8~25 mm 平均長径 30.1 mm × 短径 23.2 mm
参考文献
- 清棲幸保 1955 シラコバト, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 670-671.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区、東洋区、エチオピア区。ユーラシア大陸の南部、インド、アフリカ大陸中部に留鳥として分布する。
もともとは東洋区にいたものを、人間が小亜細亜やバルカン地方に持ち込み、麦作の進行とともに、ヨーロッパ各地に広がった。
日本では本州、関東のごく限られた地方に留鳥として分布する。
埼玉県、千葉県、東京都におよぶ地域で、江戸時代に輸入されたものが居着いたという説もあるが、はっきりとした記録はない。
1945年ごろまではかなり多く見られたが、タカ類の餌として大量に捕らえられるなどして次第に減少し、一時は20羽ぐらいになったが、1958年に天然記念物に指定され、保護されて以来、徐々に増えてきた。
現在、埼玉県越谷市を中心とする地域に生息する。希少種に指定されている。
参考文献
- 中村登流 1995 シラコバト, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 32.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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ハト目 ハト科
参考文献
- 吉井正 2005 シラコバト, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 266.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 人間との関係
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埼玉県の県鳥。1956年に越谷のシラコバトとして天然記念物に指定。
参考文献
- 吉井正 2005 シラコバト, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 266.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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雄雌同色。額はやや薔薇色を帯びた淡灰白色、頭上、後頭は薔薇色を帯びた淡灰褐色である。
耳羽、頬は薔薇色を帯びた淡灰白色、腮、喉は薔薇色を帯びた淡灰色である。瞼は白色かまたは淡灰色である。
後頸は薔薇色を帯びた淡灰褐色、頸側は薔薇色を帯びた灰褐色で、両頸側から後頸へかけて黒色の頸輪があり、前頸の部分は離れている。
背、肩羽、腰、上尾筒は灰色を帯びた黄褐色で、腰と上尾筒は灰色が強い。
胸、腹は薔薇色を帯びた灰色、下腰と下尾筒は青味がかった灰色である。下雨覆、腋羽は灰白色。
初列風切は褐色を帯びた石盤色で、先端と外弁には淡褐色の細い縁がある。
次列風切は灰鼠色で、内側のものおよび三列風切は灰色を帯びた黄褐色である。
大、中雨覆は青味がかった灰色で、内側のものは灰色を帯びた黄褐色である。
小雨覆は灰色を帯びた黄褐色で、外側のものは青味がかった灰色である。
初列雨覆、小翼羽は灰褐色。尾は中央の一対は灰色を帯びた黄褐色、ほかの尾羽は基半部とその外弁とは灰色で、内弁の前半部は灰色である。
最外側の一対の尾羽の外弁は淡灰色で、先端近くは石盤灰色を帯び、先端には灰白色の帯(全体の4分の1、または3分の1くらいの幅)がある。
内弁は石盤灰色で、先端には白色の帯(全体の2分の1よりやや狭い幅)がある。
嘴色は無光沢の黒色、虹彩は赤色、脚色は赤色。
参考文献
- 清棲幸保 1955 シラコバト, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 670-671.
- 吉井正 2005 シラコバト, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 266.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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孵化直後の雛は青味を帯びた肉色の皮膚で、全身に淡黄白色の長くて縮れた初毛が密生する。
幼鳥は、頭上および体の下面が褐色勝ちである。外側の雨覆羽も褐色勝ちで、砂色を呈する。
初期には頸輪を欠き、やや経ってから幅の狭いものがわずかに現れる。
参考文献
- 清棲幸保 1955 シラコバト, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 670-671.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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本来の分布地は、乾燥した、半砂漠的なアカシア類の疎林のあるの農耕地である。
小アジアへ導入されたときは人家に依存し、ビルディングに営巣して集落から 1 ㎞以上離れることはなかった(Cramp, 1985)。
日本では屋敷林、雑木林、竹林などのある集落や、周辺の農耕地、水田にすみ、家畜小屋に入ってくることもある。
参考文献
- 中村登流 1995 シラコバト, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 32.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 食性
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裸地の多い草地や穀物畑の地上を歩き、イネ、ヒエ、コムギ、オオムギ、高粱、トウモロコシなどの種子をついばみ、小果実や昆虫も食べる。
家畜小屋へ入って飼料をついばむこともある。冬は群れて採食する。
食物の豊富な場所へ集合する習性があり、しばしば大群に集まる。
参考文献
- 清棲幸保 1955 シラコバト, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 670-671.
- 中村登流 1995 シラコバト, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 32.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は著しく幅広く3~10月におよび、ときには冬に繁殖することもある。一夫一妻で繁殖する。
巣は、樹木の幹に近い枝の上に雌雄共同でつくり、小枝を集めて粗雑に組んだ皿形である。
雄は巣材を1本づつくわえて運び、雌が巣をつくる(Cramp, 1985)。
1巣卵数は2個、雌雄交替で抱卵し、雛は14~18日で孵化する。夜間はもっぱら雌が抱卵する(Cramp, 1985)。
雛は青味を帯びた皮膚で、淡黄白色の長い幼綿羽に覆われる。両親に養われて15~19日で巣立つ。
1~2日間は巣へもどってくるが、1週間ぐらいで独立する。
参考文献
- 中村登流 1995 シラコバト, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 32.
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- 鳴き声
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クッ、クッ、クー、クー、クー、クッ、クッ、クー、クー、クーまたはポポ、ポッポ、ポー、ポポ、ポッポ、ポー、ポーオーポ、ポーオーポと繰り返して啼き、キジバトよりその声が細くて優しい。
参考文献
- 清棲幸保 1955 シラコバト, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 670-671.
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- 特徴的な行動
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繁殖期には雄によるなわばり分散がある。雄は巣の周辺 0.05~0.35 haぐらいを強く防衛する。
さらに弱く防衛する地域は 1.5~10.6 haぐらいになる(Cramp, 1985)。冬は群れになり、群れ塒への集合がある。
しかし成鳥は永久的な番を組んでいて、暖かい日にはなわばりを防衛する(Cramp, 1985)。
雄のなわばり行動には、飛翔ディスプレイとおじぎディスプレイがある(Cramp, 1985)。
飛翔ディスプレイは高所からはばたきつつ 10 mほど上空に急上昇し、次に翼と尾羽を開いて滑空しつつコールするもので、しばしば螺旋を描く。
おじぎディスプレイは相互に向き合って、体を起こしたりさえずったりするもので、首を膨らませ、尾羽を下げてコールする。
この行動は雌をも引きつけ、高見でのさえずりに引かれて近づいた雌に対しても同じディスプレイをする。
参考文献
- 中村登流 1995 シラコバト, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 32.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- その他生態
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人家附近の林や小樹林、竹藪などを塒とし、一定の時間に採食のため畑や田圃などに飛来する。
電信線や高圧線の高い電線などにとまって休むこともある。
地上で主として餌をとり、両脚を交互にして歩みながら餌を摂る。
キジバトに類似した姿で飛翔するが、翼の羽搏きがやや緩慢で、尾がそれより長い点が異なる。比較的鈍感で人をあまり恐れない。
参考文献
- 清棲幸保 1955 シラコバト, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 670-671.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ