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ツツドリ(Cuculus saturatus)の分類 カッコウ科(Cuculidae)
ツツドリ(Cuculus saturatus)の概要 カッコウ属(Cuculus)

ツツドリ(Cuculus saturatus)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Cuculus saturatus Blyth, 1843

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:20~24 mm
・翼長:180~215 mm
・跗蹠:17.5~24 mm
・尾長:124~169 mm
・体重:74~156 g 
・卵:長径 19.1~21.5 mm×短径 13.7~15.2 mm 平均長径 20.2 mm×短径 14.5 mm 重量 2.2~2.8 g位

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ツツドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 409-411.

最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ

分布

旧北区、東洋区。バルト海沿岸からカムチャッカ半島、南はヒマラヤまでの広い繁殖分布をもち、冬は東南アジア、ニューギニア島、オーストラリア大陸北部で越冬する。

東南アジアでは一部が留鳥。日本には夏鳥として渡来し、北海道、本州、四国で繁殖する。

九州でも繁殖期に観察例はあるが、繁殖の確証は得られていない。日本のカッコウ類のなかでは、最も早く渡来する。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 ツツドリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 152.

最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

カッコウ目 カッコウ科

参考文献

  • 吉井正 2005 ツツドリ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 333-334.

最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ

人間との関係

寂蓮法師「これも又さすがにものぞあはれなるかた山かげのつつどりの声水乞鳥」の短歌がある。

参考文献

  • 吉井正 2005 ツツドリ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 333-334.

最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

【雄】
額、頭上、後頭、眼先、眼の上、耳羽は石盤灰色、頬、腮、喉は淡灰色、眼瞼は黄色である。

後頸、背、肩羽、腰、上尾筒は暗石盤灰色で、腰と上尾筒は多少青味を帯びている。

胸、腹、脇、下尾筒は白色で、好色の幅 3~4 mmくらいの横縞が多数ある。

全体にやや黄味がかった赤錆色を帯びているが、下尾筒はその色が強く、下尾筒の基部の各羽には黒色の横縞を欠くのが常である。

下雨覆、腋羽は白色で、黒色の横縞がある。

翼は暗石盤灰色で、初列風切の内弁の基部(全体の3分の2)には白色の細い横斑が横縞をなして多数ある。

次列風切の内弁の基部には白色の大きな斑紋がある。

尾は暗石盤灰色で、先端近くは藍黒色を帯び、羽端には幅 5~6 mmくらいの白色の縁がある。

羽軸の中央沿いと内弁の縁とには白色の斑が横縞の様に縦列をして多数ある。

嘴色は石盤黒色、下嘴の基部は灰黄色、虹彩は黄土色をおびた黄色または黄褐色、脚色は黄色または黄褐色。

脛羽は白色で、黒色の横縞がある。

【雌】
背には赤錆色の帯があり、暗石盤灰色の横縞がある。胸は全体に赤錆色を帯びている。ほかは雄と同様である。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ツツドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 409-411.

最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

【幼鳥】
この種の幼羽はとても変化に富んでおり、大きく分けて普通型と赤色型の2つに分けることができる。

《普通型》普通型の成鳥に似ているが次の点で区別することができる。

背面の羽毛・風切・雨覆はすべて狭い白色の縁を有する。しかし背面の地色は黒褐色に近い暗スレート褐色である。

また腮・喉・上胸は灰色ではなく白色の地に黒色の横縞を有する。

この横縞は綺麗な模様であるころは少なく、不規則な黒褐色斑が混じることがあり、ときとしては腮・喉・上胸が全体的に汚黒褐色を呈していることがある。

尾羽は普通型成鳥と同じ。

初列風切と次列風切の外縁の基部に近い所には赤褐色斑が並んでいるが、これは赤色型のものと異なり不鮮明で、ときにはほとんど認め難いものもある。

《赤色型》赤色型雌成鳥に似ているが、次の点で区別することができる。

背面の各羽と翼の各羽には狭い白色縁がある。

背面の色は赤色型雌成鳥と異なり、頭にはほとんど褐赤色がなく、背・腰もオリーヴ色を帯びた暗褐色で、所々に不規則な褐赤色横縞を有している。

尾羽は赤色型雌成鳥と同じ。翼も赤色型雌成鳥に似て、風切外縁には顕著な褐赤色斑が並ぶ。

下面も赤色型雌成鳥に似ているが、黒帯は幅広くかつ不規則で、ところどころに黒褐色斑を形成している。

【第1回冬羽】
8月中旬より体羽の換羽に入り、その後越冬地で換羽を行い、春季までに第1回冬羽を完成させる。

しかし第1回の冬羽では、風切と尾羽は換羽しない。

【雛】
孵化直後の雛は肉食の裸体のままで初毛を欠いている。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ツツドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 409-411.

最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ

卵の形質

卵は白色または淡褐色の地に、褐色と淡紫色との小斑点が散在しているが、鈍端近くにこの斑点が密集して輪形をつくるものが多い。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ツツドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 409-411.

最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ

生態

生息環境

本州では主にセンダイムシクイ、メボソムシクイなどのムシクイ類に托卵するため、低山帯の落葉広葉樹林や、亜高山帯の針葉樹林に生息する。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 ツツドリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 152.

最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ

食性

クマアリ、コメツキムシ、コオロギ、バッタなどの昆虫を主食とし、樹上で鱗翅類の幼虫を好んで食べる。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 ツツドリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 152.
  • 清棲幸保 1955 ツツドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 409-411.

最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ

ライフサイクル

産卵期は5~6月。ムシクイ類には、白地に淡色の小斑が散在する卵を産む。

そのほかの托卵相手としては、アオジ、ビンズイ、メジロ、モズ、キクイタダキ、サンコウチョウ、オオルリ、コルリがいる。

また、最近の研究では、ホトトギスがいない北海道の中北部の旭川や小樽では、ホトトギスに代わってツツドリが、チョコレート色の卵をウグイスに托卵することが明らかにされた(Higuchi & Sato ; 1984 ; 樋口, 1985)。

ムシクイ類に托卵する本州のツツドリの卵は、ムシクイ類の卵に応じて小さいが、ウグイスに托卵する北海道のツツドリの卵は、ウグイスの卵の大きさに応じて大きな傾向にある(Higuchi & Sato ; 1984)。

自分では巣をつくらず、雌は主に産卵期の巣を選んで仮親の卵を1個抜きとり、かわりに自分の卵を1巣に1個托卵する。

雛は仮親の卵より早く孵化し、孵化した雛は2~3日のうちに巣内のほかの卵や雛を背中を使って自力で外に放り出し、巣を独占して仮親の育雛を受け、19~20日ぐらいで巣立つ。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 ツツドリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 152.

最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ

鳴き声

ポゥ、ポゥ、ポ、ポ、ポ、ポ、ポ、ポ、ポゥ、ポゥと啼き、遠くで聞くとポン、ポン、ポン、ポンまたはフォン、フォン、フォン、 フォンと聴こえ太鼓の様である。

雌はポッ、ピッ、ピッ、ピッと啼くだけで、雄の地啼きと同様である。

4月中旬頃から啼き始めて7月下旬頃まで啼き、5~6月がその啼きの最盛期である。

夜明け前の早暁(午前4時10分:富士山山麓山中湖畔 6/VI 1937 清棲確認)から啼き始め、昼間も盛んに啼くが夜間は啼かない。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ツツドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 409-411.

最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ

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