- 解説一覧
- ヤツガシラ(Upupa epops)について
ヤツガシラ(Upupa epops)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
-
Upupa epops Linnaeus, 1758
基本情報
- 大きさ・重さ
-
・嘴峰:48~62 mm
・翼長:139~157 mm
・跗蹠:20~24 mm
・尾長:93~110 mm
・体重:56~88 g
・卵:長径 22.6~29.1 mm×短径 16~21 mm、平均長径 26.3 mm×短径 18.3 mm
参考文献
- 清棲幸保 1955 ヤツガシラ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 360-362.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- 分布
-
旧北区。東洋区、エチオピア区。シベリア、中国、ヨーロッパ、インド、アフリカ大陸中南部に分布する。
日本には不定期に各地に現れるが、あまり多くはなく、むしろ迷鳥とされる。
1982~86年に長野県で7箇所、岩手県で2箇所、繁殖が記録された。
ヨーロッパでは19世紀の初めごろから次第に減少しており、20世紀に入って各地で著しい変動が見られるという(Cramp, 1985)
参考文献
- 中村登流 1995 ヤツガシラ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 53.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- 和名の解説
-
鳴き声はポーポーポポーあるいはフープ、フープと聞こえ、英名はその声に由来。
参考文献
- 吉井正 2005 ヤツガシラ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 517-518.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
-
ブッポソウ目 ヤツガシラ科
参考文献
- 吉井正 2005 ヤツガシラ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 517-518.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
-
【雄】
額、頭上、後頭の羽毛は 2~46 cmくらいに長く延びて羽冠をなし、各羽は赤味のある淡黄褐色で、羽端には 1 cmくらいの幅の黒色の帯をなした斑があり、次に白色を帯びた幅の広い帯がある。
眼先、耳羽、腮、喉、後頸、頭側は赤味のある淡黄褐色である。
翕は暗灰褐色、背と肩羽にはクリーム色と黒色との幅の広い横縞がある。
背の上部の各羽はクリーム色と黒色との横帯からなり、背の中部の各羽は黒褐色で、幅の広いクリーム色の横縞があり、羽縁は黒色である。
背の下部の各羽は黒色で、幅の広い白色の羽縁がある。
胸、腹、脇は赤味のある淡黄褐色、腰と下尾筒は白色、上尾筒は黒色である。
初列風切は黒色で、第1羽と内側の2枚の風切羽とには内弁のやや先端近くにクリーム白色の斑があり、ほかの風切羽では内外弁にわたり中央よりやや先端近くに白色の横帯がある。
次列風切は黒色で、外側の風切羽では内弁はクリーム白色の幅の広い横縞が4条あるが、内側の風切羽では内外弁にわたって同様の横縞がある。
三列風切は黒褐色で、外側の風切羽2枚にクリーム黄色の外縁があり、内弁に同色のくの字形の斑紋がある。
内側の風切羽には羽軸近くに三角形のクリーム黄色の斑紋がある。
大雨覆は黒色で、幅の広いクリーム色の横縞が2条ある。
中雨覆は黒色で羽端には幅の広いクリーム色の斑がある。
下雨覆、腋羽、小雨覆は赤味のある淡黄褐色、初列雨覆と小翼羽は黒色である。
尾は黒色で、各羽の中央近くにクリーム白色の幅の広い横帯があり、尾全体を通じて見るときにはひとつの曲線を現している。
嘴色は暗色を帯びた角色、下嘴の基部は淡色。虹彩は暗褐色、脚色は灰褐色を帯びた角色、脛羽は赤味がかった淡黄褐色。
【雌】
雄とほとんど変わりはないが、腮、喉は雄よりも赤味が強い。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ヤツガシラ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 360-362.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
-
孵化直後の雛は肉色の裸体のままで、白色の長くて少ない初毛が眼の上、後頭、背、上膊、前膊、腿、脛、腹などの羽域にだけ生えている。
口中は鮮紅色、口角縁は黄白色、嘴は真直ぐで、色彩は青石盤色である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ヤツガシラ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 360-362.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- 卵の形質
-
卵は灰白色または黄色を帯びたオリーブ色で斑紋を欠いているが、緑青色、オリーブ褐色などのものもある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ヤツガシラ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 360-362.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
-
基本的には温暖で乾いた、ゆったりとした起伏のある高地で、藪、疎林、芝生、裸地などが散在する場所にすむ鳥である。
日本で繁殖が記録された地域にはひとつの共通点がある。
それは、山間の比較的乾燥した高冷地で、平坦で、豊かな林や果樹園、桑畑、畑地などに囲まれた人家のある集落である。
このような環境は、地上と樹上で生活する鳥にとって、虫の豊富な土壌が植生に囲まれていて、隠れやすく、好適なすみかとなる。
そのうえ、樹洞など暗い洞穴に営巣する習性の鳥にとって、比較的古いタイプの人家も好都合であるといえる。
参考文献
- 中村登流 1995 ヤツガシラ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 53.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- 食性
-
細長くて下湾するくちばしは、軟らかい土壌に差し込んで、土壌中で開閉して虫をとり出すのに適している。
農耕地や芝生などを交互歩行で歩きながら、しきりにくちばしを差し込む。
また、耕作機が畑地を掘り起こしたあとに下りて虫をつまみ上げる。
ミミズ、ケラ、ヨトウムシ、甲虫の幼虫など(野溝ほか, 1982;柏木ほか,1987)を捕えるが、樹上からマツカレハの毛虫をとった例もある(野溝ほか, 1982)。
朽ち木や獣糞などからもとるらしく、糞やペリットの分析からコガネムシ、コメツキムシ、ゴミムシなどの破片が見つかっている(野溝ほか, 1982)。
参考文献
- 中村登流 1995 ヤツガシラ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 53.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
-
4~8月にかけて、年に1~2回繁殖する。初め雄は高所からさえずる。さえずりはポポまたはポポポの繰り返しである。
営巣場所は人家の屋根裏、土台の中、石垣の隙間などであるが、ムクドリの古巣を利用することもある。
直接地面上に産卵することもある。
参考文献
- 中村登流 1995 ヤツガシラ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 53.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- 鳴き声
-
樹上または地上でポポ、ポポ、ポポ、またはポン、ポン、ポンとツツドリの声に類似しそれよりやや低く優しい声で啼き立て、その度に喉を膨らし頭部を御辞儀する様に上げ下げする。
歩きながらクー、クー、クーと低い声で啼くこともある。警戒時にはニャーと啼く。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ヤツガシラ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 360-362.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
-
家族群以外はほとんど群れない。番の時期でもほとんど単独で行動する。
雛と雌は外敵に対して尾腺から非常に臭う物質を出すという。
参考文献
- 中村登流 1995 ヤツガシラ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 53.
最終更新日:2020-06-25 キノボリトカゲ