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ヒバリ(Alauda arvensis)の分類 ヒバリ科(Alaudidae)
ヒバリ(Alauda arvensis)の概要 ヒバリ属(Alauda)

ヒバリ(Alauda arvensis)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Alauda arvensis Linnaeus, 1758

基本情報

大きさ・重さ

・全長:168 mm (161~172)
・翼長:98 mm (90~102)
・尾長:64 mm (60~66)
・嘴峰長:11 mm (10~12)
・ふ蹠長:23 mm (20~25)
・体重:33.0 g (29.2~37.5)
・卵:長径 19.6~24 mm × 短径 15.4~18.3 mm 平均長径 21.9 mm × 短径 16.5 mm 重量 3.2 g位

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ヒバリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 116-119.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

分布

日本では亜種オオヒバリ(Alauda arvensis pekinensis)、亜種カラフトチュウヒバリ(A. a. lonnbergi)、亜種ヒバリ(A. a. japonica)の3亜種が見られ、繁殖するのは亜種ヒバリのみである。

亜種ヒバリは北海道には夏鳥、本州、四国、九州、五島列島には留鳥として分布し、対馬には冬鳥として、屋久島、種子島、トカラ列島、奄美諸島および琉球諸島には不定期に飛来する。

ほかの2亜種は通過、不定期渡来または冬鳥のいずれかである(日本鳥学会 2000)。

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最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

生息状況

近年、ヒバリの減少が指摘されており(環境省 1999)、特に東京では顕著で、1970年代から1990年代で繁殖期に確認された3次メッシュの数が70年代の218からほぼ半数の105に減少している(東京都 1998)。

減少要因は定かではないが、農地などの平坦な環境に建築物が建つことによって生息適地の分断化が進んでいることが要因のひとつに挙げられそうである。

ヒバリは樹林地と同様に建築物も忌避すると考えられる。

建築物の新設は直接的な生息地面積の減少だけでなく、樹林と同様に建築物の周辺も生息に適さなくなるため見た目以上の影響が出ている可能性がある。

筆者が東京都多摩地域などで踏査したところ、地図上で生息地と想像された農地の一部が住宅地となっている例が散見された。

生産緑地地区ですら、登録期限が切れるのを見越して道路が建設されている場所があり、ヒバリの生息適地は現在も減少している。

あと数年も経つと、東京都内でヒバリの声を聞けるのは河川敷や飛行場など、限られた場所になるかも知れない。

参考文献

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

学名の解説

種小名は畑のという意。

参考文献

  • 吉井正 2005 ヒバリ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 415.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

和名の解説

ヒバリという名は、日の晴れたときに空高く上って鳴き、雨天には上らないので、「ひはる」からきたという。

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最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

別名・方言名

オオヒバリ、カラフトチュウヒバリ

参考文献

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

スズメ目 ヒバリ科

参考文献

  • 吉井正 2005 ヒバリ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 415.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

人間との関係

「雲雀あがる春べとさやになりぬれば都も見えず霞たなびく」(『万葉集』巻20)。俳句(春の季語)にも多く詠まれ、松尾芭蕉「雲雀より上にやすらふ峠かな」。

美しい声のため、よく飼われ、競鳴会が盛んに行われた。食用にもなっていた。 茨城県と熊本県の県鳥。

参考文献

  • 吉井正 2005 ヒバリ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 415.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

雌雄同色。額、頭上、後頭、後頸は淡赤褐色で黒色の幅の広い軸斑があり、秋季は全体に赤味が強く各羽縁には更にクリーム色の細い縁がある。

眼の上にはクリーム色の眉斑があり、耳羽は淡赤褐色で、黒色の軸斑がある。

腮、喉は赤味のあるクリーム色で黒褐色の小縦斑があり、喉の両側には黒褐色の斑紋からなる顎線がある。

背、肩羽、腰、上尾筒は淡赤褐色で、黒色の軸斑があり、背ではその幅が広い。

秋季は各羽縁に皿にクリーム色び細縁があり、全体に赤色勝ちである。

胸は淡赤褐色で、各羽には黒色の小軸斑があって、全体として横帯をなしている。腹は白色、脇は赤褐色で、黒色の細い軸斑がある。

下尾筒は赤味のあるクリーム色である。初列風切、次列風切は黒褐色で淡赤褐色の細い縁があり、秋季は赤色勝ちである。

三列風切、大雨覆は黒色で赤褐色の羽縁があり、秋季には赤色勝ちである。

中雨覆、初列雨覆、小翼羽は黒色で淡赤褐色の羽縁がある。

小雨覆、腋羽、下雨覆は淡赤褐色。尾は黒褐色で、羽縁は淡赤褐色を呈し、秋季は赤色が強い。

最外側の尾羽は白色で、内弁の基部には暗褐色の線をなした斑が走り、次の一対の尾羽の外弁はクリーム白色、内弁は黒褐色である。

初列風切の第4羽と第5羽の差は 3~7 mmである。嘴色は暗褐色、下嘴の基部は淡褐色、虹彩は褐色、脚色は暗褐色、脛羽はクリーム色。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ヒバリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 116-119.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

孵化直後の雛は肉色で、淡麦藁色の長くて豊富な初毛が眼の上、後頭、上膊、前膊、背、腿などの羽域から生えている。

口中は黄色、舌の根と先端とには黒色の小点がある。口角縁は白色である。

幼鳥は、初列風切第1羽は成鳥と異なって大きく、初列雨覆より長い。

羽色は成鳥冬羽よりも背面の暗褐色淡く、一体にバフ色を帯び、縦斑の幅広く、各羽はかなり広いバフ色の縁を有する。

尾羽は成鳥のものより幅狭く、バフ褐色が顕著な縁があり、中央対にはバフ色の不定形軸斑がある。

翼の各羽のバフ色縁も顕著で三列風切にはバフ色の軸斑がある。下面の白色部はバフ色に富み、頬・喉・胸の斑点は淡く円形である。

【第1回冬羽】
幼鳥は8月から9月に風切から尾羽など全体を換羽して第1回冬羽となる。

この羽衣ですでに成鳥冬羽と違いはないが、一体に褐色に富みかつ羽縁の幅広老いものが多い。

後趾の爪は一体に老成するものよりも短い。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ヒバリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 116-119.
  • 山階芳麿 1980 ヒバリ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅰ. 出版科学総合研究所. 251-256.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

卵の形質

卵は灰白色または青味のある灰白色の地に、灰鼠色と暗褐色との微細な斑点が密在する。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ヒバリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 116-119.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

生態

生息環境

草原、麦畑、桑畑、河原、牧場などに多い(清棲 1966)。

ヒバリは一般的に、樹林地を避ける(del Hoyo 2004)ことが知られている。

国内でも樹林地林縁から 50 m以上離れた場所で巣が確認され、林縁部付近ではヒバリの確認頻度が低いという調査結果がある(佐々木 2006)。

草丈については 20~30 cm程度がもっともなわばり密度が高く、植被率40~60%程度が最もなわばり密度が高いという報告がある(Toepfer & Stubbe 2001)。

参考文献

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

食性

地上を交互歩行しながら餌をあさり、草の実や昆虫をついばむ。

非繁殖期には河原の土手など、乾燥した場所で草の実を食べる。

そのほかにも、鞘翅目、膜翅目、半翅目などの昆虫、またムカデやミミズなども食す。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ヒバリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 116-119.
  • 中村雅彦 1995 ヒバリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 212.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

ライフサイクル

2月下旬ごろから徐々に繁殖地に渡来し、4月初旬から7月まで、年に1~3回、一夫一妻で繁殖する。

渡来初期はさえずることなく、ひっそりと目立たない生活をする。

番で渡来するものもあれば、雄が雌よりいくぶん早く渡来するものもある(羽田・小淵, 1967)。

巣づくりにさきがけ、雄は激しい身体的闘争やさえずりによってなわばりを確立・防衛する。

さえずりには、なわばり内の地上から飛び立ち、強くはばたきながら上空に登り、一点に静止したり静かに輪を描いたりしてさえずる空中さえずりと、小高い石や土盛りの上で静止してさえずる地上さえずりの2つのタイプがある。

雌だけで地上に巣をつくり、外装にはヨモギの枯れ葉、ダイズの枯れ枝、メヒシバの枯れ葉や茎を用い、内装には主にイネ科の枯れた根を使う。

巣は椀形の外径 10 ㎝ぐらいで、よく草の根元につくる。

造巣期間中、雄は全く巣材運搬に関与せず、雌の後を追従して地上さえずりを繰り返す(羽田・小淵, 1967)。

造巣期には、なわばりの中の丈の低い植物の上で番で塒をとる。

1巣卵数は2~5個で、4個が最も多く、1日1卵ずつ産卵し、雌だけが約10日抱卵する(羽田・小淵, 1967)。

雌雄共同で雛に給餌し、育雛日数は9~10日と短く、巣立ってから次の繁殖までの日数は約19日である。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 ヒバリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 212.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

鳴き声

さえずりは空中で行われるという印象があるが、地上の小高いところや地表でもさえずる。

空中でのさえずりが多いのは営巣初期だけで、そのほかの時期は地上での方が多い (羽田・小淵 1967)。

空中でのさえずりは飛翔の状態で異なり、一例として「チーチビ チーチビ」(上昇)、「チュクチュ クチー チュクチュクチー ツゥイ ツゥイ ピチ ピチ ピーツツ チー ピーツツチー ツォイ ツォイ」(空鳴き)、「リュ リュ リュ リュ ピー ピー ピー ピー」(下降)と変化する(山岸 1992)。

地上でのさえずりは空鳴きと同様である。地鳴きは「ビュル ビュル」または「ピリッ ピリッ」と鳴く(五百沢ら 2000)。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 ヒバリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 212.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

特徴的な行動

繁殖期には番ごとなわばりをもって分散する。雄は、造巣期から抱卵期にかけて頻繁に空中さえずりと地上のさえずりを繰り返す。

2つのさえずりの割合を各繁殖ステージで比較すると、造巣初期には空中さえずりが多いが、産卵・抱卵・育雛期には地上さえずりのほうが多い(羽田・小淵, 1967)。

なわばりの面積は 5,000~10,000 ㎡で、なわばりの中で巣材採集。交尾、繁殖、採食を行う(羽田・小淵, 1967)。

非繁殖期には小群でいることが多いが、各個体間に特別な結びつきはないと思われる。

参考文献

  • 中村雅彦 1995 ヒバリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 212.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

その他生態

春夏の候には雄雌で生活し、雄はある生息領域をもっているが、その範囲は比較的狭い。

冬季や渡りのトキには30~40羽位で群棲する。

地上で餌を啄み、地上では両脚を交互にして歩みつつ餌を捜し求めるが、両脚を揃えて跳ね歩くことはない。

地上に腹をつけて休んだり砂浴みをすることもある。地上を塒とする。

翼を緩慢に羽搏いて飛翔し、囀りながら領域から垂直に上昇し、昇り切ると翼を烈しく羽搏いて停空飛翔をし、囀り終わると真直ぐに領域内に舞い降りるのが常である。
巣に戻るときには横飛びをしてひらりひらりと飛翔する。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ヒバリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 116-119.

最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ

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