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ムネアカタヒバリ(Anthus cervinus)の分類 セキレイ科(Motacillidae)
ムネアカタヒバリ(Anthus cervinus)の概要 タヒバリ属(Anthus)

ムネアカタヒバリ(Anthus cervinus)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Anthus cervinus (Pallas, 1811)

基本情報

大きさ・重さ

・嘴峰:10.5~13.5 mm
・翼長:雄 81~90 mm 雌 77~84.5 mm
・跗蹠:21~23 mm
・尾長:52~65 mm
・体重:17~20 mm
・卵:長径 19~21.3 mm×短径 14~15.2 mm  

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最終更新日:2020-08-10 キノボリトカゲ

分布

全北区。スカンジナビア半島北部からシベリア、カムチャッカ半島、アラスカのベーリング海沿岸にかけての高緯度地方で繁殖し、アフリカ大陸、インドシナ半島、フィリピンで越冬する。

繁殖地はタヒバリより北方だが、越冬地はタヒバリより南に偏っている。

本州中部以北では旅鳥、本州西部以南から沖縄県まで冬鳥として日本全土で見られるが、タヒバリに比べて数は少ない。

ヒバリという名がつくが、ヒバリの仲間ではなくセキレイ科の鳥である。

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最終更新日:2020-08-10 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

セキレイ科

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最終更新日:2020-08-10 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

【雌雄】
額・頭上・後頭・後頸は淡褐色で暗褐色の軸斑がある。眼の上には赤葡萄酒様の淡赤褐色の眉斑がある。

眼先から眼の後方まで淡褐色の過眼線が走り、耳羽の大部分は赤褐色、淡褐色を帯びたクリーム色、または暗褐色の軸斑があるものなどがあり、個体でいろいろに異なっている。

腮・喉は赤葡萄酒色の淡赤褐色で、冬期は暗褐色の顎線が走っている。

背・肩羽・腰・上尾筒は淡褐色で、暗褐色の軸斑がある。

胸・脇は赤味のあるクリーム色で、上胸と脇には暗褐色の縦斑があり、腹・下尾筒はクリーム色である。

翼は暗褐色、初列風切・次列風切・初列雨覆・小翼羽は外縁に褐色を帯びた白色または黄褐色の細い縁があり、三列風切・大、中、小雨覆には同色の幅の広い縁がある。

尾は暗褐色で、褐色を帯びた白色または黄褐色の羽縁がある。尾は暗褐色で、褐色を帯びた白色または黄褐色の羽縁がある。

最外側の尾羽では内弁の先端に楔型の細長い白斑があり、次の1対の尾羽では内弁に同形の極く小さな白斑がある。

腋羽は灰白色、嘴色は黒褐色で上嘴の縁と下嘴の基部は肉色。虹彩は暗褐色。脚色は淡褐色を帯びた肉色、脛羽はクリーム色。

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最終更新日:2020-08-10 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

雛は肉色の裸体のままで目の上、後頭、上膊、前膊、背、腿、脛などの羽域に暗灰褐色の長い初毛が豊富に生えている。

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最終更新日:2020-08-10 キノボリトカゲ

卵の形質

卵は青灰色の地に赤褐色の雲形の斑があるものと黄土色の毛のような形の斑のあるものとがあり、ときにはオリーブ灰色の地に暗褐色の粗い斑紋のあるものもある。

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生態

生息環境

水田、湿った畑、サトウキビの刈り跡、干拓地、海岸などで見られる。タヒバリよりは乾いた場所を好む。

繁殖期には、ツンドラ地帯の湿潤な草原または疎林に生息する。

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食性

地上性で、主に昆虫をついばみ、冬は雑草の種子も食べる。両脚を交互に動かして歩きながら、地上で餌をあさることもある。

はね歩くことはない。止まると下半身を上下にゆする。低木の枝の上に止まることも多い。

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鳴き声

ピッ、ピッ、ピッと鋭い声で地啼きし、警戒時には飛び立つときにも啼く。

囀鳴時には、チチチチチチ、チカチカチカチカ、チュイ、チュイ、チュイ、チュイ、ツツツツツツ―と美しい声で囀り続ける。

囀るときにはビンズイなどのように空に垂直に舞い上がりながら囀る。

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特徴的な行動

産卵期は5月下旬から7月上旬、一夫一妻で繁殖する。湿潤な草原の草むらの中の地上にあるわずかな窪みに営巣する。

巣の周囲は、イネ科やガンコウランなどで覆われている場合が多く、イネ科の枯れ枝や枯れ葉、コケ類を用いて椀形の巣をつくり、産座には細い茎や獣毛、羽毛を敷く。

雄が窪みを掘り、最初は雌雄で巣材を運ぶが、後の内装および産座は主に雌が分担する(Cramp, 1988)。

1巣卵数は5~6個、抱卵は産卵2~3日目から雌によって行われ、10~14日で孵化する(Cramp, 1988)。

抱卵期には雄に対して雌が巣立ち雛のように羽をふるわせて餌をねだり、雄が雌に餌を渡すという給餌行動を行う。

雛への給餌は雌雄で行い、雛は11~15日で巣立つ。

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その他生態

繁殖期には番ごとになわばりをもって分散する。

繁殖地に渡来した雄は、樹梢あるいは地上からはばたいて垂直に上昇しながら舞い降りる行動が見られる(Cramp, 1988)。

ヒバリの空中さえずりに似るが、ヒバリほど高空に舞い上がることはない。

こうしたさえずり飛翔を繰り返し、なわばりを宣言する。

なわばりの面積は 0.5~1 haで、なわばりに侵入する個体に対して、雄は胸を誇示しつつくちばしを斜め上に向け、翼をゆっくり動かして威嚇し、なわばりを防衛する(Simms, 1988)。

番の形成は繁殖地に渡来してから行われるが、移動の途中でも求愛行動が観察されることがある(Cramp, 1988)。

なわばりの中で交尾、営巣、繁殖をするが、複数の番が好適な採食地を共有することもある(Cramp, 1988)。

渡りの時期には大群を形成して移動したり、ほかのセキレイ科の鳥と混群をつくって移動することもあるが、越冬期には単独ないしは小群でいることが多い(Cramp, 1988)。

日本でも、単独または小群で見られることが多い。

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最終更新日:2020-08-10 キノボリトカゲ

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