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ミソサザイ(Troglodytes troglodytes)の分類 ミソサザイ科(Troglodytidae)
ミソサザイ(Troglodytes troglodytes)の概要 ミソサザイ属(Troglodytes)

ミソサザイ(Troglodytes troglodytes)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Troglodytes troglodytes (Linnaeus, 1758)

基本情報

大きさ・重さ

・全長:99~109 mm
・翼長:45~53 mm
・尾長:33~37 mm
・嘴峰長:11~13 mm
・ふしょ長:17~19 mm
・体重:6.8~10.9 g
・卵:長径 16.5~18.2 mm × 短径 12.1~14 mm 平均長径 17.3 mm × 短径 12.8 mm 重量 1.2~1.5 g

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ミソサザイ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 331-335.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

分布

旧北区のユーラシア大陸に広く分布し、大部分の地域で留鳥である。

日本国内では、北は千島列島南部から北海道を経て、南は屋久島までの広い範囲で繁殖する。沖縄にはいない。

標高の高い場所で繁殖していた個体は冬期になると低地に降りる。

参考文献

  • 中村登流 1995 ミソサザイ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 180.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

学名の解説

種小名は穴にもぐるものという意味。

参考文献

  • 吉井正 2005 ミソサザイ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 478-479.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

和名の解説

和名でミソは溝にすむことで、サザイは小さなという意味だという。

参考文献

  • 吉井正 2005 ミソサザイ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 478-479.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

亜種・品種

北海道から九州に分布する亜種ミソサザイ fumigatus ,伊豆諸島中部以南に分布するモスケミソサザイ mosukei ,屋久島,種子島に分布するオガワミソサザイ ogawae ,大東諸島で絶滅したとされるダイトウミソサザイ orii

参考文献

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

別名・方言名

ミソッチョ

参考文献

  • 吉井正 2005 ミソサザイ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 478-479.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

分類学的位置付け

スズメ目 ミソサザイ科

参考文献

  • 吉井正 2005 ミソサザイ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 478-479.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

人間との関係

『日本書紀』に名前がでており、仁徳天皇の名は大鷦鷯尊という。

和歌や俳句(冬の季語)に詠まれ、広瀬惟然「足ばやに竹の林やみそさざゐ」がある。

絵画では荒木十畝「雪後」の中に描かれる。「鷦鷯も鷹の中」の諺がある。

古名はササギと読まれ、また「三十三才」とも洒落られたこともある。

参考文献

  • 吉井正 2005 ミソサザイ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 478-479.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

形態

成鳥の形質

額・頭上・後頭・後頸などは暗赤褐色、眼先は赤クリーム色である。眼の上には赤クリーム色の幅の狭い眉斑がある。

頬、耳羽、腮、喉は淡黄白色を帯びた褐色で、頬と耳羽の各羽には暗褐色の羽縁がある。

喉の中央は淡色、喉の両側は褐色勝ちである。背、肩羽は赤褐色で、各羽は暗褐色の横縞が数条ある。

胸、腹は淡黄白色を帯びた褐色で、胸の各羽には暗褐色の横縞が数条あり、腹の各羽には暗褐色の横縞が数条ある。

下尾筒もこれと大体同様であるが、各羽端は白色である。初列風切は暗褐色で、外弁には黄褐色またはクリーム色と黒褐色の横縞が多数ある。

次列風切は暗褐色で、外弁には赤褐色と黒褐色の横縞が多数ある。

三列風切、大、中、小雨覆、初列雨覆、小翼羽は赤褐色で、各羽には黒褐色の横縞が多数ある。中雨覆の各羽端には白色の小斑がある。

下雨覆、腋羽は褐白色で、褐色の斑が多少ある。

尾は赤褐色で、黒褐色の横縞が多数あるが、中央の1対の尾羽ではその数およそ10~12位である。

嘴色、上嘴は暗褐色で、下嘴は淡い角色。虹彩は褐色、脚は淡褐色、脛羽は褐色。

参考文献

  • 吉井正 2005 ミソサザイ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 478-479.
  • 清棲幸保 1955 ミソサザイ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 331-335.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

幼鳥の形質

孵化直後の雛は肉色の裸体のままで、灰黒色の初毛が、眼の上、後頭、背などの羽域に生えているが、背のものは極めて僅かである。

口中は鮮黄色で、口角の縁は淡黄色である。

【幼鳥】
成鳥に似るが、頭上の羽毛は極く狭い暗色の縁を有し、眉斑は目立たず、腮・喉・胸はバフ色に富み、横縞が目立つ。

翼および尾は成鳥と同様だが赤褐色は冴えず、中雨覆の白斑は通常これを欠く。下尾筒の先の白斑もこれを欠く。

【第1回冬羽】
幼鳥は8月から10月に体羽・小雨覆・中雨覆の全部・内側数枚の大雨覆・尾羽(通常全部)を換羽して第1回冬羽となる。

新たに生じた羽毛は成鳥と酷似する。しかし成鳥よりも色が鈍くて淡い。

【第2回冬羽】
幼鳥は第2年秋季に風切を含む全身の換羽を行って成鳥冬羽となる。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ミソサザイ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 331-335.
  • 山階芳麿 1980 ミソサザイ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 375-378.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

卵の形質

卵は白色で斑紋を欠くか、または白色の地に淡赤褐色と淡紫色の極めて微細な小斑点が散在するかである。

参考文献

  • 清棲幸保 1955 ミソサザイ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 331-335.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

生態

生息環境

低山帯から亜高山帯の針葉樹林や針広混交林の、林床がじめじめと苔むした場所を好んで生息する。

また、流れの強い渓流、渓谷の谷底の急斜面、沢筋、小さい流れのあるところを好み、地表面に複雑な凸凹の多い場所が繁殖地として最も適切である。

冬は低地にも現れ、スギ林のような暗い林床で見られる。しばしば人家の中へも入ってくる。

ツバメの古巣の上に塒用の巣をつくった例がある(中村, 1991b)。

参考文献

  • 中村登流 1995 ミソサザイ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 180.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

食性

暗い樹林の林床で採食し、樹木の根元や岩に生えたコケの上を跳ねていきながら、餌を探す。昆虫類を主食とし、甲虫類(ゴミムシ、コメツキムシなど)、チョウ目(シャクトリガなど)、ハエ目(ハエの卵など)を食べる。

また、クモの仲間も好んで採餌する。採餌方法は、藪の地面近くの枝を伝わったり、頻繁に樹木の根につかまる。

崖や岩の上に生えた樹木の根系の中へもどんどん潜り込んでいくなど、いわば地表面よりむしろ地下へ、隙間を利用して潜り込み、ほかの鳥が利用できない部分を狙った独特の採食空間をもつ種である。

くちばしの使い方は、とり出したり、つまみ上げたりする一方、ブユなどに飛びつくこともある。

参考文献

  • 中村登流 1995 ミソサザイ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 180.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

ライフサイクル

繁殖期は早いほうで4~7月ごろ。配偶システムは一夫一妻かまたは一夫多妻。

最多で一夫四妻まであることが羽田・小堺 (1971)の志賀高原の亜高山帯針葉樹林帯で行われた研究で報告されている。

その内訳は、1969~1971年の3年間で、一夫四妻(1例)、一夫三妻(1例)、一夫二妻(3例)、一夫一妻(4例)、単独(4例)であった。

また、つがった雌の数とオスの行動圏には正の相関関係があり、つがうメスが増える毎に、オスは行動圏を拡張させ ていくことが明らかとなっている(羽田・小堺 1971)。

そのほか、このミソサザイの一夫多妻の配偶システムについては、社会的なつがい関係が遺伝的なつがい関係と一致するのかどうかは、未だ確かめられていない。

この疑問を解決するには、巣内ヒナの父性を調べる遺伝解析が必要とされ、今後の課題であるといえる。

ミソサザイのオスは、球形の特徴的な巣を造る。

繁殖期のオスは、枯れ枝と苔を編んだ精巧な巣を自分の縄張り内の突き出た岩棚の下や浮き上がった樹木の根の裏側に造る。

オスは巣内(産座などの卵に直接触れる部分)を除いた外側を造り、これを求愛巣という。

オスは普通、2~4巣の外巣を造るが、8巣も造った個体もいる(羽田・小堺 1971)。

この求愛巣の周りで雄は激しくさえずり、メスを呼び込む。

メスは巣を気に入ると内巣を造り、産卵する。巣の大きさは、外径が 9~15 cm、奥行 9 cm位、出入り口の直径は、2.7~4.5 cm、内部の深さは、5~12 cm位である(清棲 1965)。

メスは、オスが造った外巣を気に入ると、羽毛や獣毛、草木の細根などを運び入れて内巣を造る。

参考文献

  • 中村登流 1995 ミソサザイ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 180.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

鳴き声

小さな体に似合わず、雄はトリル(震わせた声)を効かせたとても複雑で長く、声量のある声でさえずる。

まだ雪深い亜高山帯でも3月頃からさえずり始め、8月まで聞くことができる。地鳴きは、チャッ、チャッとウグイスの地鳴きに似た声を出す。

参考文献

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

特徴的な行動

雄雌または単独で生活し、灌木の茂みの間、渓流の岩の上、崖地、人家の縁の下などで活発に活動しつつ跳ね歩いて餌を漁る。

跳ね歩くときには尾を立て、腰を左右に振るのが常である。下枝から上枝にと次第に高い樹梢に上って行く。

飛翔時には翼を迅速に羽搏いて直線的に飛び、地上すれすれ位に低く飛ぶことが多い。

囀るときには樹梢や屋根の上、電柱の頂、旅竿の先端など見通しの好い高所に長い間とまって囀るが、そのとき以外のときには灌木の薄暗い位に繁茂した茂みの中や崖地の陰などに生活することが多い。

参考文献

  • 吉井正 2005 ミソサザイ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 478-479.

最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ

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