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- サメビタキ(Muscicapa sibirica)について

サメビタキ(Muscicapa sibirica)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Muscicapa sibirica Gmelin, 1789
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:8~13 mm
・翼長:73~86 mm
・跗蹠:12~14 mm
・尾長:46~57 mm
・体重:10~16 g
・卵:長径 16~18 mm×短径 13~13.5 mm 平均長径 17.2 mm×平均短径 13 mm
参考文献
- 清棲幸保 1955 サメビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 224₋225.
最終更新日:2020-04-27 ハリリセンボン
- 分布
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旧北区、ユーラシア大陸の中・高緯度地方に分布する。日本では北海道から本州、四国、九州の屋久島にかけて繁殖する。留鳥または地方によっては冬に低地に移動する漂鳥で、個体数は多い。
参考文献
- 中村登流 1995 サメビタキ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 173.
最終更新日:2020-04-27 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
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スズメ目 ヒタキ科
参考文献
- 吉井正 2005 サメビタキ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 246.
最終更新日:2020-04-27 ハリリセンボン
形態
- 成鳥の形質
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雌雄:額、頭上、後頭、後頸は煤けた灰褐色で、各羽の縁は灰色勝ちである。耳羽、頬は煤けた灰褐色で、頬はクリーム色を帯び、眼先と眼の周囲は白色で、眼先の各羽端は煤けた灰褐色を帯びる。
腮、喉は白色で、周囲はクリーム褐色である。背、肩羽、腰、上尾筒は煤けた灰褐色、胸、脇はクリーム灰褐色で、各羽縁は白色を呈し、全体として暗色の縦斑をなしている。
腹の中央と下尾筒は白色、下雨覆、腋羽はクリーム褐色で、淡赤錆色の羽縁がある。風切羽は暗褐色で、三列風切には褐色を帯びた白色の細い外縁がある。しかし、夏季はほとんど羽縁を欠き、秋季の羽換後には幅 1 mmくらいの羽縁を呈する。
大雨覆は三列風切と同様である。中、小雨覆は煤けた灰褐色、初列雨覆、小翼羽は暗褐色をしている。尾は暗褐色で嘴色は黒褐色、下嘴の基部は肉色、虹彩は暗褐色、脚色は黒褐色、脛羽はクリーム灰色である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 サメビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 224₋225.
最終更新日:2020-04-27 ハリリセンボン
- 幼鳥の形質
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完全な幼羽は不明であるが、換羽中にものについては、頭上は暗褐色で、各羽は小さいバフ白色の中央縦線を有する。背・腰と上尾筒は鼠灰色で、各羽にはバフ灰白色の円形小斑がある。尾・初列風切・次列風切は成鳥と同じである。三列風切と大雨覆は、淡バフ色の縁を有する。
中雨覆の先には、バフ白色の三角形がある。腮は汚バフ色をしている。喉の下部と腹は白色、喉の上部・胸と脇には、不鮮明な暗褐色の丸味のある斑点を多数有する。
【第一回冬羽】幼鳥は8月~9月に体羽、小雨覆・中雨覆を換羽する。新たに生じた羽毛は成鳥冬羽に似るが、背面は成鳥冬羽よりも濃い。また三列風切と大雨覆のバフ色の縁は、成鳥のものより濃くかつ広い。下面、特に喉および胸の地色はバフ色を帯び、喉・胸・脇・腹の縦斑は成鳥のものより一層広く、ほとんど一様な煙灰色に近い様子を呈している。嘴の色は多少淡い。
【第二回冬羽】幼鳥は恐らく、第二年の秋季の全体の完全な換羽で成鳥冬羽になると考えられる。
参考文献
- 山階芳麿 1980 サメビタキ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 26₋31.
最終更新日:2020-04-27 ハリリセンボン
- 卵の形質
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卵一巣の卵数は3~5個で、卵は青白色または淡青緑色の地に淡紫褐色のやや不明瞭な小斑点が散在するが、斑点が極めて不明瞭なものもある。
卵は卵形、楕円形である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 サメビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 224₋225.
最終更新日:2020-04-27 ハリリセンボン
生態
- 生息環境
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亜高山針葉樹林で繁殖し、大木の多い林で見られる。樹林内の立ち枯れのあるところを好み、例えば八ヶ岳山塊の針葉樹林では、各所にある縞枯れ状の部分に多い。渡りの季節には低地や低山帯のマツ林、そのほかの樹林に立ち寄る。
参考文献
- 中村登流 1995 サメビタキ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 173.
最終更新日:2020-04-27 ハリリセンボン
- 食性
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大木の下枝や枯死木の梢など、樹林内でも周りの見晴らしの良い場所に止まって、空間に飛び出す昆虫を狙い、飛び立ってくわえとる。典型的なヒタキ型のフライングキャッチ法を駆使して、しばしば逃げ回る虫を空中で追い回す。
林内の枯死木から枯死木へとめぐっていき、枯死木の枝先でしばらく過ごし、水平方向へ出撃して虫をとっては、しばしば元の枝へもどる。
主として飛翔中の昆虫類をついばみ、膜翅目(例えばキバチ、ミツバチ、ベッコウバチなどの成虫)、双翅目(例えばイエバエ、クロバエ、キンバエ、キイロアブなどの成虫)、鱗翅目(例えばカレハガ、ヤガの幼成虫)、鞘翅目(例えばクリシギゾウムシ、ヒメコガネなどの成虫)、蜻蛉目(例えばトンボ)などをついばむ。ほかに蛛形類の盲蜘蛛目(例えばモエギザトウムシ)をもついばむ。
参考文献
- 清棲幸保 1955 サメビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 224₋225.
- 中村登流 1995 サメビタキ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 173.
最終更新日:2020-04-27 ハリリセンボン
- 鳴き声
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コサメビタキの囀りに酷似した小声のグゼリ様の囀りをなし、5月から6月頃までの囀鳴期には見通しのよい樹木にとまり、チイチク、チイチク、チイチク、チイチクと囀る。警戒時にはジッ、ジッと鳴く。囀鳴期以外には全く鳴かない。
参考文献
- 清棲幸保 1955 サメビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 224₋225.
最終更新日:2020-04-27 ハリリセンボン
- 産卵
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繁殖期は6~8月、一夫一妻で繁殖する。巣は、樹木の横枝の中ほどの二又の上などに、雌雄共同でつくる。広葉樹のこともあるが、水平に伸びた針葉樹の枝を使う場合が多く、地上 2~20 mぐらいで、周りにあまり葉や小枝が茂らない見通しの良い下枝を選ぶ。
巣はあまり深くない椀形をしていて、蘚類や地衣類、小枝などで緻密につくり、表面に地衣類をとりつけて、枝のこぶのように見える。内装には細い植物繊維を使う。
1巣卵数は3~5個、雌雄交代で抱卵する。育雛は両親が行う。抱卵期、育雛期、繁殖行動の詳しい記載は少ない。
参考文献
- 中村登流 1995 サメビタキ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 173.
最終更新日:2020-04-27 ハリリセンボン
- 特徴的な行動
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繁殖期にはなわばり分散をする。5月ごろの渡米当初は、盛んになわばり争いが見られ、空中戦で、翼を斜めに起こして、直線的に突っ込んでいく。しきりにパチパチとくちばしを叩く音響を発する。さえずりはコサメビタキに似る。
参考文献
- 中村登流 1995 サメビタキ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 173.
最終更新日:2020-04-27 ハリリセンボン
関連情報
- その他
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日露渡り鳥条約、日中渡り鳥協定指定種である。
参考文献
- 吉井正 2005 サメビタキ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 246.
最終更新日:2020-04-27 ハリリセンボン