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- カササギ(Pica pica)について

カササギ(Pica pica)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Pica pica (Linnaeus, 1758)
目次
基本情報
- 大きさ・重さ
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・全長:445 mm(400~480)
・自然翼長:186~221 mm
・尾長:197~264 mm
・嘴峰長:29~39 mm
・ふ蹠長:47~55 mm
・体重:190~287 g
・卵:長径 28~39 mm × 短径 23~28 mm 平均長径 35.6 × 短径23.8 mm
参考文献
- 清棲幸保 1955 カササギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 12-15.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 分布
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インド亜大陸とシベリアの永久凍土帯を除くユーラシア大陸、北アフリカの一部、アラビア半島の一部、北米大陸にかけての北半球に広く分布している。
Vaurie による分類では本種は13亜種に分けられ、日本には P. p. sericea が分布する(Goodwin 1977)。
国内では、北部九州に留鳥として周年分布する。本種は朝鮮半島から人為的に移入されたという言い伝えがある。
江口・久保(1992)は佐賀県、福岡県の史料を調べ、本種が江戸時代開始前後に朝鮮半島より移入されたと結論している。
1923年には「海外から移殖されて現在野生状態にある著名なもの」という理由で、福岡県南部と 佐賀県南部がカササギ生息地として天然記念物に指定された。
しかし、現在の理解では外来種であり、むしろ駆除の対象となる。この点は、保護上の問題を提起しているともいえる。
指定当時、本種の分布は佐賀県南部、福岡県南部に限られていたが、1970年代より分布が拡大し、1990年代には福岡県、佐賀県、長崎県の玄界灘沿岸、熊本県北部の有明海沿岸、大分県西部の日田市近辺まで広がった。
これらの分布地以外にも、島根、新潟、長野、秋田、北海道で、迷行ないし人為的移入と思われる個体の目撃や定着が報告されている(日本鳥学会 2000)。
参考文献
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 和名の解説
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和名および別名のカチガラスは朝鮮語名(擬声語)に由来。
参考文献
- 吉井正 2005 カササギ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 126.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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スズメ目 カラス科
参考文献
- 吉井正 2005 カササギ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 126.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 人間との関係
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英文学では白黒2色のもつ二面性から不吉な鳥とされるが、韓国では国鳥、佐賀県では県鳥に指定されるなど、アジアではむしろ陽気な鳥で幸福をもたらすと考えられている。
『日本書紀』(推古6年)に「難波吉土磐金、新羅より至りて、鵲二隻を献る。乃ち難波社に養はすむ。因りて枝に巣ひて産めり」とある。
『新古今集』(巻6)に「かささぎの渡せるはしに置く霜のしろきをみれば夜ぞ深けにける」。
参考文献
- 吉井正 2005 カササギ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 126.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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成鳥の冬羽は、頭・頸・肩・上尾筒・腮・喉・上胸・下腹・下尾筒および腿は光沢ある黒色で、喉の羽毛は基部白くかつ淡色の軸斑があり、先端やや毛状をなす。
腰には幅約 2 cmの灰白色の帯がある。初列風切は白色で基部および外縁黒く、外縁は少し青緑色の光沢を帯びている。
次列風切は外側のものは青色、内側のものは強い光沢ある紫色。大雨覆および中雨覆は強い光沢ある青色。
小雨覆は黒色で緑青色の光沢がある。下雨覆は黒色。すべてこれらの青色部は光線の方向により紫色を帯びる。肩羽は白色。
中央尾羽は金緑色で強い銅紫色の光沢があり、そのほかの尾羽の外弁は中央対より緑色に富める金緑色、内弁は暗黒色。
しかし各羽の先端は暗青色で、暗青色部と金緑色部との間には美しい紫色部がある。腹は白色。
尾は著しい楔状尾で、最長のものと最短のものとの差は 10~13 cmに達する。
嘴は高くやや短く、嘴峰は先端の近い部のみ湾曲する。嘴毛は上嘴の半ばを覆う。色は黒色。脚は黒色、虹彩は暗褐色。
参考文献
- 山階芳麿 1980 カササギ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅰ. 出版科学総合研究所. 27-31.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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孵化直後の雛は裸体のままで初毛がなく、口中は鮮紅色、舌の基部と上顎との小白点がある。
幼鳥は成鳥に似るも黒色部には光沢部がなく、喉および上胸の羽毛は基部が白い。
腰の淡色帯はほとんど目立たない。肩羽および胸は汚白色で暗色斑が少し混じっている。翼および尾の金属光沢は弱い。
【第1回冬羽】
幼鳥は秋季に風切および初列雨覆を除き、全部換羽して第1回冬羽となる。新しく生じた羽毛は成鳥と異ならない。
ときとしてこの際に尾羽2~3枚をも更新することがある。
【第2回冬羽】
幼鳥は翌年の秋季に風切・尾羽を含み全身を換羽して成鳥となる。
参考文献
- 山階芳麿 1980 カササギ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅰ. 出版科学総合研究所. 27-31.
- 清棲幸保 1955 カササギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 12-15.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵の色は淡青緑色で、暗褐色と灰色の斑点が一面に散在。
参考文献
- 清棲幸保 1955 カササギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 12-15.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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農耕地が主で、住宅地、市街地にも生息しているが、森林内には生息しない。
近年の分布拡大は、障壁となっていた丘陵部の森林が、宅地開発、果樹園開発などにより取り払われ、新しい生息地の出現があったためと考えられる。
参考文献
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 食性
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雑食性で動植物を食物とする。
昆虫、ミミズ、魚類、カエル類、小哺乳類、草の種子、穀物、果実類を食べるほか、小鳥の巣を襲って雛や卵を食すことがある。
ゴミ捨て場などを漁り、残飯なども食べる。大小のゴミ捨て場、養鶏場、畜舎などに大きな群れが集まる。
畦や樹木の洞や樹皮の隙間などに、小鳥、魚、カメの子、残飯など比較的大きな餌を隠すことがある。
参考文献
- 山階芳麿 1980 カササギ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅰ. 出版科学総合研究所. 27-31.
- 清棲幸保 1955 カササギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 12-15.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は5~8月。つがい関係は終生で、一夫一妻的に繁殖する。つがい単位で 1~4 ha程度のなわばりを防衛する。
主に防衛されるのは集落内に作られる巣の近辺で、採餌はなわばり外の共同採餌場でもおこなう。
なわばり行動はヒナの巣立ち後は低下して、10月頃から再び活発になる。
若鳥は5~6月頃には親の養育を離れて群れを作り、翌春まで群れ単位で生活し、夜は出自集落近辺の竹藪などに集団でねぐらを営む。
群れは春までには次第に小さくなり、群れを離れた若鳥は出自集落の周辺近くになわばりを獲得し、早いものでは1歳で、通常は2歳で繁殖を始める(久保1975)。
社会形態は亜種間で大きく異なり、ヨーロッパの基亜種は厳格ななわばりを防衛するが、北米産亜種はルースコロニー的で(Birkhead 1991)、日本のカササギは中間的である。
村落、市街地の高木に枯れ 枝や小枝で球状の巣を作る。
営巣樹種はエノキ、カキノキ、クスノキ、イチョウ、ヤナギなどが多い。最近では樹木よりも電柱に営巣する傾向が強い。
巣の大きさは、長径 45~150 cm、短径 38~115 cm、高さ 30~125 cmである(n=420)。
巣の外側は木の枝で作られるが、 内部の底には田やクリークの土を塗り固め、その上に草の繊維、木の葉、布きれ、綿などを敷いて産座としている。
巣の斜め上方に直径 10 cmほどの入り口がある。最近ではハンガーや金網の針金が多数用いられる巣もある。
ヨーロッパでは2割ほどの巣は屋根を欠いている(Birkhead 1991)。このような巣はカラス類の捕食を受けやすい。
造巣は雌雄で行い、早いものでは12月下旬頃に開始する。1ヶ月ほどで完成させるが、再営巣の場合は1週間ほどでできる。
参考文献
- 清棲幸保 1955 カササギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 12-15.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 鳴き声
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鋭い声で「カチ、カチ」または、「カシャ、カシャ、カシャ」と鳴く。
佐賀地方ではカササギを「カチガラス」と呼ぶ。諸説あるが、鳴き声に由来するとも言われている。
参考文献
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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番は生涯のなわばりをもって分散する。
なわばり活動は巣づくり期から抱卵期にかけて最も盛んで、採食場所はいくつかの番で共有しており、防衛行動は巣とその周辺の樹上などの高いところで、地上は含まれていない(久保, 1959)。
6月ごろ、家族から独立した若鳥が、隣どうし集まって20~40羽ぐらいの群れになり、共通の塒に集まるようになる。
この塒集合は7月ごろさらに大きくなり、3~4 kmの範囲から、50~250羽ぐらい集まる。
この集合も日中は農耕地に分散し、まとまった群れの姿は捉えにくい(久保, 1959)。
集合は11月ごろから減少し、番が形成されて、なわばり設立へと変わっていく(久保, 1959)。
なわばりは樹木の多い集落部につくられ、一方、群れはその周辺の農耕地で遊牧行動をとるようになる(久保, 1959)。
参考文献
- 中村登流 1995 カササギ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 45-46.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- その他生態
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地上で食物を摂ることが多く、両脚を揃えて跳ね歩いたり、両脚を交互にして歩いたりして餌を漁り、驚いたときには活発に横とびして逃げる。
歩行時には常に尾を多少上げている。単独で生活していることが多い。
人に慣れ易くて農夫の耕す近くで平気で餌を探すが、性質は敏感で見慣れない人の姿などには著しく警戒する。
飛翔時には翼を緩慢に羽搏いて直飛する。夜間は針葉樹林や雑木林を塒とする。
繁殖には頭上の羽を立てたり倒したりし、尾を高く上げ、尾端を拡げたり閉じたりして誇示する。
参考文献
- 清棲幸保 1955 カササギ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 12-15.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ