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- チュウヒ(Circus spilonotus)について

チュウヒ(Circus spilonotus)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Circus spilonotus Kaup, 1847
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:21.5~26.5 mm
・全嘴峰:35~39 mm
・翼長:雄 370~425 mm 雌 399~443 mm
・跗蹠:88~99 mm
・尾長:220~260 mm
・体重:370~670 g位
・卵:長径 48~55 mm×短径 37~41 mm
参考文献
最終更新日:2020-06-19 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区。オーストラリア区、マダガスカル島。
ヨーロッパおよびアジアの温帯・亜寒帯で繁殖し、北方のものは熱帯に渡って越冬する。
日本では北海道と本州中部以北で少数が繁殖するほか、多くは冬鳥として本州以南に渡来する。
日本にはチュウヒ類として3種が記載されているが、日本で繁殖するのは本種だけである。
雌のほうが雄に比べて身体が大きく、雌雄異色で、雄は体羽の色彩に個体変異が大きい。
個体数が少ないため、危急種に指定されている。
参考文献
最終更新日:2020-06-19 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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【雄】
額、頭上、後頭、後頸、頭側、眼先、耳羽は黒色で、各羽縁は白色である。
腮、喉、胸は白色で各羽には黒色の細長い軸斑がある。
翕、背、肩羽、腰は黒色で、各羽には銀灰色の幅の広い縁があるが、その外側には更に白色の細い縁がある。
腹、脇、下尾筒は白色で、上腹と脇の各羽には黒色の細長い軸斑がある。
上尾筒は白色で、その先端の部分には灰褐色の横帯がある。
下雨覆は白色、腋羽は白色で、羽軸は黒色、風切羽は銀灰色で、初列風切の第1羽~第5羽までの外弁は黒色、内、外弁の先端は褐色を帯びた銀灰色、内弁の基部は白色で、ときには灰色の横帯があるものもある。
ほかの風切羽は先端近くに黒色の幅の広い横帯がある。
次列風切の内弁の縁は白色を帯び、内側の風切羽には黒色の幅の広い横縞が多数ある。
三列風切にも黒色の幅の広い横縞が多数ある。
大雨覆は黒色で、銀灰色の斑が横縞をなして多数あり、羽端には白色の細い縁がある。
中、小雨覆は銀灰色で、各羽の中央には黒色の楔形の小斑がある。
初列雨覆、小翼羽は銀灰色で、黒色の斑が不明瞭な横縞をなし、尾は銀灰色で、羽端には白色の縁がある。
外側の尾羽の内弁には灰色の不規則な横縞がある。
嘴色は黒色、下嘴の基部は肉色、蝋膜は黄色、虹彩は淡黄色、脚色は黄色、爪は黒色。
脛羽は雄の場合は白色、雌は赤錆色を帯びた白色または赤錆色を帯びたクリーム色で、各羽には赤褐色の軸斑がある。
【雌】
額、頭上、後頭、後頸は暗褐色で各羽には個体によりクリーム色、赤錆色を帯びた白色、白色などの種類の羽縁がある。
背、肩羽、腰はこれと同様だが、その暗褐色部はそれより著しく幅が広い。
腮、喉、胸、腹、脇は赤錆色を帯びた白色または赤錆色を帯びたクリーム色で、各羽には暗褐色の細長い軸斑がある。
上尾筒は赤錆色を帯びた白色または赤錆色を帯びたクリーム色で、各羽の先端近くには赤褐色の斑がある。
下雨覆は赤錆色を帯びた白色、腋羽は赤錆色を帯びた白色または赤錆色を帯びたクリーム色で、各羽には赤褐色の軸斑がある。
初列風切、次列風切、三列風切は黒褐色で、銀灰色の横縞が多数あり、内弁の縁は赤錆色を帯びている。
三列風切は赤錆色が強い。大、中、小雨覆は赤錆色を帯びたクリーム色で、各羽には暗褐色の楔形の斑がある。
初列雨覆、小翼羽は銀灰色で、黒褐色の横縞が多数ある。
尾は赤錆色を帯びた褐色で、黒褐色の横縞が4~6条くらいある。中央の1対の尾羽は全体に銀灰色を帯びる。
参考文献
最終更新日:2020-06-19 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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大体雌成鳥に類似するが、腹と下尾筒は赤褐色または暗褐色で、C. a. aeruginosus の幼鳥に酷似するが、頭側と眼の後方がクリーム色または白色である点と、耳羽の先端だけが褐色である点が異なっている。
C. a. aeruginosus では耳羽全部が褐色である。
その上本種の尾には暗色の横縞があるものが多いが、チュウヒでは多くは横縞を欠き、あっても極めて不明瞭である。
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最終更新日:2020-06-19 キノボリトカゲ
生態
- 食性
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丈の高い草地や道沿い、水路沿いで、地上 2~3 mの低空をゆっくりとしたはばたきと翼をV字形に保つ滑翔を繰り返しながら獲物を探す。
草むらにひそむネズミ、小鳥類、カエルなどの小動物を発見すると尾羽をいっぱいに広げ、垂直に近い角度で地上に舞い下りて捕獲する。
狩りが成功すると、高さ 1 m前後の草むらの中の料理場に直行して解体する。
晩秋の干拓地ではカマキリなどの昆虫も食べる。
また、用水路に浮いた魚や猫の死体を引き裂いて食べることもあり、基本的には捕らえられるものは何でも餌にしているようである。
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最終更新日:2020-06-19 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は4~7月、一夫一妻で繁殖する。
巣づくりは雌だけが行い、地上に枯れたヨシやススキなどの茎を粗雑に積み重ねて基礎部分をつくり、その上部に軟らかなイネ科の枯れ葉を皿形に浅く敷きつめて産座にする(Cramp & SIm-mons, 1980)。
巣の利用は、ほかの猛禽類とは異なり1年限りである。
1巣卵数は5~7個、2~3日ごとに1卵づつ産卵し、抱卵は第1卵が産卵されてから開始され、主に雌が31~38日行う(Cramp & SIm-mons, 1980)。
抱卵中の雌は巣を離れることは少なく、雄が餌を運んでくると雌は巣を離れて空中で餌を受け取る(西出, 1979)。
孵化した雛は半晩成性で、スズメほどの大きさで、全身が純白な幼綿羽に覆われる。
育雛日数は約35日、雌が雛に餌を与える(西出, 1979)。
雛に餌を運んできた雄は巣に入らず、空中で雄から餌を受け取った雌が巣にもどって雛に給餌する。
雛は孵化後28日ぐらいで巣を離れるが、その後も親からの給餌を受ける(西出, 1979)。
雛は巣を離れてから数箇所を移動し、移動するたびに草を倒してその上に枯れ草を敷く擬似巣をつくる。
参考文献
最終更新日:2020-06-19 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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繁殖期には番ごとになわばりをもって分散する。
雄は巣から約 5 ㎞離れた場所で採餌するが、防衛行動は巣からおよそ 150~200 m付近でおこなわれる(西出, 1979)。
好適な生息地では、ごく狭い範囲に複数の巣が集中することがある(Cramp & Simmons, 1980)。
日本では一夫多妻の繁殖例は知られていないが、外国では雌雄の成熟年齢のちがいから個体群中の性比が偏り、一夫多妻が出現することが知られている(Altenburg etal, 1982)。
参考文献
最終更新日:2020-06-19 キノボリトカゲ