- 解説一覧
- ホオジロ(Emberiza cioides)について
ホオジロ(Emberiza cioides)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Emberiza cioides von J. F. Brandt, 1843
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:10~13 mm
・翼長:72~82 mm
・跗蹠:18~20 mm
・尾長:66~78 mm
・体重:17~26 g
・卵:長径 17.5~22.7 mm×短径 14.5~17.8 mm、平均長径 20.7 mm×短径 15.9 mm、重量 1.9~3 gである。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ホオジロ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 93-95.
最終更新日:2020-06-26 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区。ユーラシア大陸の中緯度地方の東半分、バルハシ湖からウスリー、中国東部にかけて分布する。
日本では屋久島以北の全土に留鳥として繁殖し、ごくふつうに見られる鳥だが、小笠原諸島や奄美大島以南、沖縄県にはいない。
参考文献
- 中村登流 1995 ホオジロ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 48.
最終更新日:2020-06-26 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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スズメ目 ホオジロ科
参考文献
- 吉井正 2005 ホオジロ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 126.
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形態
- 成鳥の形質
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【雄】
額は栗色で、各羽には黒色の軸斑と灰色の羽縁とがある。
頭上、後頭は栗色で、各羽には黒色の軸斑と灰褐色の羽縁とがある。
眼先、眼の周囲、耳羽は黒色で過眼線をなし、冬季は耳羽の各羽に栗色の羽縁がある。
眼の上には白色の眉斑がある。
腮、喉、頸側は灰白色で、下嘴の基部から耳羽の下部にかけて白色の線が走り、その下方には黒色の頬線が走り、細い線で耳羽の黒色部に引き続いている。
後頸、背、肩羽は赤褐色で、各羽には黒褐色の軸斑と灰褐色の羽縁とがある。
胸は栗色で、各羽の基部は黒褐色であり、秋季には各羽に淡灰褐色の羽縁がある。
腹は淡褐白色、腋は淡灰褐色で、各羽には赤褐色の不明瞭な軸斑がある。
腰、上尾筒は赤褐色で、秋季は各羽に淡褐色の細い縁がある。下尾筒はやや赤錆色を帯びた白色である。
風切羽は黒褐色で、初列風切には褐白色の細い縁があり、次列風切には淡赤褐色の細い縁があり、三列風切には同色の幅の広い縁がある。
大、中雨覆は黒褐色で、羽端と外弁とには赤褐色の幅の広い縁がある。
小雨覆は黒褐色で、各羽には灰色の羽縁があり、初列雨覆と小翼羽は黒褐色で、各羽には褐白色の細い縁がある。
尾は中央の1対は赤褐色で、黒色の軸斑がある。
次の3対は黒褐色で、淡褐色の細い線があり、外側の2対の尾羽は黒褐色で、内弁には軸に沿って楔形の細長い白色の斑があり、この斑は最外側の尾羽のものの方が大きく、外弁の基部近くまでも達している。
腋羽は白色、嘴色は上嘴の場合は暗角色、下嘴は淡色、虹彩は黒褐色、脚色は淡褐色、脛羽は淡褐白色。
【雌】
頭上、後頭は雄よりも灰褐色が多く、耳羽や頬線は栗色勝ちである。
眉斑は褐白色で、下嘴の基から耳羽の下に走る線は白色でなくて、淡褐白色である。
下嘴の基からの頬線は不明瞭である。胸の栗色は色が淡い。ほかは雄と同様である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ホオジロ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 93-95.
最終更新日:2020-06-26 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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【幼鳥】
背面は雌成鳥に似ているが、頭上の両側には栗色がなく、全体がバフ灰色に富み、こちらは上尾筒に比べより淡いバフ色となっている。
背の黒色軸斑は幅広く、かつ淡い。尾羽は成鳥と全く同じ。
翼も成鳥に似ているが、大、中雨覆の羽縁はキツネ色ではなく淡バフ色である。
顔の羽毛はバフ色で先端は暗褐色となっており、眉斑・顎線などははっきりしない。
下面は淡バフ色で喉の両側・胸・腹側には短い淡黒褐色の小縦斑がある。
【第1回冬羽】
幼鳥は8~9月の間に全身を換羽して第1回冬羽となる。この際、風切と尾羽も脱換するという。
この羽衣は成鳥冬羽とほとんど同様である。しかし頭には栗色が少なく顔の斑点は成鳥ほど鮮やかではない。
また喉および胸にはかなり多くの縦斑がある。雄の場合、喉はバフ色を帯びている。
【第2回冬羽】
幼鳥は第2年の秋季の全身の換羽で成鳥冬羽となる。
【雛】
初毛は暗灰色。羽域は外眼上域・後頭域・背域・上膊域・前膊域・腿域・脛域および腹域。
参考文献
- 山階芳麿 1980 ホオジロ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 186-188.
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- 卵の形質
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卵は青味のある白色、灰色、灰白色、淡赤褐色、淡青色などの地に黒褐色と灰紫色との小斑点があるものと、同色の曲線形の斑が鈍端にあるものなどがある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ホオジロ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 93-95.
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生態
- 生息環境
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低地や低山帯の、とくに山麓スロープに多い。
藪地を好み、集落、農耕地、牧草地などの周辺の藪地、また疎林、植林、いろいろなタイプの樹林の林縁、路傍の雑草と藪の多いところなどで見られる。
広大な草原や密林、原生林などの内部では見られない。
参考文献
- 中村登流 1995 ホオジロ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 48.
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- 食性
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地上で採食することが多く、雑草などの間の裸出土を歩きながら草の種子などをつまみ上げる。
イネ科、カヤツリグサ科、タデ科、キク科、マメ科などの種子を大いに食べる。
しばしば穂に止まってつまみとり、モグモグとくちばしを動かして芒を壊し、吹き飛ばして、種子をとり出して呑み込む。
昆虫も食べるが、とくに雛の餌として鱗翅類の幼虫や直翅類などを捕らえる。
参考文献
- 中村登流 1995 ホオジロ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 48.
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- ライフサイクル
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繁殖期は4~9月、年に1~3回、一夫一妻で繁殖する。
巣は地上や藪の小枝の叉に置くように、枯れ草、草の根、枯れ葉などで椀形につくる。
内装には細根、細い葉、獣毛などを使う。雌のみが巣をつくり、雄は雌の巣材集めにつききりである。
雄は巣づくりは行わないが、雌に巣づくりを促すディスプレイをする(山岸,1978)。
1巣卵数は3~5個、抱卵は雌のみが行い、雄は警戒にあたっており、盛んにさえずる(山岸,1978)。
雛は11日ぐらいで孵化し、両親に養われて、11日ぐらいで巣立つ。
抱雛は雌だけが6日ぐらい行い、雄は雌に給餌することはない。巣立った幼鳥はその後25~29日ぐらい親の給餌を受けながら育っていく。
こうした繁殖の1サイクルは約2カ月である(山岸,1978)。
巣立ち雛が不ぞろいの場合、先に巣立ったものを雄、後に巣立ったものを雌が分担する。
2~3で合流するものもあり、また合流しないものもある(山岸,1978)。
参考文献
- 中村登流 1995 ホオジロ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 48.
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- 鳴き声
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チョン、チン、ピーツツ、チョン、チュリー、チョンまたは、チョッ、ツツ、チョッ、ツー、チイ、チュリーと囀り、俗に「一筆啓上仕候」と聞きなしている。
チッチッチン、チッチッチンと鋭い金属性の声で地啼きする。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ホオジロ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 93-95.
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- 特徴的な行動
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茂みの中や草の根元などに枯れ草や細根などを集めて椀形の巣をつくり、白色あるいは青色か紫色をおびた白色に暗色の曲線状の斑紋がある卵を4個産む。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ホオジロ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 93-95.
最終更新日:2020-06-26 キノボリトカゲ
関連情報
- その他
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繁殖期の雄は枝・棒の先や電線などのよく目立つ場所で胸を張り、嘴を天に向けて、テリトリー宣言の歌を囀る。
この歌について昔から「一筆啓上仕り候」という聞きなしが有名であるが、ほかに「源平つつじ白つつじ」「ちんちろ弁慶皿持ってこい」など地方によって聞きなしがある。
参考文献
- 清棲幸保 2005 ホオジロ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 126.
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