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アカヒゲ(Erithacus komadori)の分類 ヒタキ科(Muscicapidae)
アカヒゲ(Erithacus komadori)の概要 ヨーロッパコマドリ属(Erithacus)

アカヒゲ(Erithacus komadori)

【 学名 】
Erithacus komadori (Temminck, 1835)

基本情報

大きさ・重さ

・成長全長:雄 37.9±0.9 mm 雌 37.5±0.8 mm
・自然翼長:雄 75.5±1.6 mm 雌 72.5±1.6mm
・尾長:雄 48.0±2.3 mm 雌 45.6±1.9 mm
・露出嘴峰長:9.6±0.5 mm
・ふ蹠長:雄 28.3±0.7 mm 雌 27.9±0.7 mm
・体重:雄23.0±1.3 g 雌 24.4±2.4 g

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最終更新日:2020-10-15 En

分布

亜種アカヒゲは男女群島、トカラ列島、奄美群島で繁殖するが、大隅諸島でも夏期の観察事例が少数ある。
トカラ列島以北の繁殖集団は基本的に夏鳥で宮古島以南の先島諸島で越冬し、奄美群島の繁殖集団にも一部は渡りをする個体が含まれる。
亜種ホントウアカヒゲは沖縄島北部に留鳥として生息する。非繁殖期には九州本土、朝鮮半島、台湾でも記録がある(亜種不明)。

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保全の取り組み

IUCN記載なし、絶滅危惧IB類EN(環境省)

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学名の解説

博物学者シーボルトが1833年に著した『日本動物誌』で初めて世に知られ、1835年にはテミンクとランギアによって Syluia komadoritoiu という学名で記載されている。しかし彼らはこの鳥を記載する際に、大きなまちがいをおかしてしまった。同じ時期に採集された種子島産のコマドリと混同したために、コマドリには "akahige" を、アカヒゲには "komadori" という種小名を与えてしまったのである。
以来、近縁であるこの鳥たちはそれぞれ相手の名前(学名)と入れ替わったままである。

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和名の解説

アカヒゲという名前は雄の姿に由来している。雄は頭上から上背、羽にかけて橙赤色をしているが、喉から胸部は黒く、まるであごひげが生えているようである。
アカヒゲはまさに「ヒゲのある赤い鳥」である。

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亜種・品種

亜種アカヒゲ E. k. komadori のほか沖縄諸島に分布するホントウアカヒゲ E. k. namiyei と八重山諸島に分布するウスアカヒゲ E. k. subrufus がいる。

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別名・方言名

沖縄本島の北部地域では「アコー」と呼ばれている。これは「赤い」という意味の方言で、背中や羽の色に着目した呼称である。

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人間との関係

アカヒゲはまた古くからの鳴き鳥として重宝されており、薩摩藩では奄美大島、徳之島、喜界島の島民に対して毎年一定数のアカヒゲとズアカアオバトの上納を命じた。そしてその取り扱いを「御鳥掛」という下役人に任せている。また、アカヒゲは藩の御用または許可を得たもののほかは、絶対に藩外に出すことを許さなかったという記録が残されている。

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形態

成鳥の形質

【雄】
前額は幅 5 ㎜くらい黒色で、頭上、後頭、後頸、耳羽は褐色を帯びたオレンジ濃赤色、眼先、眼の下、頬、腮、喉は紅色である。
背、肩羽、腰、上尾筒は褐色を帯びたオレンジ濃赤色、胸は黒色で、秋季は各羽に白色の細い羽縁がある。腹、脇、下尾筒は白色で、脇には黒色の斑紋がある。
風切羽は暗褐色で、初列風切、次列風切の外弁は褐色を帯びたオレンジ濃赤色、内弁の縁は淡赤褐色である。三列風切は全体に褐色を帯びた濃オレンジ赤色である。
大、中、小翼羽、初列風切、小翼羽は濃オレンジ赤色、下雨覆、腋羽は黒色で、腋羽の各羽には白色の羽縁がある。尾は濃オレンジ赤色。嘴色は黒褐色、虹彩は褐色、脚色は褐色、腋羽は赤褐色。

【雌】
額、頭上、後頭、後頸は赤褐色、頬、眼先は淡褐白色で、各羽の羽縁は黒褐色である。腮、喉は白色で、各羽の羽縁は灰黒色である。脇は白色で、各羽の羽縁は灰黒色である。ほかは雄と同様である。

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卵の形質

卵は赤味のあるクリーム色の地に淡赤褐色の不明瞭な斑点が散在し、斑点は鈍端の方に密在するのが常で、時には斑点を欠くものもある。

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生態

食性

主に地表付近をはね歩きながら落ち葉をくちばしでひっくり返し、昆虫やクモ、ミミズなどを捕らえて餌にする。

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ライフサイクル

留鳥性のものでは3月下旬から、夏鳥では4月下旬から繁殖を開始する。産卵期は5月上旬から8月上旬までで、5月中旬と6月中旬に大きなピークがある(樋口ほか, 1990)。

基本的には一夫一妻制だが、2つの巣に平行して給餌しているオスが確認された事例がある。0.2〜0.3 ha程度のなわばりを形成し、雌雄ともになわばり防衛行動をとる。トカラ列島では一繁殖期に3回(沖縄島では4回)まで繁殖に成功することがあるが、通常、つがい関係はその間継続する。
翌年まで雌雄ともに生残した場合にもつがい関係が継続する場合が多い(15/19例)。
造巣と抱卵は雌のみが行う。巣内雛への給餌は雌雄で行い、巣立ち後も給餌を継続する。2回目以降の繁殖を行う場合、ヒナが巣立った直後から雌は造巣をはじめ、雌が抱卵を開始して以降の巣立ち雛の世話は主に雄が行う。

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鳴き声

「ヒー、ヒョリヒョリヒョリ」「ヒィン、ヒョヒョヒョ」「ゥヒー、ゥヒウヒウヒウ」などとさえずる。長音の後にリズミカルな繰り返し部分が入るさえずりの構成は共通しているが、個体差だけでなく、同じ個体でもさえずりごとに微妙な変化を加えることが多い。
亜種間でさえずりに変異があり、亜種アカヒゲの方が繰り返し部分の1シラブルが短い場合が多く、せわしなく単調に聞こえる。雌もさえずる。他の動物が巣に近づいたときなどには「ヒィー」という警戒声を発する。地鳴きは低い声で「ギュィッ」などと鳴く。

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生殖行動

巣づくりの後、交尾行動が倒木や地上で行われ、交尾の際にはメスがオスの上に乗る逆マウントが行われることもある(宮城・樋口, 1990)。

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産卵

抱卵期間は11〜15日で平均12.8±0.8日(N=118; 終卵日を抱卵開始日と仮定)、捕食されなかった場合の孵化率は平均で90.2%(N=529卵)、一腹雛数は平均3.0±0.8羽(N=158)であった。

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子育て

育雛期間は12〜17日と変異が大きいが平均14.2±1.3 日(N=63)であった。トカラ列島に架設した巣箱では、巣立ちに成功した巣の割合は29%で、イタチによると推測される捕食で卵またはヒナが消失した巣が65%、巣の破損が認められて卵が放棄されたものが6%であった。巣箱営巣以外の通常の営巣でも、巣立ちの成功率は同程度であった。捕食以外の要因でヒナが死亡したり、巣が破損することは多くない。

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種・分類一覧