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アカハラ(Turdus chrysolaus)の分類 Turdidae
アカハラ(Turdus chrysolaus)の概要 Turdus

アカハラ(Turdus chrysolaus)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Turdus chrysolaus Temminck, 1832

基本情報

大きさ・重さ

成鳥全長:約 23 ㎝

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最終更新日:2020-08-29 En

渡り区分

北海道以北および本州の山地(標高 50 m以上)には夏鳥として春は4月上中旬から5月上中旬ごろに渡来する。
10月中下旬頃に渡去し、本州の平地および四国以南には旅鳥または冬鳥として、秋は10月下旬から11月上旬頃に渡来し、春は4月下旬から5月上旬頃に渡去するものが多い。
農林省の標識試験の結果では夏季静岡県で放翔したものが同年の秋に岐阜県で獲られた。

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最終更新日:2020-08-29 En

分布

繁殖地は本州中部からサハリン、千島列島にかけてで、アカコッコやクロツグミと同様、分布は限られている。
本州中部では山地帯上部から亜高山帯の森で繁殖する。急峻な地形よりもなだらかな斜面や平坦地の林でよく見られ、富士山麓、八ヶ岳山麓、北アルプス上高地などの高原の、カラマツ植林地にも多い。
東北地方以北では低標高地でも繁殖し、北海道では平地の林でも普通に見られる。

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最終更新日:2020-08-29 En

生息状況

低危険種LC(IUCN)、環境省記載なし

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最終更新日:2020-08-29 En

学名の解説

種小名はギリシャ語の金に由来し、金色のツグミの意。

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最終更新日:2020-08-29 En

亜種・品種

2亜種に分けられ、千島列島に産する大型の亜種はオオアカハラ T. c. orii と呼ばれる。

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最終更新日:2020-08-29 En

人間との関係

「日露渡り鳥条約」「日中渡り鳥協定」指定種。

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最終更新日:2020-08-29 En

形態

成鳥の形質

【雄】
額、頭上、後頭、後頸は赤錆色を帯びたオリーヴ褐色で、各羽の羽軸付近は暗色である。眼先、眼の下は黒褐色、耳羽はオリーヴ褐色で、羽軸は淡色である。
腮、喉はオリーヴ暗褐色、頬と腮と喉の両側は暗褐色で、各羽縁は赤錆色である。
背、肩羽、上胸、腰、上尾筒は赤錆色を帯びたオリーヴ褐色、下胸、脇、腹側は狐色で、胸の中央は白色を帯び、腹は白色である。
下尾筒は白色で、各羽の基部の両縁にはオリーヴ褐色の幅の広い縁がある。
下雨覆、腋羽は淡オリーヴ褐色で、各羽端は白色である。初列風切と次列風切は暗褐色で、赤錆色を帯びたオリーヴ褐色の外縁があり、三列風切、大、中、小雨覆は赤錆色を帯びたオリーヴ褐色である。
初列雨覆、小翼羽は暗褐色で、赤錆色を帯びた灰オリーヴ褐色の羽縁がある。尾は暗褐色で、中央の1対と他の尾羽の外弁とは赤錆色を帯びた灰オリーヴ褐色である。
春季は最外側の尾羽の内弁の先端に白色斑のあるものが多い。
嘴色は暗褐色、下嘴の基部は褐色を帯びた黄色、虹彩は褐色、脚色は淡褐色、脛羽はオリーヴ灰褐色。

【雌】
頭上、後頭、後頸、眼先は雄よりも淡色。
腮、喉は白色で、オリーヴ暗褐色の小さな軸斑があり、腮、喉の両側では軸斑の幅が広い。胸、脇の狐色は淡く、背、腰も淡色である。

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最終更新日:2020-08-29 En

幼鳥の形質

頭上、後頭、後頸、耳羽の各羽には狐色の軸斑がある。
背、肩羽は同様であるが、斑の幅が広く、明瞭である。
腮、喉、胸、腹の各羽の先端にはオリーヴ暗褐色の班がある。
大雨覆の先端には淡狐色の斑がある。他は成鳥と同様。

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卵の形質

卵は美しい青緑色の地に、赤褐色または暗褐色と淡紫色との斑紋が一面に散在する。
斑紋は極く細かいもの、やや大きなものなどがあり、あるものは密に、あるものは疎らに散在するが、斑紋は鈍端の方に密在するのが常である。地色も濃淡いろいろである。

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最終更新日:2020-08-29 En

生態

食性

地上の落ち葉をはねのけて昆虫やミミズをあさるが、木の実も好み、枝に残ったカキの実をついばんだりする。雛にはおもにミミズを与えるが、昆虫やクモ類も与える(渡辺, 1975)。

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最終更新日:2020-08-29 En

ライフサイクル

繁殖期は5月中旬から8月、年に1回の繁殖がふつう。林内というより林縁や道路わきの落葉広葉樹林、アカマツ、カラマツ、コメツガ、オオシラビソなどの亜高山針葉樹の枝先、または幹に近い枝上に巣をつくる。
巣は高いもので地上から 11 m、低いもので 95 ㎝、多くは 2 m前後に(渡辺, 1975)、樹枝と草本の根を主材に、サルオガセや枯れたマツ葉やシダの葉などを交えて椀型につくる。
1巣卵数は3〜5個、1日1卵ずつ産卵し、雌だけが抱卵し、抱卵日数は約14日(羽田・渡辺, 1969)。
雛への給餌は雌雄共同で行い、孵化後約13日で巣立つ(羽田・渡辺, 1969)。

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最終更新日:2020-08-29 En

鳴き声

さえずりは、4〜8月にオスのみが「キョロン、キョロン、ツリリ」とゆっくりした大声で行う。同一個体でも1回目の「キョロン」の方が高音な場合と、2回目の「キョロン」の方が高音な場合とがあるが、それぞれのさえずり方をしばらく繰り返す。さえずりは早朝と夕方によく聞かれる。
同じさえずり方を繰り返すことや、さえずりの種類の少ないことでクロツグミとは区別されるが、近年中国山地で繁殖が確認されたシロハラのさえずりは本種のそれとよく似ており、注意を要する。
地鳴きは「キョッ」あるいは「ツー」と聞こえ、ほかのツグミ類と共通だが、クロツグミの地鳴きよりは震え声で、警戒時には激しく「チャッチャッチャッ」と鳴く。

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最終更新日:2020-08-29 En

生殖行動

4月中旬に雄が繁殖地に渡来し、直径 300 m以上もある広いなわばりを形成し、木の梢で早朝から大きな声でさえずる(渡辺, 1975)。
雌は雄に遅れて渡来し、なわばりをもつ雄と一夫一妻の番になる。冬は単独または小群でいることが多く、人家付近にも現れ、餌台にもよくやってくる。

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最終更新日:2020-08-29 En

子育て

抱雛はわずかに雄も行うが、ほとんどが雌の仕事である。雛への給餌は、雄が約53%を受け持つという報告がある。

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最終更新日:2020-08-29 En

種・分類一覧