- 解説一覧
- ライチョウ(Lagopus muta)について
ライチョウ(Lagopus muta)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Lagopus muta (Montin, 1781)
目次
基本情報
- 大きさ・重さ
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・全長:36.9 cm(37.8~35.0)
・翼長:18.5 cm(19.7~17.5)
・尾長:11.5 cm(12.1~10.8)
・嘴峰長:17 mm(18~15)
・ふ蹠長:34 mm(37~30)
・体重:604.1~424.9 g
参考文献
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- 分布
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北アメリカやユーラシア大陸の北極圏および高山帯などのツンドラ地方に広く分布しており、23亜種に分かれている(Cramp 1980)。
中緯度地方の個体群は、氷河期の遺存種としてロッキー山脈、ピレネー山脈、ヨーロッパアルプス、日本アルプスなどの高山帯に隔離分布している。
日本では、北アルプスと南アルプスを中心に、頚城山塊、乗鞍岳、御岳など周辺の山岳にも繁殖分布している。
参考文献
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- 保全の取り組み
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近年ライチョウの生息する高山帯においてヒナや卵の捕食者であるハシブトガラス、ハシボソガラスの増加や(小林・中村 2006)、キツネやテンなどの哺乳類の捕食者が高山帯に進出している可能性が指摘されている (中村 2007)。
特に南アルプスを中心としてライチョウの個体数減少が危惧されており、早急な保護の対策が求められている。
海外の個体群に比べ、日本では営巣成功率は高いが、ヒナの死亡率が高い傾向があるため、ヒナの生存率を上げる取り組みが保護対策上有効であると考えられる。
保護対策案として、ライチョウの生息地に大型のケージを設置し、親子連れのライチョウを誘致することで、ヒナの生存率を高める取り組みが計画されている。
参考文献
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- 学名の解説
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種小名は無声のという意。
参考文献
- 吉井正 2005 ライチョウ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 531.
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- 別名・方言名
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タケドリ、ガンチョウ、ライノトリ
参考文献
- 吉井正 2005 ライチョウ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 531.
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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キジ目 ライチョウ科
参考文献
- 吉井正 2005 ライチョウ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 531.
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- 人間との関係
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俳句では夏の季語。後鳥羽院「白山の松の木陰にかくろへてしづかに棲める雷の鳥かな」(『夫木集』20巻)、松尾芭蕉「雷鳥のはつねは觜を鳴るらん」。
ライチョウに危害をくわえると暴風雨が起こるという言い伝えもある。富山県・長野県・岐阜県の県鳥。1955年に特別天然記念物に指定。
参考文献
- 吉井正 2005 ライチョウ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 531.
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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日本の亜種ライチョウ L. muta japonicas は、羽毛の部位により年3回換羽を行う(西野・中村 2011)。
頭、首、胸、背、腰、上尾筒といった体羽上面を覆う羽については、年3回換羽し、高山環境季節変化に合わせ、保護色になると考えられる。
初列・次列・三列風切羽、小翼羽、尾羽などの飛翔羽および体羽下面を覆う腹、足の白い羽については年1回換羽する。
成鳥夏羽のオスは、体羽の上面は黒褐色であり、額、喉、腹、背と翼の大部分は白い。
メスは翼の大部分と下腹部は白く、ほかは黒褐色、橙黄色、白色の斑模様。
秋羽は、雌雄ともに体の上面が灰色になる。冬羽は、雌雄ともに全身白く、オスには黒い過眼線が入る。
年齢の識別は、1才の秋に初列風切羽の換羽が終わるまで、初列風切のP8とP9の羽軸における黒い斑の着色度合いで識別できる(Weeden 1967)。
羽軸の着色度合いがP8=P9、もしくはP8>P9の場合は成鳥、P8<P9となっている場合は若鳥である。
参考文献
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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体の上面は黒褐色で各羽には黄味がかった赤錆色の横斑があり、各羽端には白色の斑がある。
上胸は黄味がかった赤錆色で、黒色の横斑があり、各羽端には白色の斑がある。
体の下面は黄味がかった白色である。風切羽は褐色を帯びた石盤灰色で、黄味がかった淡赤錆色の斑紋と斑点があり、内弁には白色の縁がある。
尾は黒褐色で、黄味がかった淡赤錆色の横縞がある。
参考文献
- 清棲幸保 1954 ライチョウ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 888-892.
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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2006~2007年に乗鞍岳で調査した結果では、一腹卵数は平均6.04卵 (4~7 卵)であった。
日本の個体群はイタリアアルプス (6.8卵; Scherini et al. 2003)、カナダ (8.7卵; Cotter 1999)、スバールバル諸島 (7.1 卵; Steen & Unander 1985)などの海外の個体群と比べて一腹卵数は最小である。
卵サイズは、約 45 mm × 32 mm。卵色は、黄色地に細かい褐色の斑点が密に入っている。
参考文献
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生態
- 生息環境
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乾燥したツンドラや高山帯に生息し、矮性低木、スゲなどの草本、地衣類・コケ類などが優先するカーペット状の植生や岩肌などがモザイク状に存在する環境に生息する(Cramp 1980)。
日本では、標高約 2500 m以上の高山帯で、ハイマツが優先する環境に生息する。
繁殖期には背の低いハイマツがパッチ状に分布し、その周辺に風衝矮性低木群落が発達しているようなモザイク状の環境を好む。
参考文献
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- 食性
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主に高山植物を主食とするが、季節に応じて餌内容が変化する(小林・中村 2011)。
4月にはガンコウランやコケモモなどの矮性常緑低木が主な餌である。
5、6月には雪渓上に風で吹き上げられた昆虫類の採餌行動も多くみられる。
夏から秋にかけては、矮性落葉低木の若葉や花、種子や実などさまざまな種類の餌を食べる。
冬季は亜高山帯で越冬しており、ダケカンバの冬芽が主な餌である。
動物質では、ヒラタアブ、ガガンボ、ハチ、ガの幼虫などを食べる。
参考文献
- 清棲幸保 1954 ライチョウ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社. 888-892.
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は4~8月、一夫一妻または、一夫多妻で繁殖する。巣はハイマツなどの下の地上に浅い窪みを掘り、枯れ葉や雌の胸毛などを敷く。
窪みは雄が掘りはじめ、やがて雌が加わる(Cramp & Simmons, 1980)。
1巣卵数は5~10個、産卵期には雌が離れるときは、卵を葉などで覆い隠す。
抱卵は雌のみが行い、雛は20~23日ぐらいで孵化する。雄はなわばり一帯が見渡せるところで見張りをする。
孵化直後の雛はクリーム色と茶色の幼綿羽に覆われ、12時間ぐらい雌雄に抱かれ、羽毛が乾くと巣から離れる。
早成性の離巣性である。雌が雄の世話をし、雛は孵化後3週間ほどで 50 mぐらい飛べるようになる。
雌は5週間ほど抱雛する。孵化後80日ぐらいで独立する(大町山岳博物館, 1964)。
参考文献
- 中村登流 1995 ライチョウ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 235.
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- 鳴き声
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繁殖期のオスは「ゴァォー」と喉を鳴らして鳴き、両翼を下げ地面に引きずるようにして頭を突出して求愛ディスプレイ を行う。メスは「クゥクゥ」と鳴く。
参考文献
最終更新日:2020-06-08 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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繁殖期には雄のなわばり活動によって分散する。
なわばりの広さは、番になれない雄で 0.6 haぐらい、番になった雄で 1 haぐらい、一夫二妻の雄では 1.5 haぐらいである(Cramp & Simmons, 1980)。
なわばりの中で番を形成し、営巣する。なわばりは雛が孵化することになくなり、雄は雄どうしの群れ生活に帰る。
そのため、家族は雌親と雛からなる母子群である(平林, 1992)。
9~10月には家族群も解消され、群れ生活になる。冬が厳しくなると群れ集合は大きくなり、100羽ぐらいになることもある(Cramp & Simmons, 1980)。
群れ塒をとり、日中は群れで採食する。
雄のなわばり行動は飛翔ディスプレイとそれに続く戦い行動で、飛翔ディスプレイは強いはばたきで上昇し、黒色の尾羽を開いて滑空しつつ下り、下りると首を伸ばし、眼の上の肉冠を立て、尾羽を半開して立てて相手に向かって突進する。
雄の求愛ディスプレイは華やかなもので、尾羽を扇形に開いて立て、翼を下げ、眼の上の肉冠を立てておじぎをしつつ雌の周りを回る。
参考文献
- 中村登流 1995 ライチョウ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 235.
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