- 解説一覧
- カルガモ(Anas poecilorhyncha zonorhyncha)について
カルガモ(Anas poecilorhyncha zonorhyncha)
- 【 学名 】
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Anas poecilorhyncha zonorhyncha Swinhoe, 1866
基本情報
- 大きさ・重さ
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・全長:515~645 mm
・翼長:245~292 mm
・尾長:79~102 mm
・嘴峰長:45~49 mm
・ふ蹠長:41~51 mm
・体重:750~1156 g
・卵:長径 50~59.9 mm × 短径 38~45 mm 平均長径 55.9 × 短径 42.8 mm 重量 48.7 g位
参考文献
- 清棲幸保 1955 カルガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 554-556.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 分布
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アジア東部と南東部に分布し、3亜種に分かれる。
日本でみられる A. p. zonorhyncha は、アムール地方、サハリン、中国、朝鮮、日本に分布する。国内ではほぼ全国で繁殖し、本州以南では留鳥のものが多い。
標識調査によりサハリンや中国大陸に渡るものがいることが明らかになっている。
参考文献
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 別名・方言名
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クロガモ、タガモ、ドロガモ、ナツガモ
参考文献
- 吉井正 2005 カルガモ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 141.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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カモ目 カモ科
参考文献
- 吉井正 2005 カルガモ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 141.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 人間との関係
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繁殖期、東北地方におけるカルガモは湛水直撒栽培に対して、播いた種籾を食害するほか、圃場の表面を踏みつけることによって、種籾を地中深くに埋め込み、出芽率を低下させるという害を引き起こす。
カルガモの生息密度は人家に近いほど、すなわち狩猟圧の低い場所ほど高く、そして生息密度が高いほど食害率が高いことが明らかになった。
この結果をもとに、カルガモの食害に関するハザードマップが作成されている。
参考文献
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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雌雄同色。額、頭上、後頭は暗褐色で各羽には淡褐色の縁がある。
眼の上にはクリーム白色の幅の広い眉斑があり、眼先から眼の後方まで暗褐色の過眼線が走っている。
過眼線の下方および腮、喉、頸はクリーム白色で、上嘴基部の下方から暗褐色にクリーム白色の小斑の散在する幅の広い線が耳羽を過ぎて過眼線の後方まで走っている。
後頸は暗褐色で、各羽にはクリーム白色の縁があり、翕、肩羽は暗褐色で、各羽には赤錆色を帯びたクリーム色の縁がある。
背、腰、上尾筒は黒褐色である。胸、腹、脇は暗褐色で、各羽には赤錆色を帯びたクリーム色の縁があり、下腹は暗褐色、下尾筒は黒褐色である。
下雨覆、腋羽は白色。風切羽は暗褐色で、次列風切の外弁は緑青色の光沢がある紫色で、羽端には白色、次には黒色の帯がある。
三列風切の外弁の縁は白色である。大、中、小雨覆、初列雨覆、小翼羽は暗褐色で、大雨覆の各羽端には黒色の帯がある。
尾は暗褐色。嘴色は黒色で先端近くには黄色の横帯があり、先端は黒色である。
虹彩は黄褐色、脚色はオレンジ赤色、趾膜は褐色を帯びている。尾羽の数は16~20枚である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 カルガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 554-556.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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体の下面の各羽には淡褐色の幅の広い羽縁があり、全体として暗褐色に淡褐色の縦斑を現している。
下觜は黄色で、黒色の小斑がある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 カルガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 554-556.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵は象牙様の白色で斑紋を欠き、ときには淡緑色や淡褐色を帯びるものもある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 カルガモ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 554-556.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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湖沼、沼沢、水田、湿地、干潟、河川などに生息する。標高の低い平野部に生息し、特に平地の水辺に多い。
繁殖期の4月下旬~7月になると、つがいごとに別れて、平地の沼沢、河川、池畔などの草原やヨシ原に営巣する。
河川の中洲など島状になっているところではコロニー状に営巣することもある。
越冬期には、湖沼、河川、池など、ほとんどの水域で見ることができる。また、マガモなどと一緒に沿岸域でも見られるようになる。
参考文献
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 食性
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食性は主に植物食で、稲などをはじめ、さまざまな植物の種子や葉を食べ、採食場所に応じて、こしとり、ついばみ、逆立ちなどの行動を使い分ける。
水田における昼夜別の生息密度と行動の違いを調査したところ、昼夜別の生息密度は、昼よりも夜のほうが有意に高かった。
また、昼の行動では採食が67%、休息が22%であるのに対し、夜の行動では採食が94%、休息が3%であった。
したがって、カルガモは夜の水田を高い頻度で採食地として利用していると考えられる。
さらに、昼夜における1群れあたりの個体数の割合に違いが認められた。
すなわち、夜は2羽(つがい)の割合(63%)が昼(41%)より高いことに加えて、3羽以上の群れの割合は低かった。
参考文献
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は4~7月、一夫一妻で繁殖する。番は12月から翌年の2月ごろにかけて形成され、抱卵期に解消される。
巣は草むらや藪の下などにつくる。浅い窪みに草の葉などを敷いた皿形で、雌だけでつくり、産座には抱卵が進むにつれて自分の綿毛を加えていく。
1巣卵数は10~12個、雌のみが抱卵し、雛は24~26日ぐらいで孵化する。
雛は厚い幼綿羽で覆われ、早成性の離巣性である。雌のみが雛の世話をする。雛が急流を泳ぎ渡るときは、親の上流側に密集していく。
参考文献
- 中村登流 1995 カルガモ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 13.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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繁殖期には番となって分散するが、小さい島や湿地などで、しばしばコロニー状に多数の番が集まって営巣することがある。
番の形成にかかわる雌をめぐって雄のグループディスプレイは12月ごろから翌年の2月ごろまで見られ、マガモの行動に似ている。
冬は群れをつくり、大きい海水面では大群になる。
参考文献
- 中村登流 1995 カルガモ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. 13.
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ
- その他生態
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繁殖期の特異的な行動として、カルガモのメスによる子殺しがある(Shimada et al. 2002)。
千葉県の谷津干潟で、1羽のヒナを連れたメスがカルガモのヒナ8羽、オカヨシガモのヒナ3羽を攻撃して殺した例が観察された。
都市域のような繁殖地の限られる場所では繁殖密度が高くなり、親の攻撃性が高まるために子殺しが起きると考えられている。
参考文献
最終更新日:2020-06-05 キノボリトカゲ