- 解説一覧
- ノビタキ(Saxicola torquatus)について
ノビタキ(Saxicola torquatus)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Saxicola torquatus (Linnaeus, 1766)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:10~11 mm
・翼長:64~71 mm
・跗蹠:21~23.5 mm
・尾長:42~55 mm
・体重:12~16 g
・卵:長径 19.4~20.5 mm×短径 12.5~14.3 mm 平均長径 18.1 mm×短径 13.6 mm 重量 1.4~1.9 g位
参考文献
- 清棲幸保 1955 ノビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 304-306.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区、エチオピア区。ユーラシア大陸の中・低緯度地方とアフリカ大陸に分布する。
ユーラシア大陸のものは、冬はアフリカ大陸東部、アラビア半島、インドに渡ってすごす。
日本では本州中部以北で夏鳥として繁殖し、西南日本では渡り期に見られる。繁殖地では、4~10月におよぶ比較的長い期間見ることができる。
参考文献
- 中村登流 1995 ノビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 200.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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スズメ目 ヒタキ科
参考文献
- 吉井正 2005 ノビタキ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 370.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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【雄】
額、頭上、後頭、後頸、眼先、耳羽は黒色で、秋季は眼先以外の各羽に赤褐色の幅の広い縁がある。
腮、喉、頬は黒色で、秋季は各羽に淡褐白色の羽縁がある。
頸側には白色の斑があり、秋季は各羽縁は赤錆色を帯びた褐色である。
背、肩羽、上腰は頭上と同様、下腰、上尾筒は白色で、秋季は各羽に赤錆色を帯びた褐色の幅の広い羽縁がある。
胸は赤錆色を帯びた褐色で、秋季は各羽に淡色の羽縁があり、腹、脇、下尾筒は淡い赤錆色である。
風切羽は黒褐色で、秋季は初列風切と次列風切に赤褐色の外縁がある。
三列風切の外弁の基部近くは白色で、秋季は赤褐色の幅の広い羽縁がある。
大雨覆の外側のもの及び、中、小雨覆、初列雨覆、小翼羽は黒色で、赤錆色の羽縁がある。
大雨覆の内側のものは白色で、秋季は各羽に赤褐色の細い羽縁がある。
尾は黒色で、秋季は羽端に赤錆色を帯びた白色の縁があり、最外側の尾羽には赤錆色を帯びた白色の縁がある。
下雨覆、腋羽は黒色で、白色の羽換がある。嘴色は黒色、虹彩は褐色、脚色は黒色、脛羽は赤錆色を帯びた褐色。
【雌】
額、頭上、後頭、後頸、耳羽は暗褐色で、秋季は各羽に淡赤錆色の羽縁がある。
眼先、頸、腮、喉、頸側は赤錆色を帯びた白色で、背、肩羽、腰、上尾筒は頭上と同様である。
胸は赤錆色、腹、脇、下尾筒は淡赤錆色である。
翼は暗褐色で、初列風切、次列風切、三列風切、大雨覆の外側のものおよび、中、小雨覆、初列雨覆、小翼羽には淡赤錆色の羽縁があり、大雨覆の内側のものは白色である。
下雨覆、腋羽は赤錆色を帯びた白色。尾は暗褐色で、羽端は赤錆色を帯びた白色である。
最外側の尾羽には赤錆色を帯びた白色の外縁がある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ノビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 304-306.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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【雛】
孵化直後の雛は肉色の裸体のままで眼の上、後頭、上膊、前膊、背などの羽域に灰褐色の初毛が生えている。
【幼鳥 雄】
頭上は暗褐色で各羽には淡バフ色の軸斑がある。後頸も同様だが軸斑の幅は広い。
背も同様だが、軸斑は広く楔状をなし、バフ色は頭上よりも濃い。
腰の下部と上尾筒とは赭色で、各羽の基部は暗灰色となっている。尾は雌成鳥と同じ。
翼も雌成鳥のものと似ているが、白色部はより狭く、小雨覆の先にはバフ色の楔状斑がある。
眼先はバフ色。頬および耳羽は暗褐色でバフ色の軸斑がある。
腮・喉は淡バフ色で各羽の先にはごく小さい暗色斑があり、胸はバフ色でやや大きな暗褐色斑がある。外は外側のものと同じ。
【幼鳥 雌】
雄と同様であるが三列風切には白斑がなく、外弁基部にバフ色斑があるのみである。
また内側の大雨覆も先にバフ白色斑がある。外は外側と同じ。
【第1回冬羽】
幼鳥は8~9月に体羽・小雨覆・中雨覆・大雨覆・三列風切のみを換羽して第1回冬羽となる。
新たに生じた羽毛は雄雌それぞれ冬羽とは異ならない。
しかし背面の羽毛の基部の黒色は多少成鳥のものより淡く、また各羽の褐色の縁の幅が広い様である。
そのためこの羽衣の雄は見た目がやや雌成鳥に似ている。また風切および尾は換羽しないため、多少褐色を帯びている。
【第1回夏羽】
換羽はない。羽縁の消失により成鳥夏羽と同じ羽色となる。
しかし雄は黒色はやや淡く、羽縁の消失のやや不完全な個体は、この第1回夏羽のものであろう。
【第2回夏羽】
幼鳥は第2年秋の全身の換羽で成鳥冬羽となる。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ノビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 304-306.
- 山階芳麿 1980 ノビタキ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 209-300.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵は淡緑青色の地に淡褐色と淡紫色との不明瞭な斑点が散在し、斑点は鈍端に冠形または輪形に密在する。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ノビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 304-306.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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海岸から高山帯におよぶ幅広い地域の草原にすむ。
本州中部では山地草原、あるいは亜高山帯にある高山草原で見られ、東北地方から北海道では海岸草原、泥炭草原、牧草地、高山帯のハイマツの間の高山草原などで見られる。
渡り期には各地の水田、河川敷、湖沼縁の湿地などに現れる。
繁殖地の草原では、比較的露出土の多い荒れ地状の部分や、流土などで傷ついた部分を好む(中村, 1963)。
参考文献
- 中村登流 1995 ノビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 200.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- 食性
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草原の中で突出している灌木の枝の上や枯れたススキなどの茎の上、それもよく目立つ頂に止まり、そこから出撃するように飛び立って昆虫を捕える。
空中で飛びついたり、地上に向かって飛び降りたり、監視場所から急襲する。
虫から少し離れた位置から、空間を隔てて一気に迫り、不意を打つやりかたで捕える。
このよな採食行動をとるので、草原では最も目立つ鳥である。
これは、ヒタキ類のフライングキャッチ法と同じ系統の採食方法である。
同じ草原性の鳥でも、草の下の地上を潜り歩く方法で採食するホオジロ類とは対照的なメンバーといえる。
参考文献
- 中村登流 1995 ノビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 200.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は5~8月、一夫一妻で繁殖する。
巣は草むらの中の窪みや石の下の窪みなど、地上の隠されたところにつくり、たいてい土くれ、石、草などからなるひさし型のカバーがある。
牧場では、しばしば牛の踏みつけの跡の窪みが利用される。
あまりい草が茂っていない早い季節に巣づくりをするが、この点がヒバリとともに、同じ草原性のホオジロ類より繁殖をより早く始める所以である。
巣は椀形で、外装は草の茎や枯れ葉、根などでつくり、内装は細い茎や根、植物の綿毛、獣毛、羽毛などでつくる。
巣づくりは雌のみが行い、雄は雌について回り、メイトガードに終始する。
1巣卵数は3~7個、雌のみが抱卵し、雛は14日ぐらいで孵化し、両親の給餌を受けて12~14日で巣立つ(香川, 1975)。
孵化後1週間ほど抱擁をするが、これは雌のみが行う。しばしば第2繁殖をする(香川, 1975)。
参考文献
- 中村登流 1995 ノビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 200.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- 鳴き声
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灌木や矮小樹または草の穂先などにとまってヂャッ、ヂャッ、またはヒ、ヒ、ヒ、チャッ、チャッと体を上下に振動させて啼く。
6月から7月頃までの囀鳴期にはグゼリ様の低い声で囀り、ときどきヂャッ、ヂャッと啼く。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ノビタキ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 304-306.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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中立地帯では雄どうしは背を向けあって 1~10 m空けて止まり、尾羽を開閉したり、上下にゆすったりして威嚇のディスプレイをする(香川, 1975)。
雄の求愛ディスプレイは雌の前の地上で行われる華麗なもので、空中にはね上がっては下りることの繰り返しで、翼を半開にして白斑を見せながら、飛びあがった頂点で逆立ちをする。
渡り期には単独か小群で現れる。
参考文献
- 中村登流 1995 ノビタキ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 200.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ