- 解説一覧
- ユリカモメ(Chroicocephalus ridibundus)について
ユリカモメ(Chroicocephalus ridibundus)
- 【 学名 】
-
Chroicocephalus ridibundus (Linnaeus, 1766)
基本情報
- 大きさ・重さ
-
・成長全長:約 40 cm
・自然翼長:294 mm(258~340)
・尾長:115 mm(92~150)
・露出嘴峰長:34.7 mm(20.3~43.2)
・全嘴峰長:46.9 mm(29.9~59.6)
・ふ蹠長:44.5 mm(30.4~53.0)
・体重:289 g(200~447)
参考文献
最終更新日:2021-03-31 ハリリセンボン
- 分布
-
繁殖地はユーラシア大陸北部に広く分布する。東アジアの越冬地は、中国南部・朝鮮半島・東南アジアで、日本では全国で越冬する。特に越冬数の多いのは北九州から関東にかけての都府県である。
参考文献
- 須川恒 1996 ユリカモメ, 日高敏隆(監修) 樋口広芳、森岡弘之、山岸哲(編) 日本動物大百科 3:鳥類Ⅰ. 平凡社. p. 112.
最終更新日:2021-03-31 ハリリセンボン
- 生息状況
-
1970年代から、国内の多くの地域でユリカモメの越冬地の拡大や越冬数の増加が起こっている。
京都市では、かつてはユリカモメは越冬していなかったが、1974年から市内の鴨川や桂川に越冬するようになった。近年では、最大1万羽が越冬するまでになった。
標識調査の結果、日本に渡来するユリカモメの繁殖地と判明したカムチャッカ半島においては、近年新たな集団繁殖地が形成され、また営巣数が増加している。
クラマビツキー湖付近には、1967年に初めて小さな集団繁殖地が見つかり、1970年代にその営巣数が増加して数万つがいが営巣するまでになった。
このように営巣地で産出される数が増加して、日本への渡来数が増加したことが、越冬地の拡大や越冬数増加につながっていることがわかってきた。
参考文献
- 須川恒 1996 ユリカモメ, 日高敏隆(監修) 樋口広芳、森岡弘之、山岸哲(編) 日本動物大百科 3:鳥類Ⅰ. 平凡社. p. 112.
最終更新日:2021-03-31 ハリリセンボン
- 人間との関係
-
『伊勢物語』の都鳥は本種のことで、東京都の鳥である。
参考文献
- 2005 三省堂世界鳥名事典 - 書籍全体, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. .
最終更新日:2021-03-31 ハリリセンボン
形態
- 成鳥の形質
-
体の上面は褐色で、淡色と暗色との斑がある。体の下面は白色で、下頸、喉、胸側は褐色を帯びている。
大雨覆は淡灰色、初列風切の第2羽の外弁は黒色、内弁の黒色の縁は成鳥より幅が広く、羽軸は黒色である。第3羽の外弁は黒褐色で、第3羽以下の外弁には先端近くに暗褐色の縁がある。
尾は羽端に黒褐色の幅の広い帯があり、外弁には白色の細い縁がある。嘴色は肉色で、先端近くは黒褐色、脚色は淡肉色をしている。
第2年目の幼鳥の冬羽は成鳥の冬羽に類似するが、風切羽、尾は第1年目の幼鳥の儘で、小雨覆は暗褐色を呈し、各羽には白色の縁がある。
孵化直後の雛は全身に幼綿羽が密生し、体の上面は暗クリーム色で黒褐色の斑紋や斑点が散在し、前額に斑点が1箇と頭の中央に数箇とあり、頭の周囲から後頭まで縁どるように斑点が並んでいる。
喉の両側には1対の斑がある。後頸から上背までの中央には線が一条あり、その外側には体側に近く二重になった曲線が走っている。
体の下面はクリーム色で、胸の中央は色が淡く、喉の幼綿羽の基部は赤錆色を帯び、それ以下の幼綿羽の基部は暗褐色である。
雌雄同色。成鳥の冬羽は頭部が白くて、嘴は赤く、黒い瞳の後ろに黒褐斑がある。夏羽は、頭部が黒褐色で嘴は暗赤色となる。
参考文献
最終更新日:2021-03-31 ハリリセンボン
- 卵の形質
-
長径:46~60 mm×短径 34.3~42.1 mm
平均長径:52.6 mm×短径 37.1 mm
卵はクリーム灰褐色、灰緑色、オリーヴ緑色、クリーム色、オリーヴ褐色、褐色、淡青色などの地に黒褐色の斑紋や斑点と灰紫色の斑点とが散在し、ときには淡青色で斑紋を欠くものや赤褐色に近い地色のものもある。
参考文献
最終更新日:2021-03-31 ハリリセンボン
生態
- 生息環境
-
水辺植物が繁茂した湖沼周辺や河川沿いの湿地で繁殖する。渡り期や越冬期は、他のカモメ類と異なり、海辺だけでなく河川や湖沼などの内陸部にも多く分布する。
昼間河川や湖沼で採食し、夜間は海や湖などの開水面で集団で過ごすものが多い。池傍の屋根の上で就塒することも知られている。稀に迷鳥として山地に飛来することもある。
参考文献
最終更新日:2021-03-31 ハリリセンボン
- 食性
-
水生昆虫や小魚など水生の餌を採食することが多いが、クモ類、ムカデ、鳥類の卵、ネズミのほか、人が与えるパンくずやゴミ、残飯のようなものまで、多様な餌を採食する雑食性。
小さな餌をピンセットのようにつまんで食べることもできるし、潜水して小魚を捕らえたり、空中を飛ぶトンボなどを大口を開けて捕まえたりと、ジェネラリスト(なんでもや) の食生活をする。
参考文献
最終更新日:2021-03-31 ハリリセンボン
- ライフサイクル
-
ユリカモメは湖沼や河川周辺の湿原などに集団で営巣する。
日本に来るユリカモメは繁殖地であるカムチャツカ半島に5月中旬に渡り、枯れ茎や枯れ葉を地上に積み上げ直径 20~30 cmの巣をつくり、5月末に産卵を開始する。
1巣に1~4卵(ふつう3卵)を産み、20~24日間抱卵する。7月末にはほとんどが巣立ち、10月にはすべての個体がカムチャツカを離れる。
国内の越冬地には、8月には少数個体が渡来するが、越冬数が増加するのは11月に入ってからである。
河川敷内や湖沼の浅瀬で、小群または大群で採食し、午後には中州などに集結し、整羽や休息後いっせいに飛び立ち、湖上や海上のねぐらに向かう。
京都市内の鴨川などですごしたユリカモメは、普通は東山を越えて琵琶湖で夜をすごす。
参考文献
- 須川恒 1996 ユリカモメ, 日高敏隆(監修) 樋口広芳、森岡弘之、山岸哲(編) 日本動物大百科 3:鳥類Ⅰ. 平凡社. p. 112.
最終更新日:2021-03-31 ハリリセンボン
- 鳴き声
-
グヮオー、グヮオーまたはギャオー、ギャーオーと啼き、主として飛翔中に啼く。
繁殖地で巣に近づくとキッ、キッ、キッ、キッ、クラ―と烈しい声で啼き叫びつつ付近の上空を飛び回り、時には人に襲う様に飛掛かることもある。
参考文献
最終更新日:2021-03-31 ハリリセンボン
- 特徴的な行動
-
年中群れで生活し、大群にもなる。繁殖期にはコロニーに集合し、数百、数千番の大コロニーも知られる。
コロニーの中心部は高密で、なわばりは 1 ㎡ぐらいである。コロニー内の番は小グループにかたまる。また、繁殖できないものはクラブに集まる。
番の形成の集会は数羽が集まってコーリングしつつ上半身を上下させたり、飛び上がってそのまま舞い上がり、旋回して下りたりするディスプレイである。
草本の茎を巣材として、高さ 12 cm、直径 23 cm、内径 15 cm程度の巣を造る。
参考文献
- 中村登流 1995 ユリカモメ, 中村雅彦、中村登流(著) 原色日本野鳥生態図鑑:水鳥編. 保育社. p. 123.
最終更新日:2021-03-31 ハリリセンボン
関連情報
- その他
-
「日米渡り鳥条約」「日露渡り条約」「日中渡り鳥協定」指定種。
参考文献
- 2005 三省堂世界鳥名事典 - 書籍全体, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. .
最終更新日:2021-03-31 ハリリセンボン