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- ハチクマ(Pernis ptilorhynchus)について

ハチクマ(Pernis ptilorhynchus)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Pernis ptilorhynchus (Temminck, 1821)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:22~23 mm
・全嘴峰:41~45 mm
・翼長:雄 420~437 mm 雌 426~465 mm
・跗蹠:50~60 mm
・尾長:240~302 mm
・体重:560 g位
・卵:長径 49.3~57.3 mm × 短径 37.7~45.8 mm 平均長径 50.2 mm × 短径 41 mm 重量 49~52.5 g位
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハチクマ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 484-485.
最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区。ユーラシア大陸の温帯・亜寒帯で繁殖し、インドから東南アジアに渡って越冬する。
日本には夏鳥として5月ごろ渡来し、本州、佐渡島、北海道で繁殖し、冬はマレー半島、スマトラ島、ボルネオ島など東南アジアで越冬する。
個体数は少なく、希少種に指定されている。
体羽の色彩には個体変異が大きく、黒みの強い黒色型がほとんだだが、より灰褐色が強い淡色型がまれに見られる。
参考文献
- 中村雅彦 1995 ハチクマ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 159.
最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ
- 亜種・品種
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チョウセンハチクマ、シベリアハチクマ
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハチクマ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 484-485.
最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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タカ目 タカ科
参考文献
- 吉井正 2005 ハチクマ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 397.
最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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【雄成鳥 冬羽】
額・頭上・後頭および頸側の羽毛は黒褐色で基部は白い。
この白色部分の狭い場合には白色は全く外部に現れていないが、白色部分が広い場合には白色は外部に現れ、したがって黒褐色は太い縦斑状をなす。
後頸・背・肩・腰・上尾筒は暗チョコレート褐色で各羽には細い淡色縁がある。
尾は暗褐色で褐色の不規則斑が混ざる3本の太い灰褐色帯(基の1本はやや細い)があり、また先端は淡灰褐色である。
初列風切はすべて暗褐色で不鮮明な暗色横帯があり、内弁の内縁基半部には不定形な白斑が並ぶ。
次列風切も同様だが色淡く、白色部が広い。三列風切は暗褐色で極めて不明瞭な暗色横帯を有する。
初列雨覆・大雨覆および中雨覆には風切に似た斑紋がある。小雨覆は暗褐色で各羽の基部だけが広い。
眼先・頬・耳羽は帯褐灰色。ただし灰褐色に近いものもある。腮および喉は白色・バフ色または淡褐色。
黒褐色の顎線と、前方で細く、後方で太い黒褐色の腮線とが合わさり、喉に太いW型の顕著な斑紋を現している。胸以下の色は極めて変化に富む。
地色には白色・バフ色・赤褐色または暗チョコレート褐色など種々な色があり、斑紋は細い黒褐色軸斑のみのものと、暗褐色または黄褐色の円形斑または横斑とが混ざっているものがある。
ただし胸には必ず細い軸斑があり、腹側には大体横斑がある。
以上の組み合わせによって下面は極めて多様となり、ほとんど同一のものがない。ときとして下面全体が暗褐色の暗色型もある。
この羽衣は6月または7月より開始される年1回の完全な換羽によって得られるもので、9月から12月に完成するを常とするが、ときとして翌春まで換羽の続くものもある。
【雌成鳥】
羽色は雄成鳥に似るが尾羽の色によって区別することができる。
尾は褐色で約 1 ㎝毎に不定形な白色の横線が現れ、その間に幅約 1 ㎝の暗褐色横帯3~4本を現している。
なお雄成鳥と比較すると頭上の白色の多いものが多く、また顔の灰色味は少なく、黒褐色の斑点を有するものが多い。
【嘴・脚および虹彩】
嘴はスレート黒色で基部は鉛色または灰色。蝋膜は帯蒼スレート色。脚は黄色。爪は黒色。虹彩は橙黄色。
参考文献
- 山階芳麿 1980 ハチクマ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 812-815.
最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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頭上、後頭、後頸の各羽の先端はクリーム色、雨覆の各羽の先端はクリーム色である。
体の下面は個体により白色、クリーム色、暗褐色などの種々の色で、各羽には暗色の軸斑がある。
翼の各羽の先端にはクリーム白色の斑がある。尾の暗褐色の横帯は不規則で不明瞭であり、尾の先端には褐白色縁がある。
【雛】
頭上および頸にある初毛は長く、そのほかの上面も長く、各羽の先は絹のような光沢があり、多少毛状をなす。
初毛の色は頭・頸の部分がクリーム色、そのほかの上面は淡バフ灰色、下面は白色。
初綿羽は短く、かつ疎らである。これに替わる幼綿羽は白色で多少羊毛状になっている。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハチクマ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 484-485.
- 山階芳麿 1980 ハチクマ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 812-815.
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- 卵の形質
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卵は淡灰黄色の地に赤褐色。チョコレート色などの斑が密在し、ときには地色が淡赤褐色であるものもある。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハチクマ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 484-485.
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生態
- 生息環境
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標高 1.500 m以下の丘陵地や低山の山林、農耕地や草原などに生息し、ナラなどの落葉広葉樹林やアカマツなどの針葉樹林で繁殖する。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハチクマ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 484-485.
- 中村雅彦 1995 ハチクマ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 159.
最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ
- 食性
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名前が示すようにハチの幼虫や蛹を好んで食べ、クロスズメバチなどのジバチ類をとくに好む。
樹上でハチの行動を見つめ、地上を歩いたり走ったりしてハチの巣を探し、持前の長くて大きい脚で地面を掘り起こすという。
ハチに刺されないように頭部の羽毛は鱗状になっている。
巣のある木の下に、雛が食べ終わったハチの巣が散乱している例があるが、ハチの巣を掘っているハチクマの姿を観察したものは少ない。
雛に与える餌は全体の80%をハチが占めるが、両生類を約10%、小鳥も約10%ぐらいの割合で給餌し、ハチばかり与えているわけではない(海野, 1989)。
雛の巣立ちは9月ごろと遅く、育雛期はハチの巣が大きくなる時期に同調している。
ほかにもキリギリス、カメムシなど昆虫、ネズミ類、トカゲ類、カエル、ヘビなども捕食する。
停空飛翔をして獲物を狙うが、本種の停空飛翔はノスリやチョウゲンボウのように長時間続けるものではなく、短時間バタバタとはばたくだけである。
帆翔時には翼はほぼ水平に保たれ、またはばたきはトビより少し速い。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ハチクマ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅱ. 講談社. 484-485.
- 中村雅彦 1995 ハチクマ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 159.
- 吉井正 2005 ハチクマ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 397.
最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は5月下旬から9月、年に1回、一夫一妻で繁殖する。
低山帯の大木の枝上に、ほかの猛禽類の古巣を利用して皿形の巣をつくるが、古巣に新しい巣材を補充していくためかなり大きな巣になり、直径が 1.5~2 mにも達する例もある。
産座にはアカマツなどの青葉を用いる。雌雄共同で巣材を補強する(Cramp & Simmons, 1980)。
6月ごろ産卵し、1巣卵数は2個の例が多く、3~5日に1卵ずつ産卵する。
抱卵期間はは約5週間、雌雄交替で抱卵するが、雄が主で、雄は抱卵中の雌に餌を運ぶことが多い(清棲, 1978)。
育雛は雌雄共同で行い、育雛期間は5~6週間(海野, 1989)。
孵化した雛は半晩成性で、白色の幼綿羽が全身に密生するが、孵化後30日ごろから淡色型と黒色型の体羽に変化する(海野, 1989)。
参考文献
- 中村雅彦 1995 ハチクマ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 159.
最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ