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- ムクドリ(Spodiopsar cineraceus)について
ムクドリ(Spodiopsar cineraceus)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Spodiopsar cineraceus (Temminck, 1835)
目次
基本情報
- 大きさ・重さ
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・全長:238 mm (225~243)
・翼長:雄 128.9±2.8 mm 雌 124.9±2.6 mm
・尾長:雄 65.9±2.2 mm 雌 62.5±2.9 mm
・全嘴峰長:26 mm (24~27)
・ふしょ長:30 mm (27~31)
・体重:23.0 g (18.0~26.0)
・卵:長径 25.8~32.3 mm × 短径 19.5~22 mm 平均長径 29.3 mm × 短径 21.5 mm 重量 6.7 g
参考文献
- 中村雅彦 1995 ムクドリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. p. 27.
最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ
- 分布
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日本と中国北部・沿海州(モンゴル、シベリア、朝鮮)で繁殖し、冬は中国南部・台湾・西南日本に南下。
日本では全国各地で留鳥として生息するが、九州以南では多くない。
北海道では夏鳥であったが、近年は道南や道央で越冬するものが増えている。
参考文献
- 中村雅彦 1995 ムクドリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. p. 27.
最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ
- 人間との関係
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古くは田畑にて害虫を多く食べることより益鳥とされていた。
しかし、1960年代以降になるとナシへの被害が問題になり、ほかの果樹にも被害を出すようになったことから現在では害鳥と位置づけられることが多い。
近年では、農作物への被害より、都市部でのねぐら問題が大きく、毎年のように夏から秋にかけてマスコミが取り上げている。
駅前の街路樹などでは、大規模枝打ち、ネットかけ、ディストレスコール などにより、強い人為的圧力をかけ追い払っているが、その移動先は郊外ではなく近くの別の街路樹や人工物、あるいはほかの自治体の駅前であり、ねぐらを分散させ、事態をより悪化させていることが多い。
初めにねぐらができた自治体や付近の住民にとっては、そこからいなくなることが解決のように思われるが、もっと広域に考えるとそれは解決ではなく問題の転嫁でしかない。
最近では、一部の自治体では全てのムクドリを追い払うことはせず、被害のひどいところだけを排除し、比較的被害の少ないねぐらは残していくような共存の道を模索している。
参考文献
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形態
- 成鳥の形質
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【雄】
頭上、後頭、後頸は黒色で緑色の金属光沢がある。
額、頭側、耳羽、頬、腮は黒色で、各羽には白色の軸斑があり、腮と喉は黒色で、灰黒色の軸斑がある。
肩羽、背、腰は灰褐色で、胸と脇は灰黒色で、胸の中央は白色である。
腹、上尾筒、下尾筒は白色で、上尾筒の先端の部分は灰褐色である。
初列風切は黒褐色で、汚白色の細い縁があり、羽端はブロンズ光沢を帯びている。
次列風切は褐色で、汚白色のやや広い縁があり、羽端と外弁にはブロンズ光沢がある。
三列風切、大、中、小雨覆は黒褐色で、ブロンズ光沢があり、初列雨覆、小翼羽は黒褐色である。
尾は中央のものは黒褐色でブロンズ光沢があるが、ほかのものは黒褐色で、内弁の先端には幅 10 ㎜くらいの白色の縁がある。
嘴色は橙黄色、ときには先端が黒色、下嘴の基部は灰色または藍緑色を帯びている。虹彩は褐色、脚色は黄色。
【雌】
喉と胸は灰褐色、胸の中央と腹は汚白色、上尾筒の大部分と下尾筒は汚白色。汚は灰褐色である。ほかは雄と同様である。
参考文献
- 山階芳麿 1980 ムクドリ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅰ. 出版科学総合研究所. 55-59.
最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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孵化直後の雛は肉色の裸体のままで、後頭、背、腿、上膊、前膊などの羽域に淡灰色の細長い初毛が疎生している。
幼鳥は成鳥に似るがより色が淡く褐色に富んでいる。頭および喉の羽毛は全く柳葉状を呈していない。
頭上および後頭は暗灰褐色で、背との対照は成鳥ほど著しくない。
背面には青銅色光沢が全くなく、下面は一層淡くかつ褐色を帯び、喉・上尾筒・下尾筒・腹などの白色部は帯褐色汚白色を呈する。
嘴は淡褐色。脚は黄褐色。
【第1回冬羽】
幼鳥は秋季に風切および尾羽をも含み、全身を換羽して第1回冬羽となる。
新羽は雌においては雌成鳥との違いはないが、雄の場合は雄成鳥と比べてやや淡色である。
しかし雌成鳥とは頭および胸が灰褐色ではなく、灰黒色であることによって区別することができる。
この際、嘴は橙黄色だが、多少褐色味があって成鳥のように鮮やかではない。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ムクドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 30-32.
- 山階芳麿 1980 ムクドリ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅰ. 出版科学総合研究所. 55-59.
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生態
- 生息環境
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低地の平野や低山地にかけて広く生息し、農耕地、公園、庭園、牧場、村落付近の林、果樹園、ゴルフ場など人との生活に密接した地域によく見られる。
樹木の洞や建造物の屋根または間隙、石垣の間、巣箱、キツツキ類の古巣穴などで繁殖する。
採食地は、農耕地、公園、庭園、ゴルフ場など人の手が入っている環境が多い。乾燥して開けた場所を好む。
参考文献
- 中村雅彦 1995 ムクドリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. p. 27.
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- 食性
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雑食性で、動物質では、カエル、ミミズ、タニシや昆虫を食べ、植物質では初夏には桜の実、秋にはハナミズキ、エンジュ、ネズミモチなどの木の実を食べる。
果樹のモモ、ナシ、ブドウ、リンゴ、カキなども食べるが、かんきつ類は食べない。
秋、冬には大群で農耕地に下り、地上を交互歩行しながら、土の中に嘴を差し込むようにして畑や草地の昆虫などを食べる。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ムクドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 30-32.
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- ライフサイクル
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繁殖期は3月下旬から7月で年に1~2回繁殖する。一夫一妻だが、まれに一夫二妻あるいは一妻二夫が生じる。
越冬群の中で番の確認行動が見られることから、繁殖にさきがけて番を形成しているものもいると思われる。
3月には好適な巣場所を巡る激しい争いが観察される。また営巣中は巣の周囲数mほどに排他的ななわばりを形成する。
巣は疎林の樹洞や人家の戸袋、建造物の屋根などのすき間、石垣の間、キツツキ類の古巣穴などに、枯れ草、落ち葉などを敷き詰め、羽毛、獣毛、セロハン紙、ナイロン片などで産座を造る。
一腹卵数は4~7個。第1回繁殖のほうが第2回繁殖より卵数が多い。
卵は薄い青緑色で基本的に卵形だが、色や大きさ、形に個体差がある。
雌雄で抱卵するが、夜間はメスのみが行い、約12日間で孵化する。育雛は雌雄共同で行い、約23日で巣立つ。
巣立ち雛はその後、親とともに家族群で行動するが、約1ヶ月後には独立して若鳥群で採食したり、成鳥とともに集団で夏ねぐらを形成する。
参考文献
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- 鳴き声
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キュルキュル、ジャージャーなど、さまざまな声を出す。ねぐらの追い払いなどに使われている鳴き声はディストレスコール(遭難声)といって、天敵に捕まったときに出す悲鳴である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ムクドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 30-32.
最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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ムクドリの集団ねぐらは、大きく夏ねぐらと冬ねぐらに分けられる。
夏から秋にかけての夕方、就塒前行動として、ねぐらの上空を大群で飛び交うさまは圧巻である。
かつて夏ねぐらは郊外の笹藪や雑木林、ヨシ原などであり、ヨシが枯れたり雑木林が落葉したりすると、冬ねぐらとしてまとまった竹林がそれに代わって利用されていた。
しかし、近年は夏ねぐらの多くは郊外ではなく、都市部、特に駅前の街路樹が多く使われるようになり、そのため騒音と糞害などにより、人との軋轢が生じ、さまざまな方法で追い払いが行われている。
その結果、ねぐら場所が落葉樹から常緑樹そしてビルの屋上の看板や電線などの人工物に移動する例が増加しつつあり、夏ねぐらと冬ねぐらの区別がなく、夏から冬まで同じ場所でねぐらをとる例も増加している。
参考文献
最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ
- その他生態
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繁殖には雄雌だけで生活するが、それ以外の時期には群棲することが多い。
繁殖を終えた頃から群れはじめ、冬から春までは大群でいる場合が多い。
巨木の梢や竹藪などを塒とし、薄暮と早朝採食地に出発する前や塒に帰来したときに互いに喧しく啼き合う。
樹上でも啄食するが、地上で餌を捜し求めることが多い。
地上では跳ね歩くことはなく足を交互にして迅速にあちこちと歩き、頸を前後に動かし、肩を高く上げている。
畑地にある電線はよい休み場所で、一列に並んで多数がとまっていることが多い。
翼を迅速に羽搏いて直線的に飛翔するが、群飛するときには乱飛する。
地上に舞い降りる前には数回旋回飛翔をし円を書いて滑翔して舞い降りることが多い。
参考文献
- 清棲幸保 1955 ムクドリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 30-32.
最終更新日:2020-06-03 キノボリトカゲ