- 解説一覧
- オオヨシキリ(Acrocephalus orientalis)について
オオヨシキリ(Acrocephalus orientalis)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Acrocephalus orientalis (Temminck & Schlegel, 1847)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・嘴峰:17~20 mm
・翼長:雄 80~95 mm 雌 76~84.5 mm
・跗蹠:26~30 mm
・尾長:62~78 mm
・体重:雄 17~33 g 雌 18~28 g
・卵:長径 22~24.6 mm×短径 14.3~17.3 mm 平均長径 22.2 mm×短径 16 mm 重量 2.6~2.7 g位
参考文献
- 清棲幸保 1955 オオヨシキリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 267-270.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- 分布
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旧北区。東アジアおよび中央アジア西部からヨーロッパ、アフリカ大陸北西部で繁殖し、東南アジアおよびアフリカ大陸の熱帯域に渡って越冬する。
日本には夏鳥として、4月下旬ごろ北海道北・東部と沖縄を除く全国に渡来する。
8~9月には渡去し、東南アジアで越冬する。
香港で越冬中に標識されたオオヨシキリが、長野県千曲川の河原で再捕獲された記録がある(細野, 1990)。
参考文献
- 中村雅彦 1995 オオヨシキリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 203.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- 分類学的位置付け
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スズメ目 ウグイス科
参考文献
- 吉井正 2005 オオヨシキリ, 吉井正(監修) 三省堂編修所 (編) 三省堂世界鳥名事典. 三省堂. 100.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
形態
- 成鳥の形質
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雌雄同色。額、頭上、後頭、後頸は黄味がかった赤錆色をわずかに帯びたオリーヴ褐色で、眼の上にはやや不明瞭な淡クリーム白色の細い眉斑がある。
眼の周囲は幅広く輪をなして白色である。眼先から眼の後方まで暗褐色の過眼線がある。
耳羽は淡オリーヴ褐色、腮、喉、頬、頸側はクリーム白色で、頬、下喉、頸側には淡褐色の細長い縦斑がある。
背、肩羽、腰、上尾筒はわずかに黄味がかった赤錆色を帯びた淡オリーヴ褐色である。
胸、腹、脇はクリーム白色で、胸側は灰褐色を帯び、脇はわずかに黄味がかった赤錆色を帯びている。
風切羽は暗褐色で、初列風切、次列風切、三列風切はわずかに黄味がかった赤錆色を帯びた淡オリーヴ褐色の外縁があり、内弁にはクリーム白色の縁がある。
大、中雨覆、初列雨覆、小翼羽は暗褐色で、わずかに黄味がかった赤錆色を帯びたオリーヴ褐色の縁がある。
小雨覆はわずかに黄味がかった赤錆色を帯びた褐色である。下雨覆、腋羽はクリーム白色。
尾は暗褐色でわずかに黄味がかった赤錆色を帯びたオリーヴ褐色の外縁があり、羽換したときには羽端に淡色の縁がある。
嘴色は暗褐色、下嘴と上嘴の縁とは淡い角色、虹彩は褐色、脚色は鉛灰色、腋羽は黄白色。
参考文献
- 清棲幸保 1955 オオヨシキリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 267-270.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- 幼鳥の形質
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【幼鳥】
成鳥に酷似しているが、背面(特に腰)はより帯黄朽葉褐色を帯び、尾の先端・次列風切の縁・雨覆の縁は朽葉褐色を呈している。
腮および喉は朽葉バフ色で縦斑はなく、そのほかの下面も成鳥より朽羽バフ色に富んでいる。
【第1回冬羽】
幼鳥は通常7~9月に体羽と小雨覆のもを換羽して第1回冬羽となる。
この際、ときとしてほかの部分をも換羽することがある。
この羽衣は幼羽と第2回冬羽との中間の色彩で、背面は黄色に富むも、腮および喉は白色に近い。なお喉に縦斑はない。
【第1回夏羽】
成鳥と同様の換羽を行い、成鳥夏羽に酷似した羽衣となる。
しかし日本産の亜種は風切および尾羽は前年秋に更新していないため成鳥のものより摩耗している。
【第2回冬羽】
幼鳥は第2年秋季に全身を換羽して成鳥冬羽となる。
【雛】
孵化直後の雛は肉食の裸体のままで、初毛を欠き、口中は黄色である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 オオヨシキリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 267-270.
- 山階芳麿 1980 オオヨシキリ, 山階芳麿(著) 日本の鳥類と其生態Ⅱ. 出版科学総合研究所. 165-172.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- 卵の形質
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卵は、淡青緑色または青味のある灰白色の地に、褐色または黒褐色と淡紫色または淡オリーブ色のやや粗い斑点が散在し、斑点は鈍端の方に密在するのが常である。
参考文献
- 清棲幸保 1955 オオヨシキリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 267-270.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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全国各地の水辺のヨシ原に生息し、海岸や河口などの低地の湿原や、山地の湖岸や川岸の湿地でふつうに繁殖する。竹林で繁殖する地方もある。
参考文献
- 中村雅彦 1995 オオヨシキリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 203.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- 食性
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茎から茎へと移動しながら細く尖ったくちばしで昆虫を捕らえるが、空中に飛び出して飛んでいる昆虫をフライングキャッチすることもある。
雛の餌には鱗翅類の幼虫とクモ類が多く、双翅類や直翅類、鱗翅類の成虫、マイマイなども与える(羽田・寺西, 1968a)。
参考文献
- 中村雅彦 1995 オオヨシキリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 203.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- ライフサイクル
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繁殖期は5~8月、年に1~2回繁殖するが、本州中部以北では年に1回の繁殖がふつう。
一夫多妻で繁殖し、雄の10~30%が2~3羽の雌と番う。
番の形成には、巣立ちの雛のように餌をねだる雌に雄は求愛給餌を行う(羽田・寺西, 1968a)。
ヨシの茎にイネ科の葉や茎を用いて椀形の巣をつくり、巣づくりは雌だけが行う。
1巣卵数は4~6個、1日1卵ずつ産卵し、抱卵や抱雛は雌だけが行い、抱卵日数は12~14日(羽田・寺西, 1968a)。
雛への給餌は雄も加わるが、給餌の分担率は雌のほうが高い。
雛は孵化後13~14日で巣立ち、巣立ち後も約2週間はなわばりの近くで養われる。
繁殖シーズン末期には、雄が次々と繁殖場所から姿を消し、後には卵や雛の世話をする雌だけが残される(Ezaki, 1988 ; Urano, 1992)。
6月下旬以降に産卵した雌は例外なく捨てられるが、遺棄された雌は雛への給餌回数を増して、雛をほとんど餓死させることなく育て上げる(Ezaki, 1988 ; Urano, 1992)。
参考文献
- 中村雅彦 1995 オオヨシキリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 203.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- 鳴き声
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葦などの草類の茂みの中や穂先にとまって喧しく囀り、葦の葉や茎が未だ延びない渡来初期には附近の濶葉樹の梢などにとまって囀る。
4月下旬頃から7月頃迄が囀鳴期で、最盛期には終日囀り、ときには夜間にも囀ることがある。
一際高い葦の穂先にとまって、ギョッ、ギョッ、ギョギョッギョギョッ、ツキ、ツキ、ツキ、ケ、ケ、ケ、ケ、シー、ギョッ、ギョッ、ギョ、ギョチチチチ―と繰り返し繰り返し囀り続ける。
ギョッ、ギョッと地啼きする。
参考文献
- 清棲幸保 1955 オオヨシキリ, 清棲幸保(著) 日本鳥類大図鑑Ⅰ. 講談社. 267-270.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ
- 特徴的な行動
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雌を得た直後はあまりさえずらなくなるが、巣が完成するころから再び活発にさえずるようになり、この時期に一部の雄が2羽目の雌を得る(Ezaki, 1987)。
第2雌は、なわばり内の第1雌からより離れたところに営巣する傾向にある(Urano, 1990)。
早い時期になわばりを確立し、より早く1羽目の雌と番って雄が一夫多妻になりやすく(Urano, 1985)、一夫多妻の生起率は、長野県の15.2%(羽田・寺西, 1968b)から琵琶湖の46.0%(Ezaki, 1990)と、場所あるいは年( Urano, 1985 ; Ezaki, 1990)によって異なる。
多妻のうちわけは一夫二妻がふつうで、ときに一夫三妻、最も多い場合で五妻になる。
一夫多妻の雌たちは雄のなわばりの中に収まっているものの、よほど巣の近くでない限り互いに排他的ではなく、行動範囲を重ね合わせて共存する(Ezaki, 1981)。
参考文献
- 中村雅彦 1995 オオヨシキリ, 中村登流、中村雅彦(著) 原色日本野鳥生態図鑑:陸鳥編. 保育社. 203.
最終更新日:2020-06-24 キノボリトカゲ