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- ハコネサンショウウオ(Onychodactylus japonicus)について
ハコネサンショウウオ(Onychodactylus japonicus)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Onychodactylus japonicus (Houttuyn, 1782)
基本情報
- 生息状況
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ほかの二ホンの小型サンショウウオ類と異なり、孵化後2~3年という長期の幼生時代を過ごすため、環境変化や水質汚染による致命的な影響を受ける懸念があるだけでなく、成体も肺をもたず、乾燥に弱いため、開発などによる林床の乾燥化からも大きな影響を受けやすい。
参考文献
最終更新日:2020-06-10 キノボリトカゲ
形態
- 成体の形質
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体は細長くてかなり大形。
背面は暗赤褐色か紫色を帯びた暗褐色で、普通は中央部の全長にわたって橙黄色または橙紅色の幅広い縦条があるが、その両側の境は不規則な線になっている。
東北地方にはこの縦条の切れた個体が多く、斑紋が横帯となったり、背面に橙黄色の不規則な細かい斑点を散布するようになったり、さらに極端なものでは斑紋がほとんど消失してしまったりする。
四肢の背面は、体の背面と同じ基色に橙黄色の斑点を散布しているのが普通。腹面は黄褐色で、一般に斑紋や斑点がない。
頭部は卵形で幅よりも長く、吻端が円くて、鼻孔の位置は普通眼よりもやや吻の方に近い。
眼は大きくて著しく突出し、上眼瞼がよく発達している。耳腺は楕円形で大きく、その上縁を区切る明瞭な溝線がある。
胴は長くて円筒状、肋条の数は背面で13~15本、腹面で11~13本を数える。
四肢はそれほど短くないが、体側に沿って伸長しても多くは指趾端が接しない。
前肢は細長くて指も長く、雄の後肢は太く、とくに生殖期には著しく肥大して第5趾の外縁が広がる。
5趾性であるが、稀には第5趾の小さくなった個体もある。また、生殖期に黒い爪のできない個体もある。
尾は円筒状で普通は頭胴長より長く、特に雄では長いが、雌の中には尾の異常に短い個体が稀に現れる。
また、尾の先端部は、多少とも側扁していることが多い。
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最終更新日:2020-06-10 キノボリトカゲ
生態
- 生息環境
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標高 300~2500 mの低山地から高地までの、山地森林内の渓流周辺部の林床に生息。
森林地帯ばかりではなく、高山帯の木のないところや雪渓の縁などにもすんでいる。
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最終更新日:2020-06-10 キノボリトカゲ
- 産卵
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繁殖期に入ると分散していた個体は河川源流域の繁殖場所に移動する。
産卵場所の多くは日中でも薄暗く、岩盤の隙間からの湧き水の奥や伏流水の出る岩が重なった奥など発見しにくい環境で、まだ不明な点が多い。
本種の繁殖は地温が重要な要因となり、地温 10~20 ℃で繁殖行動が行われ、そのため初春(4~6月)と晩秋(10月下旬~12月下旬)からの年2回の繁殖期が見られ、繁殖個体はそのいずれかの時期に参加する。
雌雄とも繁殖期になると四肢の指先に黒い爪が現れ、滝壺の奥や岩盤の隙間の奥、湧き水や伏流水の穴の奥などの石や岩の壁に房状の卵嚢を1対付着させ、産卵する。
1卵嚢内の卵数は約12個。卵嚢の大きさは幅約 7~13 ㎜、長さ約 22~52 ㎜、外皮は丈夫で透明。
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最終更新日:2020-06-10 キノボリトカゲ
- その他生態
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肺をもたないことで乾燥に弱く、常に湿潤な環境を必要とする。
日中はそうした環境内の石の下や倒木の下、落葉下、苔類の下などに潜み、夜間に林床を徘徊し活動するが、雨天時や曇天時は日中であっても活動する。
活動温度が地温 10~20 ℃と限られており、地温が 10 ℃以下では冬眠し、20 ℃以上では水温が 9~11 ℃に安定している湧き水の奥などで夏眠するため、実際に活動する期間は1年のうち5か月ほどとなる。
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最終更新日:2020-06-10 キノボリトカゲ