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- シマヘビ(Elaphe quadrivirgata)について
シマヘビ(Elaphe quadrivirgata)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Elaphe quadrivirgata (Boie, 1826)
目次
基本情報
- 人間との関係
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一昔前までは、ヘビを専門に売る「ヘビ屋」という業者がいたが、現在では非常に稀になっている。
参考文献
- 森晢 2012 シマヘビ, 針山孝彦、小柳光正 、嬉正勝、妹尾圭司 、小泉修 、日本比較生理生化学会(編) 研究者が教える動物飼育 第3巻 ーウニ, ナマコから脊椎動物へー. 共立出版. pp. 129-130.
最終更新日:2020-04-29 鍋
形態
- 成体の形質
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腹板数はメスが194〜213枚、オスが196〜216枚。尾下板数はメスが73〜95対、オスが76〜99対。体中央部の鱗列数は19列。一般的に雄の方が雌より大きい。雌の体は雄に比べ太く、総排泄口より後方は急に細くなり、尾長は雄より短い。雄は総排泄口の後部は急に細くならず、尾長は雌より長い。
色彩の変異が激しく、多くの場合わら色の体に4本の黒い縦条を持つが、縦条を持たない個体や、地の色が黒色やオリーブ色になる個体も見られる。この黒色になる個体は特に「カラスヘビ」と呼ばれ、北海道や屋久島、伊豆大島でよく見られる。虹彩は赤みがかる。
参考文献
最終更新日:2020-04-29 鍋
- 幼生の形質
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孵化幼体の全長は約 35〜49 cm で、体は赤っぽく、成体のような縦条ではなくあずき色の横縞を持つ。この横縞は4列の暗赤色の点とそれを結ぶ線で構成されているが、成長するにつれてこの点が黒ずむと同時に前後の点が繋がっていき、最終的に4本の黒い縦状となる。並行して地の色も薄くなり、灰色からワラ色になる。
参考文献
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- 地理的変異
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伊豆諸島の祇苗島では大型になり、200 cm を超えるものも見られる (「食性」の項も参照)。北海道や屋久島、伊豆大島では黒色になるものが多く見られる (「成体の形質」の項も参照)。
参考文献
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生態
- 生息環境
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低地から山地まで広く生息。特に水辺に多く、その他森林内、草地、田畑、人家周辺などの環境にも生息する。主に地表で活動するが、低木に登ることもある。農地など開けた日当たりの良い環境を好む。
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- 食性
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ヘビの中ではジェネラリストであり、各種爬虫類 (ヘビ、トカゲ) や両生類 (カエル、サンショウウオ) 、小型の哺乳類 (げっ歯類、食虫類) や鳥類の卵およびヒナなど、脊椎動物を幅広く捕食し、共食いもする。飼育下では魚類も捕食した記録がある。
ヘビは、胴中央部の体鱗列数が多いほど、皮膚が広がりやすくなり、大きい獲物も飲み込めるようになるが、アオダイショウは体鱗列数が23〜25列になるのに対し、シマヘビは19列と少ない (日本産ナメラ属中で最少) ため、あまり大きな餌は飲み込めない。
一般的にはカエルを捕食することが一番多く、ついで爬虫類であるが、食糧資源環境や他のヘビとの競争関係によって食物を変える傾向が強い (特に動物相の偏りが強い離島で顕著)。伊豆諸島における例を挙げると、5種のヘビが生息する伊豆大島ではオカダトカゲのみを捕食し、アオダイショウとのみ共存する神津島ではオカダトカゲ、ニホンカナヘビ、アオダイショウの幼体と卵、アカネズミの幼獣を食べる。シマヘビのみが分布する祇苗島では、カエルや哺乳類がいないため、成体は海鳥の卵やヒナを食べ、そのために体が他の地域に比べ著しく大きくなっている。
幼体はカエルを餌とする割合が成体よりさらに高い。前述の祇苗島では幼体はオカダトカゲのみを捕食する。
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- 特徴的な行動
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敏捷で泳ぎも上手い。基本的には積極的に動き回って獲物を探す。また、気が荒く、よく咬みつく。追い詰められると体をS字状にし、尾で地面を叩いて威嚇する。繁殖期には雄同士のコンバットが観察されることもある。コンバットは時に縄をなうような形になる。
無毒であるが、捕まえると総排出口から臭い匂いを放つ。
参考文献
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- その他生態
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アオダイショウと並び各地で最も普通に見られるヘビ。
参考文献
- 森晢 2012 シマヘビ, 針山孝彦、小柳光正 、嬉正勝、妹尾圭司 、小泉修 、日本比較生理生化学会(編) 研究者が教える動物飼育 第3巻 ーウニ, ナマコから脊椎動物へー. 共立出版. p. 129.
最終更新日:2020-04-29 鍋
関連情報
- 飼育方法
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シマヘビは入手しやすく、大きさも適当で、比較的飼育しやすいヘビとされる。
【飼育環境】
飼育ケージはきわめてシンプルなもので良い。ペットショップで売っているプラスチックケージの中に新聞紙などを敷き、水道水を入れたプラスチック製の容器をおいて、あとは隠れ家用の植木鉢や瓦のかけらを添えれば完了である。重要なのはケージの蓋をしっかりと固定することである。ヘビは吻端でものを押す力が非常に強いので、蓋の留め金が緩い時はガムテープで補強するか、蓋の上にレンガなどの重しを載せておく。ヘビは脱皮の際に全身を水に浸すことが多いので、水入れはとぐろを巻いたヘビの全身が入るサイズのものを使うのが望ましい。水や下敷きの新聞紙は汚れたら取り替える。気をつけなければいけないのは温度管理である。シマヘビの野外での活動時の平均体温は30℃前後であるので、これに近い体温をヘビが維持できるようにする。一つの方法は室温をコントロールできる部屋での飼育である。もう一つの方法は、ヘビ自身に体温調節をさせるやり方である。この場合は、ペットショップで販売されているパネルヒーターや保温球をケージごとにセットし、ケージ内に温度勾配を作ることによって、ヘビ自身に体温調節をさせる、というものである。シマヘビは野外では12月ごろから3月ごろまで冬眠する。飼育下では必ずしも冬眠させる必要はないが、温度条件が一定でも冬季には食欲がやや落ちるという観察結果が得られている。冬眠させる場合は5〜10℃程度の室温下に置き、暗い状態にしておく。ケージは普段の飼育時と同じで良いが、乾燥を避けるため水はなくならないようにする。
【繁殖】
飼育下で交尾させて繁殖させることも可能であるが、野外では性成熟に2年ほどかかるとされ、継代飼育に適した動物とは言えない。新生幼体を入手したいのであれば、野外から妊娠雌を捕獲してきて、飼育下で産卵、孵化をさせる方が簡単である。妊娠雌を産卵させる場合は、産卵用のカップを入れておく。出入り口用の孔を開けたカップの中に湿った水苔を半分くらい入れ、蓋側を下にしてケージ内に置く。数日ごとにカップ内を確認し、産卵していたら卵を別の容器に移す。湿った水苔に半ば埋もれるようにして30℃に保つと孵卵する。孵化までには40〜50日ほどかかるが、この間、卵が乾燥しないように、時々霧吹きで水苔を湿らせることが重要である。また、転卵は厳禁である。
【餌】
ヘビは神経質な生き物であるため、野外で採集してきた直後は飼育環境にも慣れておらず、餌を受け付けないことが多い。ヘビは飢餓には強いので、捕獲後1週間くらいは餌を与えずに、まず環境に慣らすことを優先する。シマヘビは野外ではカエル、トカゲ、ネズミなどを捕食しており、基本的に生きている餌しか食べない。入手のしやすさからいえば、実験用のマウスが最も扱いやすい餌だろう。カエルを与える場合、野外で採集してくるのがよいが、ツチガエルとヒキガエルは皮膚毒が強いので与えないようにする。基本的に生きている餌しか食べない。一度に与える餌量としては体重の5%程度が目安であるが、それほど厳密に考えなくてもよい。給餌頻度は餌の重さにもよるが、通常1週間に1〜2度くらいで十分である。孵化幼体の餌に関しては、生まれたばかりのマウスでさえ大きすぎて拒絶することが多く、小さなカエルやトカゲを準備する必要がある。
参考文献
- 森晢 2012 シマヘビ, 針山孝彦、小柳光正 、嬉正勝、妹尾圭司 、小泉修 、日本比較生理生化学会(編) 研究者が教える動物飼育 第3巻 ーウニ, ナマコから脊椎動物へー. 共立出版. pp. 129, 131-133.
最終更新日:2020-04-29 鍋
- 持ち方・触り方
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咬まれないように頭部のすぐ後ろの頸を掴むのが良い。頸だけをつまんで胴体をぶらんと垂らして持つのはヘビにとって負担になるので、できるだけ胴体の複数箇所を両手で支えるようにして抱える。力のかけ具合としては、蛇が逃げない程度には強く、苦しくない程度には弱く掴むのがコツである。
参考文献
- 森晢 2012 シマヘビ, 針山孝彦、小柳光正 、嬉正勝、妹尾圭司 、小泉修 、日本比較生理生化学会(編) 研究者が教える動物飼育 第3巻 ーウニ, ナマコから脊椎動物へー. 共立出版. p. 130.
最終更新日:2020-04-29 鍋