- 解説一覧
- ミシシッピアカミミガメ(Trachemys scripta elegans)について
ミシシッピアカミミガメ(Trachemys scripta elegans)
- 【 学名 】
-
Trachemys scripta elegans (Wied, 1838)
目次
基本情報
- 大きさ・重さ
-
甲長:最大で雄24 cm、雌28 cm前後。
参考文献
- 高田榮一・大谷勉 2011 ミシシッピアカミミガメ, 高田榮一、大谷勉(著) 原色爬虫類・両生類検索図鑑. 北隆館. 60₋61.
- 安川雄一郎 1996 ミシシッピアカミミガメ, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 61₋63.
最終更新日:2020-04-30 ハリリセンボン
- 分布
-
原産地はアメリカ合衆国中南部、メキシコ北東部。国内では北海道の一部、本州、四国、九州、沖縄島とその周辺の離島の一部、石垣島、小笠原父頭などだが、今後増える傾向にある。
参考文献
- 高田榮一・大谷勉 2011 ミシシッピアカミミガメ, 高田榮一、大谷勉(著) 原色爬虫類・両生類検索図鑑. 北隆館. 60₋61.
- 安川雄一郎 1996 ミシシッピアカミミガメ, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 61₋63.
最終更新日:2020-11-25 ハリリセンボン
- 分類学的位置付け
-
カメ目 ヌマガメ科 アカミミガメ属
参考文献
- 高田榮一・大谷勉 2011 ミシシッピアカミミガメ, 高田榮一、大谷勉(著) 原色爬虫類・両生類検索図鑑. 北隆館. 60₋61.
最終更新日:2020-04-30 ハリリセンボン
形態
- 成体の形質
-
背甲は緩やかなドーム型をしている。背甲全体は緑褐色で、左右の肋甲板の中央には幅の不規則な縦筋模様が入り、周囲にはそれを囲むように幾筋かの歪んだ環状模様が入る。ほかの各甲板にも、不規則な幅の細い線状模様を帯びる。腹甲は淡黄色の地に、暗緑色の複雑な模様が入る。
眼後方側頭部に赤色・暗赤色の模様が入るが個体差があり、老齢化した個体では不鮮明になることが多い。体色は成長に伴い退色、黒化する。特に成体の雄の一部では模様も不明瞭になるか、全身が灰緑色がかり、暗褐色の不規則な模様が入る。
雄の成体では、前肢の左右第2~3指の爪が指の長さか、それ以上に長くなることで、雌雄の判別は比較的容易である。尾の長さ、尾の付け根の太さでの雌雄の判別はニホンイシガメに準じる。
参考文献
- 高田榮一・大谷勉 2011 ミシシッピアカミミガメ, 高田榮一、大谷勉(著) 原色爬虫類・両生類検索図鑑. 北隆館. 60₋61.
最終更新日:2020-04-30 ハリリセンボン
- 幼生の形質
-
幼体では全体に黄緑色が強く、その中に複雑な黄色模様が入る。眼の後方の帯状模様の赤色は鮮明で「ミドリガメ」と呼ばれる。
参考文献
- 高田榮一・大谷勉 2011 ミシシッピアカミミガメ, 高田榮一、大谷勉(著) 原色爬虫類・両生類検索図鑑. 北隆館. 60₋61.
最終更新日:2020-04-30 ハリリセンボン
- 卵の形質
-
卵は楕円形で、大きさは約 23~35 mmになる。卵殻は弾力のある皮革状である。
参考文献
- 高田榮一・大谷勉 2011 ミシシッピアカミミガメ, 高田榮一、大谷勉(著) 原色爬虫類・両生類検索図鑑. 北隆館. 60₋61.
最終更新日:2020-04-30 ハリリセンボン
- 似ている種 (間違えやすい種)
-
リバークーター類(Pseudemys)
参考文献
- マーク・オシー, ティム・ハリデイ 2001 ミシシッピアカミミガメ, マーク・オシー、ティム・ハリデイ(著) 太田英利(監修) 爬虫類と両生類の写真図鑑. 日本ヴォーグ社. 53.
最終更新日:2020-04-30 ハリリセンボン
生態
- 生息環境
-
半水生で、河川の中・下流の比較的水量が多く、流れの緩やかな水域や湖沼などを主な生息域とする。比較的汚水にも強く、日本国内では都市(地方都市を含む)やその周辺の人工的な水域に投棄された個体群が多く生息しているが、自然が残されているような水域にも広がっている。塩分への抵抗力も高く、しばしば汽水域にも進出する。
参考文献
- 高田榮一・大谷勉 2011 ミシシッピアカミミガメ, 高田榮一、大谷勉(著) 原色爬虫類・両生類検索図鑑. 北隆館. 60₋61.
- 安川雄一郎 1996 ミシシッピアカミミガメ, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 61₋63.
最終更新日:2020-04-30 ハリリセンボン
- 食性
-
雑食性で、水性植物や岸辺の植物・果実類・花などの植物質や水生昆虫、水生甲殻類、水生・陸生貝類、小型魚類などやそれらの屍骸、動物の屍骸など、幅広い食性をもつ。
アメリカ国内での観察では、幼体では水生昆虫などの動物質の割合が高いが、成体では水草などの植物質の割合が高いという。
参考文献
- 高田榮一・大谷勉 2011 ミシシッピアカミミガメ, 高田榮一、大谷勉(著) 原色爬虫類・両生類検索図鑑. 北隆館. 60₋61.
- 安川雄一郎 1996 ミシシッピアカミミガメ, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 61₋63.
最終更新日:2020-04-30 ハリリセンボン
- 生殖行動
-
通常は3~5月に交尾するが、沖縄などの亜熱帯域では晩秋から4月に交尾を行い、冬期でも気温が高い日には交尾する。雄の交尾行動として、水面で雌の前で両前肢を手の甲を向かい合わせの状態で伸ばし、長い爪を細かく震わせ、身体を左右に揺らしながら雌の頭部や首に接触するくらい近づく行動をとる。
参考文献
- 高田榮一・大谷勉 2011 ミシシッピアカミミガメ, 高田榮一、大谷勉(著) 原色爬虫類・両生類検索図鑑. 北隆館. 60₋61.
最終更新日:2020-04-30 ハリリセンボン
- 産卵
-
産卵は4~8月上旬に行われる。産卵回数は1~4回、孵化日数は60~80日前後である。
移入個体群の繁殖生態については不明だが、飼育個体で5月中旬から8月上旬にかけて平均して年3回、計25.9個産卵したという報告がある。同じ場所で飼育していたイシガメ、クサガメの年間産卵数は、平均するとそれぞれ10.7個、15.5個であり、この種の産卵数はかなり多い。
参考文献
- 高田榮一・大谷勉 2011 ミシシッピアカミミガメ, 高田榮一、大谷勉(著) 原色爬虫類・両生類検索図鑑. 北隆館. 60₋61.
- 安川雄一郎 1996 ミシシッピアカミミガメ, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 61₋63.
最終更新日:2020-04-30 ハリリセンボン
- その他生態
-
ミシシッピアカミミガメは、スライダータートルの1亜種で、本来の分布域はアメリカ合衆国南部からメキシコ北東部にかけてである。ペットとして養殖個体が世界的規模で流通しているため、アメリカ国内でも多数の移入個体群が知られるほか、中国・台湾・韓国・タイ・オーストラリア・イスラエル・南アフリカなどにも定着している。
国内には昭和30年前後に輸入が始まり、40年代前半からこの種の野外での採集が報告されている。
参考文献
- 安川雄一郎 1996 ミシシッピアカミミガメ, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 61₋63.
最終更新日:2020-04-30 ハリリセンボン
関連情報
- 感染症
-
昭和50年にこの種に由来するサルモネラ菌感染症が見つかった。保菌率の高いことがマスコミで報じられ、その直後に大量に捨てられた。しかし、サルモネラ菌はこの種に特異的に発生する細菌ではなく、他種のカメ類を含めた様々な動物が感染源になる可能性があり、この種のみを特に危険視する根拠はない。
参考文献
- 安川雄一郎 1996 ミシシッピアカミミガメ, 竹中践(著) 日高敏隆(監修) 千石正一、疋田努、松井正文、仲谷一宏(編) 日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社. 61₋63.
最終更新日:2020-04-30 ハリリセンボン
- その他
-
本種は「ミドリガメ」の名称で毎年多く販売されており、そのほとんどは子ガメのうちに死亡していると思われる。成長したものは気が荒くなる傾向(正しいケアが行われないため)が強く、その多くは捨てられる可能性が高い。幅広い環境に適応しやすく汚水にも強い。また食性の幅が広く、外敵が少ないなどの要因でその地域に定着しやすい。世界各地で在来のカメ類だけでなく、現地の生態系に大きな影響を与えつつある。
参考文献
- 高田榮一・大谷勉 2011 ミシシッピアカミミガメ, 高田榮一、大谷勉(著) 原色爬虫類・両生類検索図鑑. 北隆館. 60₋61.
最終更新日:2020-04-30 ハリリセンボン