- 解説一覧
- カワハギ(Stephanolepis cirrhifer)について
カワハギ(Stephanolepis cirrhifer)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Stephanolepis cirrhifer (Temminck & Schlegel, 1850)
基本情報
- 別名・方言名
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チッチ(青森)、コグリ(山形県鶴岡、新潟)、ゲバ(神奈川)、コウモリダイ(石川、富山)、ツノハゲ(和歌山県田辺・周参見・辰ヶ浜)、チュウカレンボ(鳥取)、モチハゲ(広島、山口県室積町・牛島)、コクサン(高知)、ツノコ(鹿児島)、マブユ(沖縄)
参考文献
最終更新日:2020-05-12 En
- 人間との関係
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季題は<夏>。「皮剥の 捨てられてゐる 石畳 松村砂丘」「酷暑かな かははぎ皮を はがれゐて 安達智恵子」
『和漢三才図会』に「形状は大へん醜く、頭は方頭魚(くずな)に似、状はほぼ鮫に似ている」とあり、「鮫の属であろうか」と推察している。「伝えによれば皮で銭瘡をこすればよく治るという」とも記される。
旬は卵をもつ夏。鮮魚として店頭に並ぶカワハギは、本種と近縁種のウマヅラハギの2種があり、とくに区別されていないこともある。
干物や珍味として出回るカワハギの大部分は、ウマヅラハギである。
かたく丈夫な皮はアジやサバ釣りの疑似餌に使われる。中国では昔、この魚の皮を干して木器磨きに用いたという。兵庫県の皮革工業指導所では、今まで廃棄されていたカワハギの皮をなめして、名刺入れや財布をつくる研究を進めているという。
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形態
- 成魚の形質
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体は強く側扁し、菱形。腹部膜状部が発達する。体の鱗は小さく、触るとやわらかい。腰骨の後端に鞘状鱗があり、3節に分かれ、上下に動かすことができる。背鰭第1棘は長くて顕著だが、第2棘は小さく皮下に埋没している。背鰭2棘31〜35軟条、臀鰭31〜34軟条、胸鰭13〜15軟条。雄の背鰭前部軟条は糸状に延長する。雌では延長しない。
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生態
- 食性
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流れ藻に付いている仔稚魚はカニ類の幼生などの動物プランクトンを摂食し、藻場に生息するようになるとヨコエビ類や褐藻などを食べる。
成魚は雑食でゴカイなどの多毛類、フジツボ類やカニ・アミ類などの甲殻類、あるいは貝類を食べるほか、紅藻類などの海藻も摂食する。
尖った口から勢いよく水を出し、フジツボの上に堆積した浮泥を吹き飛ばしたり、砂に隠れた甲殻類などを掘り起こして捕食する。
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- ライフサイクル
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ウマヅラハギ Thamnaconus modestus のように大きな群れを形成することは少なく、1〜3尾でいることが多い。昼間は魚礁の上面で付着生物をついばんでいることが多く、上方にはあまり浮き上がらない。
産卵期は春から夏。孕卵数は全長 24 ㎝ で約15万粒。卵は球形で、直径 0.6〜0.7 ㎜ の粘着沈性卵。産卵から孵化するまでの時間は、水温20℃前後で約60時間。
孵化直後の仔魚は全長 2.0 ㎜ 程度で透明。孵化後70〜80時間で全長 2.5 ㎜ 前後に成長し、卵黄のほとんどを吸収する。また、眼も黒化する。全長 3〜4 ㎜ で背鰭棘が形成され始める。全長 6 ㎜ では背鰭棘が大きくなり、体表は黄褐色となる。
全長 30 ㎜ 前後で成魚とほぼ同じ形態になる。稚魚は流れ藻に付いて浮遊生活をしているが、全長2〜3 ㎝ になると流れ藻を離れ、水深 10 m 以浅の藻場で生息するようになる。その後、成長に伴って水深 30 m 前後の海域へ移動する。
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関連情報
- 漁獲方法
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マダイ釣りの外道として釣ることがあるが、餌取りの名人といわれ、ねらって釣るには高度な技術が必要なことから、カワハギを目当てに海に通う釣り人も少なくない。
関東では船釣りによる競釣会もよく開かれる。餌はエビ類、ゴカイ類、アサリの剥き身などを使う。カワハギは餌を味見する用心深い習性があるため、口にかかりやすい針を使うとよい。
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- 味や食感
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身は白身でよくしまり、クセがない。皮を口先から尾の方に引っ張るようにして一気に剥いでから調理する。
鮮度の高いものは三枚におろして薄造りにし、肝でつくった肝酢で食べるのが最も美味とされる。フグに匹敵する味といわれる。
淡白な味は煮物、鍋物、吸い物、天ぷら、フライなど応用範囲が広い。関西ではちり鍋に欠かせない食材の一つ。身以上に美味なのが肝で、ポン酢しょうゆで生食するほか、刺身と共和えにしたり、みそ汁、肝鍋にして濃厚な味を楽しむ。
何尾か手に入った時は干物にしてもよい。みりん干しは酒の肴として人気がある。
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