- 解説一覧
- キタノメダカ(Oryzias sakaizumii)について
キタノメダカ(Oryzias sakaizumii)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
【環境省】絶滅の危険が増大している種
- 【 学名 】
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Oryzias sakaizumii Asai, Senou & Hosoya, 2012
目次
基本情報
- 大きさ・重さ
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・成魚全長:オス 3.2 ㎝ メス 3.3 ㎝
参考文献
- 瀬能宏 2013 メダカ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 649-650.
最終更新日:2020-05-01 ひろりこん
- 分布
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下北半島、奥入瀬川水系、福島県郡山(阿武隈川水系)、佐渡島、津軽半島~兵庫県円山川水系までの本州日本海側(長野県千曲川水系・丹後半島竹野川水系上流を除く)、兵庫県浜田(岸田川水系)
参考文献
- 瀬能宏 2013 メダカ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 649-650.
最終更新日:2020-05-01 ひろりこん
- 生息状況
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近年、キタノメダカとミナミメダカの生息地は都市開発、河川改修、水田の圃場整備などによるコンクリートの水路の増加、繁殖力の強い外来種による影響などにより、急速に消失し、自然界でメダカが生息している場所を見つけることが難しくなっている。特に、一部地域においては、絶滅した場所もあり、全国的に絶滅の危機にさらされている。
また、日本各地では、絶滅危惧種であるメダカを守ろうとする保護活動が、メダカの遺伝的な多様性を減少させる遺伝子汚染という新たな問題を引き起こしている。
参考文献
最終更新日:2020-05-01 ひろりこん
- 和名の解説
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2011年に日本産メダカは従来の Oryzias latipes から O. sakaizumii と O. latipes の2種に分けられた。
そのさい、本種は日本での分布域が兵庫県以北の日本海に面した地域であることを考慮し、新標準和名としてキタノメダカを提唱された。
参考文献
- 瀬能宏 2013 メダカ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 1923-1927.
最終更新日:2020-05-01 ひろりこん
- 別名・方言名
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ウルメ(青森・秋田・山形・新潟・石川)、コメンジャコ(福井・京都)、ザッコ(新潟・富山)、メメンジャコ(福井・富山・石川)など
参考文献
- 安田富志郎・高木和徳 1981 メダカ, 日本魚類学会(編) 日本産魚名大辞典. 三省堂. 353-406.
最終更新日:2020-05-01 ひろりこん
- 分類学的位置付け
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従来、 Oryzias latipes (メダカ)は、日本列島、台湾、朝鮮半島から中国大陸にかけて広く分布するとされていた種で、遺伝的に異なる4集団(日本に分布する北日本集団と南日本集団、朝鮮半島の東部から南部に分布する東韓集団、朝鮮半島西部から中国に分布する中国・西韓集団)に区別され、南日本集団についてはさらに9地域型に細分されていた。
これらの集団や他種との類縁関係は検討の余地が残っているものの、現在では日本に分布する北日本集団と南日本集団は別種とされ、前者は O. sakaizumii 、後者は O. latipes と同定されている。
参考文献
- 瀬能宏 2013 メダカ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 1923-1927.
最終更新日:2020-05-01 ひろりこん
- 人間との関係
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メダカは昔は肥料にされたり、甲府や新潟地方には食用にされていたという報告がある。例えば、第二次世界大戦直前の新潟県中蒲原郡では、9月中旬あたりから12月中旬までの漁期に1日に 6 ㎏ぐらいを、豊漁時には 22.5 ㎏を漁獲していた。
この報告では、同地方でのメダカの調理法まで詳しく触れており、それは次のように佃煮様に煮上げるものである。まず、メダカを清水でよく洗う。食塩を一握り入れた水を鍋に沸騰させておき、その中にメダカを少量ずつ小ざるに入れて、ざっと茹で上げる。味醂、醤油、砂糖などで味付けした汁を別の鍋に用意し、これに前記の塩ゆでしたメダカを入れて魚体をくずさないように煮込む。その後は、土製の瓶類に入れて保存し、必要に応じて少量ずつ取り出して副食物にしていた。煮汁は魚から出たゼラチンで冬期には煮コゴリとなり、2か月間の保存が可能で、汁物のダシに利用された。広大な田んぼで稲作を行う長い歴史を持つこのような地方ではメダカが多く採れるため、古くからメダカの食用が定着していたと思われる。
現在でも新潟県見附市の「うるめの田舎煮」に代表されるように食用とされるほか、目や乳房の病気を治すのによいといって、薬として生きたメダカをそのまま飲む人もいる。
これらのうち新潟県からの報告は分布から考えてキタノメダカのものだと考えられる。
参考文献
- 1997 メダカ学全書 - 書籍全体, 岩松鷹司(著) メダカ学全書. 大学教育出版. .
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形態
- 成魚の形質
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体側後半の黒色素胞は濃い網目模様を形成することや、体側後方の網目模様は所々で特に濃く染み状の斑紋になること、雄の背鰭の欠刻は浅いことなどからミナミメダカと区別される。
参考文献
- 瀬能宏 2013 メダカ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 649-650.
最終更新日:2020-05-01 ひろりこん
- 稚魚・仔魚・幼魚の形質
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仔魚は形態形成がやや進んだ状態で孵化する。
仔稚魚は、体前部が縦扁、体後部が側扁、口が上位、目が高位であるなど、基本的には成魚の体形をなしている。
参考文献
- 細谷和海 2014 メダカ科, 沖山宗雄(編) 日本産稚魚図鑑. 東海大学出版会. 541.
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- 卵の形質
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卵は沈性で、付着糸を備えた纏絡卵。排卵・受精後の卵はしばらく雌親魚の腹部に懸垂しているが、数時間のうちに水草に産着される。
参考文献
- 細谷和海 2014 メダカ科, 沖山宗雄(編) 日本産稚魚図鑑. 東海大学出版会. 541.
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- 似ている種 (間違えやすい種)
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ミナミメダカ
参考文献
- 瀬能宏 2013 メダカ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 649-650.
最終更新日:2020-05-01 ひろりこん
生態
- 生息環境
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平野部の河川、池沼、水田、用水路など
参考文献
- 瀬能宏 2013 メダカ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 649-650.
最終更新日:2020-05-01 ひろりこん
- ライフサイクル
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一般的な生態はミナミメダカと同様と考えられる。青森県での繁殖期は5月初旬から8月。7~8月の間に前年生まれの個体は寿命を終える。
参考文献
- 瀬能宏 2018 メダカ科, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. pp. 192-193.
最終更新日:2020-05-01 ひろりこん
関連情報
- 飼育方法
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1ペアだけを飼育するのであれば、10~15 ℓ(30~36 ㎝水槽)ぐらいの小型水槽でも十分可能だが、群れで飼う場合には、 50 ℓ(60 ㎝)ぐらいの水槽で飼育するのがよい。フィルターは飼育スタイルに応じて適した製品を選ぶ。
冬季でも加温せずに飼育することができる。餌は人工飼料や生餌など、あまりえり好みせず食べる。口が上を向いており水面に浮かんだ餌が食べやすいので、浮上性の人工飼料が適している。
参考文献
- 2010 世界のメダカガイド - 書籍全体, 山崎浩二(著) 世界のメダカガイド. 文一総合出版. .
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