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Mugil cephalusの分類 ボラ科(Mugilidae)
Mugil cephalusの概要 Mugil

Mugil cephalus

【 学名 】
Mugil cephalus Linnaeus, 1758

基本情報

大きさ・重さ

成魚全長 80 ㎝ 程度

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最終更新日:2020-05-15 En

分布

北海道以南の日本各地、西アフリカからモロッコ沿岸を除く世界各地の温・熱帯域の沿岸に広く分布する。

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和名の解説

① ボバラ(太腹)の転化した名。
② ボラは「掘る」の意味で、頭を泥に突っ込んで餌を食べる様から。
③ 魚形が角笛に似ることから、角笛を意味する中国の胡語「ハラ」が転じたもの。

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別名・方言名

マボラ/シュクチ、ツボウ(秋田)、シバ(宮城)、アマボラ、メジロボラ(新潟)、バイ(石川)、ケラナゴ(静岡県浜名湖)、ギンコ、ギンバク(三重県伊勢地方)、グイナ(和歌山)、マクチ(長崎)、スクチ(佐賀・長崎)

出世名:オボコ・イナッコ・スバシリ ▶ イナ ▶ ボラ ▶ トド(東京)

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人間との関係

季題は<秋>。「鯔はねて 暮色の迫る 船溜り 山県桂邨」「岸釣や 波立てすぎし 鰡の列 水原秋櫻子」「鰡待の 櫓影曳く 能登の海 大久保忠一」

『本草綱目』にも「鯉に似て身は円く頭は扁く骨は柔らかく」とある。
また、『大和本草』には「其子脯(ほしもの )トスカラスミト云フ」と記されている。『魚鑑』には「人をして。肥健(こへすこやか)ならしむ」とある。

カラスミはギリシャ、トルコで考案され、中国を経て今から400年前に日本に伝来した。長崎代官が豊臣秀吉に舶来品を献上したときに名前を聞かれて困り、中国の墨石に似ているので、とっさに「唐墨」と返答。以来、その名が全国に広まった。長崎名物として知られ、ウニ、コノワタとともに天下の三珍といわれる。強壮、不老長寿、悪酔い防止の効能があるとされる。
出世魚であるボラは、縁起の良さから厄払い行事などに用いられ、かつて関東ではタイに代わる祝い魚であった。三重県では、1月11日に「盤の魚」という神事が行われる。豊漁を祈る儀式で、ボラには手を触れずに包丁と真魚箸だけで調理して、神に供える。
能登の「ボラ待ちやぐら」は、江戸時代から伝わる原始的な漁法。入江に丸太でやぐらを組み、その下に待ち網を張る。やぐらの上から水面を見張り、ボラが網に入ったところで網口を閉じて漁獲する。今では観光として残っているだけで、ほとんど行われていない。
ボラには、その名前にちなんだ諺などが多くある。「トドのつまり」はボラが最後にトドと呼ばれるところから、終わりを意味する。
「いなせ」は江戸の魚河岸の若者の髪形が、イナ(ボラの幼魚)の背中に似ていたので「鯔背髷(いなせまげ)」といった。その省略形で、粋で男気のある若者に対して使われる。
「からすみ親子」は平凡な親から優秀な子どもが産まれること。「ボラはすきっ腹」はギリシャの諺、ばか正直でいると儲からない、という意味。「ボラになる」は腹が空くこと。

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最終更新日:2020-05-15 En

形態

成魚の形質

体は細長くやや側扁するが、体幹は円形に近い。頭部はやや扁平。
背鰭は2基で第1背鰭は4棘、第2背鰭は8〜9軟条。臀鰭は3棘8〜9軟条。胸鰭は16〜19軟条。第1背鰭は吻端から尾柄部までのほぼ中間に位置する。
第2背鰭と臀鰭の基底長はほとんど同じで、体の後方に対座する。
尾鰭の後縁は深く湾入する。体長は体高の約4.5倍。眼にはよく発達した脂瞼(しけん)がある。うろこは大きな円鱗。側線はない。体色は体側背部が灰青色で、腹部は銀白色。

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卵の形質

球形。直径 0.8〜1.0 ㎜ の分離浮性卵で、中層付近を浮遊する。産卵から孵化するまでの時間は、水温20〜25℃、塩分濃度 24〜35 mg /ℓ で60時間前後。

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生態

生息環境

沿岸の内湾性で、低塩分や濁りにも強い耐性を示す。河口などの汽水域や淡水域にも生息し、水面上に飛び上がる習性をもつ。季節的に小規模の回遊を行う。

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食性

雑食性で、動物プランクトンや珪藻、付着藻類、堆積有機物、底生の小動物を底泥とともに食べる。このような特性のため、ボラの胃は発達して筋肉がそろばん玉のような形に肥厚しており、"へそ"と呼ばれている。この胃の中で海底の泥と栄養分を選り分け、泥は排出してしまう。
摂餌は水温20℃以上で活発で、16℃以下では低下する。

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ライフサイクル

春から秋には沿岸の内湾や湖で索餌(さくじ)、成長をし、秋以降に外海に移動して産卵をした後に越冬する。
生息水温は10〜30℃で成長適水温は20℃前後。耐温限界は上限が32℃前後、下限が2〜3℃前後といわれるが、このような状況下に長時間晒されると死に至る。
産卵期は秋から冬で、関東周辺、紀伊半島や高知沖、九州では10〜1月に産卵される。孕卵数は220万粒と推測されている。産卵場は、暖流の影響を受ける潮通しのいい外海や、外海に面した10m以深の海底である。

孵化後2〜3日で全長 3 ㎜ 前後に成長し、卵黄をほぼ吸収し終わる。全長約 5 ㎜ に成長すると第二背鰭の条線が成魚と同数になるが、臀鰭はまだ未完成で、第一背鰭と腹鰭が出現し始める。
全長 8〜10 ㎜ で胸鰭を除く各鰭の条線はほぼ成魚と同数になる。
ボラの特徴である脂瞼は、全長 3〜4 ㎝ ごろに出現し、全長 5 ㎝ 前後で完成する。全長2 ㎝ 以降の仔魚は背面が淡緑色または緑青色であるが、翌春に全長3〜6 ㎝ に達すると銀白色になり、外洋から沿岸の河口や河川に侵入して生活する。
遡上する水温の範囲は12〜23℃であり、16℃以上で活発になる。秋には全長 20〜25 ㎝ に成長して湾内に戻る。生後1年で全長 20 ㎝ 前後、2年で全長 30 ㎝ 前後、3年で全長 40 ㎝ 前後、4年で全長 45 ㎝ 前後、5年で全長 50 ㎝ 前後に成長する。
メスはオスよりも成長が早い。生後2年目以降から成熟し始める。

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関連情報

漁獲方法

刺し網、定置網、釣りなどで漁獲される。

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味や食感

小ぶりのものや、卵が熟していないものなどは生食用にされる。普通丸のまま店頭に並ぶが、洗いなどの生食用として調理されることもある。卵は塩干加工してカラスミにする。
長崎県のカラスミは、熟したボラの卵巣をきれいに水洗いして血抜きしたのちに樽に塩漬けし、充分に漬け込んでから陰干しにする。最近は充分な大きさの卵巣も少なくなり、輸入物やメナダ、エソ、マハゼなどでの代用品も出回るようになってきた。

秋から冬にかけてが食べごろ。白身で肉質は少し硬く歯ごたえがある。場所によっては泥臭いような独特の風味がある。鮮度が良ければ生食できる。
そのほか、煮付けや酢の物、和え物にしたり、焼き物にもする。バター焼きやムニエル、パイ皮包みなどの洋風料理にも向いており、フライなどにしてもよい。
唐揚げにするときは野菜あんをかけたり、臭みが気になる時はカレー粉や、バジリコなどの香辛料で下味をつけるとよい。

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種・分類一覧