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- カンパチ(Seriola dumerili)について
カンパチ(Seriola dumerili)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Seriola dumerili (Risso, 1810)
目次
基本情報
- 分布
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本州以南、東部太平洋を除く全世界の熱帯・温帯域に分布。沿岸に生息する。
参考文献
- 木村清志 1997 , 水野信彦(監修) 川那部浩哉(編) 日本の海水魚. 山と渓谷社. 317.
最終更新日:2020-06-30 En
- 和名の解説
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①幼魚の両眼の間に八の字型の斑紋があることから、という説が一般的。
②「暴れ者」を表す方言カンパチに由来するという説や、頭部が赤みを帯びているので「赤ン頭(アカンハチ)」の意味から、という説もある。
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 134.
最終更新日:2020-06-30 En
- 別名・方言名
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アカイオ(新潟県能生・富山県魚津・氷見・東岩瀬)、ヒヨ(相模)、アカハナ(和歌山・高知)、ヒラソ(島根)、ニリ(宮崎)、ネリコ(鹿児島)
【出世名】ショッパ→ショウゴ→ヒヨ→カンパチ(神奈川)
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 134.
最終更新日:2020-06-30 En
- 人間との関係
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季題は<夏>
「子規堂を みて勘八を 買い戻る 大和田三山」
「かんぱちや 升酒の塩 指で嘗め 田中映一」
昔はアジやブリの方が珍重されていたため、カンパチについての文献はそれほど多くない。『和漢三才図会』に「状はぶりに似てやや平たく、淡赤色を帯び細鱗、腹白し。夏秋西海に多く出ず。小は二、三寸、大は三、四尺。肉ややまさる」とあるが、カンパチのことだと思われる。
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 134.
最終更新日:2020-06-30 En
形態
- 成魚の形質
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体は紡錘形だがブリ類の中では体高がやや高い。
背鰭は2基。第1背鰭は6〜7棘、第2背鰭は1棘29〜35軟条。臀鰭は1棘18〜22軟条で、臀鰭の前方に2本の遊離棘がある。
第2背鰭と臀鰭の後ろに小離鰭はなく、側線上に稜鱗もないが、尾柄部両側部に肉質の隆起線がある。体側面には吻部から尾柄部まで黄色の1縦帯がある。
ブリによく似るが、成魚の主上顎骨の上後端が円みを帯びること、眼の中心が上顎後端より上方にあること、頭部に眼を通る黒色の縞があることなどの特徴で区別できる。ブリより南方域に多い。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 290.
最終更新日:2020-06-30 En
- 卵の形質
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球形で、直径 1.0 ㎜前後の分離浮性卵
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 290.
最終更新日:2020-06-30 En
- 似ている種 (間違えやすい種)
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近似種にヒレナガカンパチがある。カンパチに比べて背鰭と臀鰭の前部軟条部が鎌状に延びるが、非常によく似ており見分けがつけにくい。ヒレナガカンパチはカンパチよりもさらに南方域に多い。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 290.
最終更新日:2020-06-30 En
生態
- 生息環境
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沿岸から沖合の表層域に生息する。沿岸近くにいる若魚は2〜3尾で遊泳していることが多いが、夏には10尾前後の群れを形成することもある。
ダイバーの吐く気泡や排気音に誘因されるようで、ごく近くまで近づいてくることも珍しくない。10尾前後の群れがダイバーを囲み、しばらく周りを離れないこともある。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 290.
最終更新日:2020-06-30 En
- 食性
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仔稚魚は端脚類などの動物プランクトンを接触しているが、成長とともに魚食性が強まる。
成魚は主にイカナゴ、マイワシ、マアジなどの遊泳性魚類を捕食し、ほかにイカ類、甲殻類なども食べる。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 290.
最終更新日:2020-06-30 En
- ライフサイクル
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産卵期は春から夏。
孵化直後の仔魚は、全長 5 ㎜前後。全長 5.5 ㎜に成長すると、背鰭と臀鰭が形成され始め、左右のえらぶたに内側3本、外側4本の棘が出現する。
全長 6.5 ㎜でえらぶたのほかに胸鰭上方にも2棘が出現する。
全長 9 ㎜で各鰭の条数は成魚とほぼ同数となり、えらぶたの棘は内側3本、外側7本となる。えらぶたの棘は全長 12 ㎜前後で内側3本、外側8本になるが、その後、成長に伴って消失していく。
孵化直後の仔魚は沖合表層域に多い。成長して稚魚期になると、ブリの仔稚魚のように流れ藻に付いて生活する。仔稚魚は水温が20〜30℃、塩分 27〜36 mg /ℓの表層域に多い。
全長 10 ㎝を超える頃から流れ藻を離れ、沿岸の中・下層に生息するようになる。
生後1年で 1〜3 kg、1年半で 2〜4 kgに成長する。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 290-292.
最終更新日:2020-06-30 En
関連情報
- 漁獲方法
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定置網や釣りで漁獲される。漁獲されるものは 1 mまでのものが多い。
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 134.
最終更新日:2020-06-30 En
- 養殖方法
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高級魚なので、養殖も盛んに行われている。夏季に流れ藻に付いた稚魚を採取し、人工的に育てる。現在市場に出回っているカンパチの多くは養殖もの。
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 134.
最終更新日:2020-06-30 En
- 味や食感
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新鮮なものを刺身で食べるのが最も美味しい。ある程度の厚みを残して切り、歯ごたえを楽しむ。わさび醤油で食べるが、脂がのりすぎたものは大根おろしを添えるとよい。
刺身を冊取りした残りの頭や中落ちなどは、魚すきに利用する。照り焼き、塩焼き、あら煮などにしてもよい。
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 134.
最終更新日:2020-06-30 En