- 解説一覧
- サヨリ(Hyporhamphus sajori)について
サヨリ(Hyporhamphus sajori)
- 【 学名 】
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Hyporhamphus sajori (Temminck & Schlegel, 1846)
基本情報
- 分布
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北海道南部以南(琉球列島と小笠原諸島を除く)、朝鮮半島、黄海、沿海州に分布
参考文献
- 藍澤正宏 1997 , 水野信彦(監修) 川那部浩哉(編) 日本の海水魚. 山と渓谷社. 153.
最終更新日:2020-06-08 En
- 和名の解説
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①群れる習性があり、魚が群れるのを「さわ寄り」と呼んだことから。
②サは狭長の意。ヨリは古名「ヨリド・ウヲ」の略。
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 203.
最終更新日:2020-06-08 En
- 別名・方言名
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クチナガ(岩手県宮古)、カンヌキ(東京)、ハリヨ(新潟)、スズサヨリ(和歌山)、ヨロズ(兵庫)、ラス(岡山)、サイラ(高知)、ナガイワシ(鹿児島)
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 203.
最終更新日:2020-06-08 En
- 人間との関係
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季題は<春>
「たえだえに 鱵つゞける 波間かな 耿陽」
「櫓を押して 居りつゝ見ゆる 鱵かな 筑嶺」
「美貌なる 鱵の吻は 怖るべし 安住敦」
日本では『延喜式』にサヨリの干物を物納させたという記録があり、また、『西宮記』には正月の宴に供されたとあり、平安時代には高級魚とされていたことがわかる。
『本草綱目』に、古代中国、周の時代の文王によって見出され登用された太公望が用いていたまっすぐな針はサヨリの下顎であったとある。
外見は美しいが、腹腔内粘膜が真っ黒なため、「サヨリのように腹黒い」などとよくない喩えに使われることもあった。
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 203.
最終更新日:2020-06-08 En
形態
- 成魚の形質
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体は細長く側扁し、体長は体高の10〜12倍。背鰭は1基で14〜18軟条、臀鰭は15〜18軟条。胸鰭は12〜14軟条。腹鰭は6軟条。
背鰭と臀鰭は尾柄部に近い体の後方にほぼ対座して位置し、両鰭の基底長はほぼ同じ。腹鰭は体の後半部に位置し、胸鰭よりも臀鰭に近い。
尾鰭の後縁は浅く湾入する。下顎は著しく突出し、細長く延長する。
上顎は平らで上方から見ると三角形を呈しており、うろこがある。
体色は背面が青緑色で、体側・腹側が銀色。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 382.
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- 卵の形質
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直径 2.2 ㎜前後の粘着沈性卵。卵の表面には、一方の極に5〜6本の細糸が、反対側の極に1本の太い糸が生えている。これらの糸が付着基質に絡みついて産着する。卵は沿岸の流れ藻やアカモク、イソモクなどのホンダワラ類に産み付けられる。
海藻に産み付けられた卵は、その発生段階によって色が変わる。未受精卵は淡黄色、受精後には黄褐色・緑褐色に変わり、孵化直前には暗緑色となる。産卵から孵化するまでの時間は、水温15℃前後で約2週間。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 382.
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生態
- 食性
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全生涯を通して動物プランクトンを摂食するほか、昆虫や海藻も食べる。また、産卵期にはサヨリの卵も多量に捕食するようである。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 384.
最終更新日:2020-06-08 En
- ライフサイクル
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産卵期は春から初夏。
孵化直後の仔魚は全長 6〜8 ㎜で卵黄はほとんど吸収されている。
体形は細長く、下顎は伸長していない。孵化後3〜4日で全長 10 ㎜前後に成長し、卵黄を完全に吸収する。
この段階では体は半透明で、各鰭がかなり発達する。孵化後10日で全長 12 ㎜前後に成長し、背鰭・臀鰭の条数は成魚と同数になり、下顎が伸長し始める。
孵化後25日で全長 25 ㎜前後に達し、各鰭の条数は成魚と同じになる。
全長 10〜30 ㎜の仔稚魚は、沿岸の流れ藻や流木などの漂流物の下に集まっている。
メスは生後2年で全長 30 ㎝前後、生後1〜2年で全長 25 ㎝前後になり成熟する。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 382-384.
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- 産卵
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瀬戸内では4〜6月、陸奥湾では6〜7月に産卵する。
全長 20〜25 ㎝の親魚は1000〜2000粒の熟卵と6000〜1万3000粒の未熟卵を持っており、1産卵期に複数回の産卵を行う。産卵時の水温は12〜25℃で、盛期の水温は18〜20℃。
産卵行動は昼夜にわたって行われるが、曇天時に特に活発。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 382.
最終更新日:2020-06-08 En
- 特徴的な行動
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10〜15匹の群れを作り、表層を泳ぎ回り、追われると水面上に跳んで逃げる習性がある。
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 203.
最終更新日:2020-06-08 En
関連情報
- 漁獲方法
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刺網やクモ網で漁獲される。
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 203.
最終更新日:2020-06-08 En
- 味や食感
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3〜5月が食べごろ。脂肪が少なく、淡白な味と身の美しさを活かして刺身、特に糸造りにされる。そのほか寿司ダネや椀種にしたり、酢の物や天ぷらなど和風の料理に多用する。さっぱりしているのでムニエルやフリッターなどにも向く。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 384.
最終更新日:2020-06-08 En