サワラ(Scomberomorus niphonius)の解説トップに戻る
サワラ(Scomberomorus niphonius)の分類 Scombridae
サワラ(Scomberomorus niphonius)の概要 Scomberomorus

サワラ(Scomberomorus niphonius)

情報不足種 (DD)

【IUCN】評価するだけの情報が不足している種

【 学名 】
Scomberomorus niphonius (Cuvier, 1832)

基本情報

大きさ・重さ

全長:1 m

参考文献

  • 中村泉 1997 , 水野信彦(監修) 川那部浩哉(編) 日本の海水魚. 山と渓谷社. 661.

最終更新日:2020-07-15 En

分布

北海道南部〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、北海道南部〜九州南岸の太平洋沿岸、瀬戸内海、東シナ海大陸棚域:朝鮮半島西岸・南岸、済州島、黄海、渤海、台湾基隆、沿海地方。

参考文献

  • 中坊徹二 2013 , 中坊徹次(編) 日本産魚類検索 全種の同定 第3版. 東海大学出版会. 1654.

最終更新日:2020-07-15 En

和名の解説

①狭い腹の意。胴幅が狭いことから。
②サハは斑(イサハ、斑入りの葉)の意、ラは魚名語尾。まだら模様があることから。
③「鰆」の字は、春にたくさんとれることから。

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 205-206.

最終更新日:2020-07-15 En

別名・方言名

サゴチ(東京)、サゴシ(西日本)、ヤナギ(高知県須崎)、オキサワラ(対馬)
▶出世名/サワラゴ→グツテラ→サゴシ→サワラ(愛媛)

参考文献

  • 望月賢二 2005 サワラ, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 205-206.

最終更新日:2020-07-15 En

人間との関係

季題は<春>
「一匹の 鰆を以て もてなさん 虚子」
「帆をかけて 走るはすべて 鰆舟 白楢」
「さりげなき 縁談鰆の 刺身かな 佐藤一雄」

からすみの素材といえば、普通はボラの卵巣だが、『本朝食鑑』に「鯔の唐墨味は鰆に勝る」とあるように、もともとはサワラの卵巣であったという。
『和漢三才図会』はからすみを、「馬鮫の䱊である。胞には子が多く、形は刀豆の莢のようで大きい。これを乾かすと褐色になり少し唐墨に似ている。それでこう名づけている。土州、阿州、讃州で多く産する。味は美い。けれども鯔䱊の唐墨には及ばない」と説明している。
高松藩ではサワラのからすみをつくって藩の名物とし、将軍家にも献上したという。香川県では現在も製造している。

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 206.

最終更新日:2020-07-15 En

形態

成魚の形質

体形はサワラ類の中でも細長い。体側上面に青褐色の斑点が7〜8列並ぶ。

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 205.

最終更新日:2020-07-15 En

生態

生息環境

暖かい時期は沿岸や内湾の表層を遊泳し、冬季には湾外などの深場に移動する。

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 205.

最終更新日:2020-07-15 En

食性

魚食性が強く、イワシ類、イカナゴ、サバなどを捕食する。

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 205.

最終更新日:2020-07-15 En

ライフサイクル

春季に内湾へ入って産卵し、孵化後時点から強い魚食性を示しながら急速に成長する。その成長速度は 1 ㎜/dayを上回り、速い個体では孵化後1ヶ月で全長 100 ㎜に達する。
体長 4 ㎜で孵化し、約 12 ㎜で仔魚から稚魚へと移行する。
サワラの浮遊生活期間は10日以内であり、魚類の中ではほぼ最短である。

参考文献

  • 小路淳 2005 , 小路淳(著) サワラの生活史初期における摂食戦略と資源加入機構に関する研究. 日本水産学会. 515-516.

最終更新日:2020-07-15 En

その他生態

成長率が高い一方で、初期死亡率もまた極めて高い。この初期の減耗要因としては、一般的な魚種の被食による減耗と異なり、サワラの場合は飢餓や、飢餓が根本的な要因となって生じる被食が主要であると考えられている。飢餓耐性が低いサワラにとっては、摂餌開始期に好適な餌料生物環境に遭遇することが、順調な成長や生残に大きく関わってくる。
そのため、サワラはその生残プロセスを「好適な餌料環境に遭遇し高成長を遂げて多くが生残する」か、「好適な餌料環境に恵まれず成長が停滞するとともに飢餓や被食により死亡する」かの二者択一に分けて、生活史初期段階に顕在化させている。
低成長を遂げる個体はほとんど生存できず、仔魚餌料を捕食し続けて高成長を遂げた個体のみが生き残るという「成長選択的生残」の性質を持っているのだ。
この成長選択的生残も、ニシン・タラ類など他の魚種と比べて極めて早期に明瞭化する。

参考文献

  • 小路淳 2005 , 小路淳(著) サワラの生活史初期における摂食戦略と資源加入機構に関する研究. 日本水産学会. 515-516.

最終更新日:2020-07-15 En

関連情報

漁獲方法

流網や刺網で漁獲する。釣りの対象魚でもある。本場は瀬戸内海だが、水揚げ量は以前より減り、東京などに送られるもののほとんどが韓国産。
イワシなどを餌にしたトローリング、小魚を使っての呑ませ釣り、落とし釣りなどで釣る。ルアーはフェザージグが一般的だが、アワビや夜光貝ヘッドにタコベイトのスカートを付けたものもよい。歯が鋭く、どう猛なのでワイヤーハリスを使うことも多い。

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 206-207.

最終更新日:2020-07-15 En

味や食感

旬は瀬戸内海では産卵期の5〜6月。西伊豆地方では秋、東京では寒ザワラといって一月から三月頃までとなる。

水分が多いため味が変化しやすく、においも出やすいので、早めに調理することが必要。新鮮な1尾ものが手に入れば刺身にできるが、普通は切り身が多いので、照り焼き、塩焼き、味噌漬け、ムニエル、蒸し物などにする。

▶[西京漬け] 切り身に塩を振り、少しおいてから洗って水分を取る。西京味噌に、みりんと酒少々を加えて練り、これに2日間ほど漬け込んでから焼く。

参考文献

  • 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 206-207.

最終更新日:2020-07-15 En

種・分類一覧