- 解説一覧
- マダイ(Pagrus major)について
マダイ(Pagrus major)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Pagrus major (Temminck & Schlegel, 1843)
目次
基本情報
- 大きさ・重さ
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・成魚体長:標準体長 100 ㎝
・仔魚全長:全長 2 ㎜(孵化直後)
・卵の大きさ: 0.91~1.03 ㎜
参考文献
- 池田知司・平井明夫・田端重夫・大西庸介・水戸敏 2014 表1 魚卵および孵化仔魚の外部形態の特徴, 池田知司、平井明夫、田端重夫、大西庸介、水戸敏(著) 魚卵の解説と検索. 東海大学出版会. 12.
- 林公義@萩原清司 2013 タイ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 955-959.
- 1997 現代おさかな辞典 - 書籍全体, 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. .
最終更新日:2020-05-05 ひろりこん
- 分布
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北海道全沿岸~九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島、奄美大島・喜界島・沖縄(少ない)、東シナ海大陸棚域;渤海、黄海、朝鮮半島全沿岸、済州島、台湾、中国東シナ海・南シナ海沿岸、海南島
参考文献
- 林公義@萩原清司 2013 タイ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 955-959.
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- 学名の解説
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種小名 major はより大きいという意味。
マダイは16歳で尾叉長 77.5 ㎝の個体が知られ、他のタイ類に比べ大きくなることが知られている。
参考文献
- 中坊徹次 2018 マダイ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. pp. 284-285.
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- 和名の解説
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由来は諸説ある。
①本当のタイという意味。「タイ」は「平たい魚」の意で、その体型から。
②朝鮮語の「トミ」が転訛したもの。
③めでたい魚ということから。
参考文献
- 2005 魚と貝の事典 - 書籍全体, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. .
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- 別名・方言名
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オオダイ、ベン(東京)、チャリコ(大阪府堺)、イラサ、コダイゴ(福岡県志賀島)、タイノユウ(奄美名瀬)
参考文献
- 望月賢二 2005 マダイ, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 372-375.
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- 分類学的位置付け
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Tabata and Taniguchi(2000)は mtDNA 調節領域の比較研究によって、 Pagrus auratus(Forster)(ゴウシュウマダイ)と Pagrus major(Temminck and Schlegel)(マダイ)は同種異亜種の関係にあるとした。そして、ゴウシュウマダイの学名を P. auratus auratus 、マダイの学名を P. auratus major とした。しかし、『日本産魚類検索 全種の同定 第3版』(中坊徹次編)では、 mtDNA の一つの領域だけの比較では確定できないと判断し、マダイ P. major は独立種と位置付けている。
Tabata, K. and N. Taniguchi. 2000. Differences between Pagrus major and Pagrus auratus through mainly mt DNA control region analysis. Fisher. Sci., 66: 9-18.
参考文献
- 林公義@萩原清司 2013 タイ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 2013-2014.
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- 人間との関係
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マダイは姿かたち、色、味の三拍子がそろった人気魚で、魚類の王として尊ばれている。ただし、現在のような王者の地位を確固たるものにしたのは江戸時代以降で、それまでは、身近で入手しやすいこともあり、淡水魚のコイが一番で、マダイは次席とされていた。しかし、中世を過ぎて料理法が発展してきたこと、またしょうゆの普及で刺身料理が好まれたこと、漁法と生簀が発達したことなどにより、マダイがコイに代わって主役の座に就き、だれもが魚類の王として認められるようになったのである。『本朝食鑑』にも「味極美、佳賞言うべからず。世人、最も之を珍とす」の記述があり、最上級の賛辞がマダイに贈られている。また百薬の長であると述べられている。
マダイは昔から縁起の良い魚として祝い事には欠かせない魚であった。日本では赤い色は魔除けになり、めでたい色とされており、そのうえ姿も立派で上品な味のマダイが好まれたのであろう。
古来、伊勢神宮では伊勢湾の篠島で調製された乾ダイが重要な神饌として奉納される。現在も古式製法で調製され、平安時代からの伝統が守られている。
参考文献
- 2005 魚と貝の事典 - 書籍全体, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. .
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形態
- 成魚の形質
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体に青い斑点があり、尾鰭は後縁が黒く下縁は白い。また、マダイとチダイは両顎中央部に2列の臼歯状歯をもつ。
稚魚生産され放流されたマダイは天然のものと比べ、鼻孔隔皮に異常があることが多い。隔皮とは前と後ろの鼻孔を隔てる皮で、養殖マダイでは欠損していたり、ねじれていたりする。
参考文献
- 中坊徹次 2018 マダイ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. pp. 284-285.
- 2018 写真探索・釣魚1400種図鑑 - 書籍全体, 小西英人(著) 小西英人(編) 写真探索・釣魚1400種図鑑. 株式会社KADOKAWA. .
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- 稚魚・仔魚・幼魚の形質
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頭頂部には尾索末端屈曲前から1点の黒色素胞が見られる。
背索尾端は体長 4 ㎜から屈曲し始め約 7 ㎜で上屈する。屈曲中は、体高/体長は、約 30%と急激に増加し、頭頂部の黒色素胞は大きくなりその数を増す。屈曲後では、主・間鰓蓋骨に各1・2棘各々見られ、腹鰭原基が出現する。
約 8 ㎜で全鰭は完成し稚魚となり、体側中央部で鱗が出現し始める。
さらに成長して約 10 ㎜では、前鰓蓋骨外縁・肩帯の棘は各約12・4本を数える。黒色素胞は、体側で数を増し5本の横帯をなし、また背鰭前部の鰭膜にも出現する。
参考文献
- 木下泉 2014 マダイ, 沖山宗雄(編) 日本産稚魚図鑑. 東海大学出版会. 869.
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- 卵の形質
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分離浮性卵。真球形で油球は1個。卵膜に特殊構造は無い。囲卵腔は狭い。卵黄に亀裂はない。卵期の胚体上の特殊構造は無い。卵径 0.91~1.03 ㎜。油球径 0.19~0.23 ㎜。
参考文献
- 池田知司・平井明夫・田端重夫・大西庸介・水戸敏 2014 表1 魚卵および孵化仔魚の外部形態の特徴, 池田知司、平井明夫、田端重夫、大西庸介、水戸敏(著) 魚卵の解説と検索. 東海大学出版会. 12.
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- 似ている種 (間違えやすい種)
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チダイ
参考文献
- 林公義@萩原清司 2013 タイ科, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 955-959.
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生態
- 生息環境
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水深30~200mの岩礁、砂礫底、砂底にすむ。
参考文献
- 中坊徹次 2000 タイ科, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. p. 127.
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- 食性
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浮遊期の仔魚は動物プランクトンを摂餌し、稚魚はヨコエビ類やアミ類を食べる。
成魚の食性はエビ類、カニ類、シャコ類、ヒトデ類や魚類などと幅広い。
参考文献
- 1997 現代おさかな辞典 - 書籍全体, 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. .
- 中坊徹次 2018 マダイ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. pp. 284-285.
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- ライフサイクル
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尾叉長約 2~3 ㎝の当歳魚は初夏に内湾の砂底に出現、約 9 ㎝で秋から冬に湾外に出て、水深 50~60 mで越冬、春に 10数 ㎝で沿岸域に出るといった季節移動を3歳まで繰り返し、多くの個体は4歳で成熟し産卵する。産卵場は水深 25~100 mの起伏の激しい天然礁。産卵期は春から初夏、しかし北の地方ほど遅い。
成長は地方により異なる。鹿児島湾では3歳で尾叉長 35 ㎝、4歳で 41 ㎝、5歳で 47 ㎝、6歳で 53 ㎝。しかし、広島では3歳で尾叉長 25 ㎝、4歳で 30 ㎝、5歳で 32 ㎝、6歳で 40 ㎝。この違いは水温と関係があると考えられている。成熟年齢は天然魚と養殖魚で異なる。広島湾では天然魚は雌4歳、尾叉長 33 ㎝( 800 g)、雄は3歳、尾叉長 22 ㎝( 240 g)で成熟するが、養殖魚は雌3歳、尾叉長 32.1 ㎝( 729 g)で成熟する。成熟は年齢ではなく体の大きさに関係している。
参考文献
- 中坊徹次 2018 マダイ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. pp. 284-285.
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- 産卵
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産卵期は春から夏。南方海域で早く、北上するにつれて遅くなる。各地の産卵盛期は瀬戸内海で4~5月、石川県で5~6月、山形県で6~7月である。孕卵数は、尾叉長 35~40 ㎝で30~40万粒、 50~60 ㎝で100万粒前後。産卵場所は沿岸の浅海域で、産卵水温は 15~20℃。産卵は日没の頃から始まり、こののち数時間が盛期となる。多回産卵で1回当たりの産卵数は15万~25万粒。1産卵期に5~10回程度の産卵を行う。
参考文献
- 1997 現代おさかな辞典 - 書籍全体, 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. .
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関連情報
- 漁獲方法
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底曳網、釣り、刺網などで漁獲される。国産の天然マダイは減少傾向にあり、養殖や稚魚を放流して資源の増加を図る栽培漁業も盛んにおこなわれている。
参考文献
- 2005 魚と貝の事典 - 書籍全体, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. .
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- 養殖方法
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マダイの赤い体色は、アスタキサンチンという色素によって引き出されている。そのためマダイ養殖では、オキアミから精製したアスタキサンチンジエステルを飼料に加えて投餌している。しかし、体表にメラニン色素が分布しているため、紫外線を浴びると体色が黒くなってしまう。したがって現場ではさらに生簀を沈めたり、遮光幕をかけたりして日焼けを防いでいる。
参考文献
- 1997 現代おさかな辞典 - 書籍全体, 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. .
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- 味や食感
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旬は冬から産卵の前まで。産卵前には「桜鯛」と称して賞味されるが、産卵後は「麦鯛」と呼んで敬遠される。
参考文献
- 河野博 2011 マダイ, 河野博 (監修) 加納光樹、横尾俊博(編) 東京湾の魚類. 平凡社. 202.
最終更新日:2020-05-05 ひろりこん
- 販売価格
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1984年から1994年までの平均卸売価格は、 1 ㎏当たり1200~1500円の間で推移している。
参考文献
- 1997 現代おさかな辞典 - 書籍全体, 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. .
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