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クサフグ(Takifugu alboplumbeus)の分類 フグ科(Tetraodontidae)
クサフグ(Takifugu alboplumbeus)の概要 Takifugu

クサフグ(Takifugu alboplumbeus)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

絶滅の恐れのある地域個体群 (LP)

【環境省】地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの

【 学名 】
Takifugu alboplumbeus (Richardson, 1845)

基本情報

大きさ・重さ

・成魚全長:全長 20 ㎝に達するが、多くの個体は 15 ㎝程度である。
・卵の大きさ:直径 5 ㎜ほど

参考文献

  • 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .
  • 伊藤勝敏 2000 卵とクサフグのメス, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. p. 192.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

分布

日本では北海道南部から九州までの各地に分布する。琉球列島にも分布するが出現地域は限られている。韓国、台湾、中国、渤海、東シナ海にも分布する。南限は中国の海南島。

参考文献

  • 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

生息状況

沖縄島のクサフグは絶滅のおそれのある地域個体群(LP)に指定されている。

参考文献

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

和名の解説

神奈川県三崎の地方名による。

参考文献

  • 2005 魚と貝の事典 - 書籍全体, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. .

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

別名・方言名

クサフグ・ショウサイフグ(三崎)、メアカフグ(静浦)、スナフグ(広島)、ギンフグ(富山)

参考文献

  • 1985 原色日本海水魚類図鑑2 - 書籍全体, 蒲原稔治、岡村収(著) 原色日本海水魚類図鑑2. 保育社. .

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

分類学的位置付け

クサフグの学名は以前 Takifugu niphobles (Jordan and Snyder, 1901) とされてきたが、『日本産フグ類図鑑(2017)』では Takifugu alboplumbeus (Richardson, 1845) が採用されている。Matsuura(2017)は Tetrodon alboplumbeus Richardson, 1845 と Spheroides niphobles Jordan and Snyder, 1901 のタイプ標本の調査に基づいて、両者が同種であることを明らかにした。

なお、中国や日本の研究者はトラフグ属の別の種に対して、 Takifugu alboplumbeus (Richardson, 1845) を適用している場合があったが、それは誤りと考えられている。これらの事例で T. alboplumbeus とされているフグにはコモンダマシという和名が用いられている(山口県衛生環境部, 1982;山田ほか, 2007;山田・柳下, 2013)。この和名が示唆するように、このフグはコモンフグに酷似する。

Matsuura, K. 2017. Taxonomic and nomenclatural comments on two puffers of the genus Takifugu with description of a new species, Takifugu flavipterus, from Japan (Actinopterygii, Tetraodontiformes: Tetraodontidae). Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series A, 43: 71-80.

山口県衛生部環境衛生課. 1982. フグ処理師教本. 山口県, 99pp.

山田梅芳・時村宗春・堀川博史・中坊徹次. 2007. 東シナ海・黄海の魚類誌. 東海大学出版会, 秦野, 1xxiii+1262pp.

山田梅芳・柳下直己. 2013. フグ科Pages. 中坊徹次(編), pp. 1728-1742. 日本産魚類検索-全種の同定 第3版. 東海大学出版部, 秦野.

参考文献

  • 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

人間との関係

食用にする地域もある。漁法は釣りなど。磯釣りでの餌取りである。

参考文献

  • 2005 魚と貝の事典 - 書籍全体, 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. .

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

形態

成魚の形質

背鰭条数は11~14、臀鰭条数は10~12、胸鰭条数は13~17。体はやや長く、頭部から尾柄に向かって細くなる。尾柄部は側扁する。体の背面と腹面は小棘に覆われる。頭部から尾柄までの体の腹側縁に明瞭な1皮摺が縦走する。

体背部は暗緑色で、多数の小白色点に覆われる。眼より腹方の体側面と体腹面は白色。胸鰭基部の後背方(胸鰭後部に覆われる部分)に大きくて円い黒色紋がある。背鰭基部は黒い。背鰭と胸鰭の鰭条は淡黄色で、鰭膜は淡灰色。臀鰭は白色。尾鰭の後半分は淡黄色か淡橙色で、前半分は淡灰色。

参考文献

  • 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

稚魚・仔魚・幼魚の形質

類似種との識別点は以下の通り
(1)前屈曲期初期に肛門直上を除く尾部に黒色素胞がない。
(2)背・臀・尾鰭の分化期に背・臀鰭の直後方に背腹対在する大黒色素胞叢がある。
(3)屈曲期仔魚の尾柄部の背・腹面に黒色素胞が密に分布する。
(4)稚魚の体側に小白点があり、胸鰭後方背面に黒色横帯が形成されるが、胸鰭後方体側に大黒斑はない。背腹両面に棘鱗がある。
(5)背・臀両鰭の鰭条数が少ない。12≦D≦14:10≦A≦12。
(6)躯幹部筋節数が8である。

参考文献

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

生態

生息環境

沿岸の岩礁や砂底付近など、浅い場所で多くみられる。採集水深の記録を伴う標本が少ないものの、水深 40 mまで生息することは確かである。

参考文献

  • 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

ライフサイクル

本種を含むトラフグ属には浮遊生活期はない。幼稚魚は沿岸の浅海に出現する。

参考文献

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

産卵

太平洋側や瀬戸内海、九州では、クサフグの産卵は月齢と関係があり、新月または満月前後の数日間に産卵する(Uno, 1955;藤田, 1962;Katayama et al., 1964;Katayama and Fujita, 1967;Yamahira, 1997)。しかし、日本海側の佐渡島では月齢と産卵に関係は見られず、産卵期には毎日、日没頃から日没後50分の間に産卵する(Honma et al., 1980 )。

クサフグは産卵場に大きな群れで来遊し、波打ち際に押し寄せて産卵する。産卵する場所は、砂浜や砂利浜、礫浜の場合もあれば底が岩盤の場合もある。産卵群における性比を見ると著しく雄が多い。

受精卵は次の大潮の満潮時に海水につかるとふ化し、稚魚が引き潮に乗って海へと帰っていく。

Uno, Y. 1955. Spawning habit and early development of a puffer, Fugu (Torafugu) niphobles (Jordan et Snyder). Jounal of the Tokyo University of Fisheries, 41: 169-183.

藤田矢郎. 1962. 日本産主要フグ類の生活史と養殖に関する研究. 長崎水試論文集, 2: 1-121.

Katayama, M., S. Fujita and Y. Fujioka. 1964. Ecological studies on the puffer, Fugu niphobles (Jordan et Snyder) Ⅰ. On the spawning beaches and spawning times in the Inland Sea side of Yamaguchi Prefecture. Bulletin of Faculty of Education, Yamaguchi University, 16: 55-61.

Katayama, M. and S. Fujita. 1967. Ecological studies on the puffer, Fugu niphobles (Jordan et Snyder) Ⅲ. On the spawnin habit. Bulletin of Faculty of Education, Yamaguchi University, 13: 35-44.

Yamahira, K. 1997. Proximate factors influencing spawning site specificity of the puffer fish Takifugu niphobles. Marine Ecology Progress Series, 147: 11-19.

Honma, Y., T. Ozawa and A. Chiba. 1980. Maturation and spawning behavior of the puffer, Fugu niphobles, occurring on the coast of Sado Island in the Sea of Japan (a preliminary report). Japanese Journal of Ichthyology, 27: 129-138.

参考文献

  • 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .
  • 伊藤勝敏 2000 卵とクサフグのメス, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. p. 192.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

関連情報

味や食感

卵巣・肝臓・腸は猛毒、皮は強毒、精巣・筋肉は弱毒。

参考文献

  • 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

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