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ハモ(Muraenesox cinereus)の分類 Muraenesocidae
ハモ(Muraenesox cinereus)の概要 Muraenesox

ハモ(Muraenesox cinereus)

【 学名 】
Muraenesox cinereus (Forsskål, 1775)

基本情報

大きさ・重さ

成魚全長 60 ㎝ 〜1 m、中には 2 m を超えるものもある。

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最終更新日:2020-05-15 En

分布

青森県以南、東シナ海、インド・太平洋域に分布

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和名の解説

① 古語の「食む」からきており、鋭い歯で餌を食べることからその名がついた。
② 中国名「海鰻」の音から読ませたもの。
③ 古名「ハム」から転じたもの。
④ 鋭い歯をもっていることから「歯持ち」の義。

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別名・方言名

ギンハモ(神奈川県江ノ島)、ギイギイ(佐渡島)、ウニハモ(福井)、タツバモ、バッタモ(京都府宮津)、ハモウナギ(鹿児島)、ハンヌイユ(沖縄)

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人間との関係

関西から西の方面で好まれる魚で、とくに大阪の天神祭、京都の祗園祭には欠かせない食材とされており、この頃のハモを「まつりハモ」と呼んでいる。かまぼこ、はんぺんなど練り製品の材料としても用いられる。

季題は<夏>。「鱧さげて ゆく別荘の 主かな 耿陽」「口開けて 鱧逃げまわる 市場かな 福本鯨洋」「錦市場で 買ひし鱧なり 子と頒つ 田村隆子」「友の死に 堪へゆく鱧を 食べにけり 小田みづえ」

『大和本草』に「長崎ニテ中華人ハモヲ海鰻ト云 ウナキヲ淡鰻と云」とあり、『和漢三才図会』に「皮をつけたままこれを割いて醤油をつけ炙って食べる」とある。
また、『本朝食鑑』に「江戸では見られず、まれに見ることはあっても、痩せていて食べられない。摂州の難波、泉州の堺、住吉、岸和田、紀州、播州、丹後で多く採れる」とあり、『三代実録』には、清和天皇の貞観12年(870)、諸国の工匠に給料として、米、塩のほかハモなどが与えられたことが記されている。
兵庫県篠山町ではハモをおろちに見立てた「大蛇退治」の儀式がある。これはその昔、この地の湖に住む大蛇が、たびたび田畑人畜に害を与えるため、村人が毒酒を用いてこの大蛇を退治したという伝説にちなんでいる。大蛇には瀬戸内海産のハモが使われ、産地で内臓を取り去り、代わりにワラを詰め針で縫い合わせたものが搬入される。行事では、口に赤い唐辛子を舌の代わりに入れ、生きているように見せかける。毒酒の代わりに清酒が口から注がれ、最後は「役人」と称する料理人によってさばかれ、村人たちは一切れずつ家に持ち帰って食べるのだという。
三陸や北海道地方でハモと呼ばれるのは、別種のマアナゴのこと。

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最終更新日:2020-05-15 En

形態

成魚の形質

体は著しく延長し、側扁する。背鰭は長く、鰓孔の上方から始まり尾鰭まで連続する。胸鰭は大きく、鰭条数は16〜17軟条。
吻部から肛門までの距離は、肛門から尾鰭後端までの距離より短い。吻部は延長し、上顎は下顎より長い。口は大きい。
両顎には犬歯状の歯が数列並び、前方のものほど大きい。体は無鱗で体表は円滑。
体側中央部に側線が走り、146〜154個の側線孔が開く。体色は体側背部が黄褐色で、背方に向かうにつれて淡くなる。背鰭や臀鰭、尾鰭の縁辺は黒く縁取られる。

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稚魚・仔魚・幼魚の形質

孵化直後の仔魚は全長 3.5 ㎜ 前後で、卵黄が腹部に沿って著しく延長している。
孵化後10時間で全長 4 ㎜、40時間で全長 5〜6 ㎜ に達する。
ハモの仔魚はウナギと同様、柳の葉のような形をしていることから葉形幼生(レプトケファルス幼生)と呼ばれる。夏から秋の変態前には、全長 100 ㎜ を超える葉形幼生が出現する。水温20℃で約2週間かけて変態を完了し、全長 7〜8 ㎝ の稚魚になる。

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卵の形質

球形で、直径 1.6〜2.2 ㎜ の分離浮性卵。産卵から孵化するまでの時間は、水温20℃で65時間前後、水温25℃前後で40時間前後。

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似ている種 (間違えやすい種)

近似種にスズハモ Muraenesox bagio ( Hamilton )があり、非常によく似ている。
ハモは肛門上方までの側線孔数が40〜47個あるのに対し、スズハモの側線孔数は40未満であることによって区別できる。

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生態

生息環境

水深 100 m 以浅の岩礁近くの砂泥底に生息し、通常 50 m 前後に多い。
季節的な深浅移動を行っており、秋から冬には 60〜100 m の海底に多いが、春から夏には 50 m 以浅の海底に移動する。

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食性

肉食で、葉形幼生は動物プランクトンを摂食するが、変態後は小型の底生生物を食べるようになる。若魚や成魚は甲殻類やイカ・タコ類、魚類を捕食する。
摂餌の活発な時間は日の出後の6〜8時と日没前の16〜18時で、昼間や夜間はあまり餌を摂らない。

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ライフサイクル

産卵期は春から夏で、瀬戸内海東部や紀伊水道では7月、瀬戸内海西部では8月、東シナ海では4月と7月が産卵盛期となる。
産卵期の海底の水温は20〜25℃で、日本近海での産卵場所は徳島県の沖合や九州西岸の沿岸域に形成される。
成熟した雌の孕卵数は20万〜90万粒で、3歳では20万〜25万粒、6歳では50万粒前後、9歳では70万粒前後である。
生後1年で吻端から肛門までの長さは 7 ㎝ 前後、2年で 12 ㎝ 前後になるが、その後は雌雄で成長が異なり、雌は3年で 20 ㎝ 前後、4年で 25 ㎝ 前後、5年で 30 ㎝ 前後、6年で 35 ㎝ 前後、10年で 50 ㎝ 前後に成長する。
一方、雄は3年で 17 ㎝ 前後、4年で 22 ㎝ 前後、5年で 25 ㎝ 前後、6年で 30 ㎝ 前後、10年で 35 ㎝ 前後に成長する。
雌雄とも生後3年前後から成熟し始める。成熟度は、1950年代初期には9〜10歳で50%前後に達する程度であったが、1960年代以降では4歳前後で50%に達するようになっている。資源量の減少に伴って、成熟年齢が低下しているものと推測されている。

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関連情報

漁獲方法

底引網で漁獲されている。他に延縄や曳縄でも漁獲されるがその量は少ない。

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味や食感

旬は夏。関西では季節の料理に欠かせない。
脂肪分が多いわりには淡白で上品な味の白身である。骨が硬く、しかも小骨が多いので、骨切りをしてから調理する。
刺身にするときは、600 gくらいのものは洗いに、それ以上の大きさのものは湯引きにすると良い。湯引きしたものは刺身のほか、酢の物や椀種などにされる。刺身には、梅肉や酢味噌、にんにく味噌などが合う。
吸い物の吸い口に木の芽と一緒に練り梅肉をあしらうとよい。蒸し物、照り焼き、蒲焼きや天ぷら、揚げ物などの和風料理のほか、ムニエルやフライなど洋風料理にも向き、あっさりとしたトマトソースに合う。皮も和え物などにする。

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販売価格

1980年代の平均卸売価格は、1㎏あたり300円前後であったが、1980年代の終わり頃から価格が高騰し、1990年には700円を上回った。

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種・分類一覧